日本緑化工学会誌
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論文
  • 西野 文貴, 清澤 賢司, 橘 隆一, 福永 健司
    2020 年 46 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    シダ植物の増殖方法には胞子を用いた栽培技術の確立が必要だと考えられる。供試植物はベニシダ,オシダ,イヌガンソクとした。胞子の発芽実験は恒温10 ℃,15 ℃,20 ℃,25 ℃,30 ℃の5条件で行った。90日後に採取した前葉体はソフトウェアImageJを用いた画像解析により面積を算出した。実験の結果,最終発芽率はベニシダでは約50%,オシダでは100%,イヌガンソクでは約20~95%となった。最終発芽率はベニシダとオシダでは10〜30 ℃で同様の結果を示し,イヌガンソクでは10 ℃が最も高い値を示した。前葉体成長においてベニシダは20 ℃もしくは25 ℃,オシダとイヌガンソクは20 ℃が最も成長した。

  • 人見 拓哉, 渡邉 匠, 高橋 輝昌
    2020 年 46 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    都市緑地での土壌動物相の多様性と有機物分解特性の関係を明らかにするため,東京都と千葉県内のクヌギが多く植栽される緑地で土壌の化学的・生物的性質,土壌動物相,有機物分解特性の調査を実施した。その結果,都市緑地における土壌pHの上昇に伴い腐植食性の土壌動物の多様度が低下し,有機物分解が抑制されることが明らかとなった。一方で,土壌の炭素濃度が高く,土壌動物の多様度が低い緑地では,菌類・細菌類によって有機物分解が活発化していた。

  • 豊島 楽子, 森本 淳子, 中村 太士
    2020 年 46 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    農地の水路に生育する湿地性植物の種構成と生育環境との関係を明らかにし,水路の生育地としての機能の評価,保全に向けた今後の水路管理方法を検討することを目的とした。4種類の排水路(末端,道路,1-2,3級排水路)で植生・環境を調査し,水路の環境と種構成の特徴を調べた。水路の環境は,物質の流れやすさと生育空間の大きさで特徴づけられた。末端,道路排水路では物質は流れにくく,生育空間が小さく,中生植物が多く、種構成が偏った。1-2,3級排水路は,物質の流れやすさ,生育空間の大きさが多様で,湿地性植物が多く,種構成も多様となった。流水の確保と,水量が多い場合の定期的な管理が種多様性に貢献すると考えられる。

  • 田端 敬三, 橋本 啓史, 森本 幸裕
    2020 年 46 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    下鴨神社糺の森で4回実施された胸高直径10 cm以上の樹木を対象とした毎木調査結果から,3期間 (1991~2002年,2002~2010年,2010~2018年) でのイロハモミジ各対象木の断面積成長量を測定し,さらに対象木サイズ,周辺の個体密度との関係を検討した。その結果,断面積成長速度を目的変数とする一般化線形混合モデルでは,1991~2002年は,上層木の胸高断面積の総和,2002~2010年は上層木との,2010~2018年では全競争木との胸高断面積の相対比の総和が説明変数として選択され,偏回帰係数はいずれも負の値を示した。胸高断面積階級毎および競争指数階級毎での断面積相対成長速度を3期間で比較した結果,1991~2002年より2010~2018年において断面積相対成長速度が低下する傾向が見られた。

  • 勝田 翔, 佐伯 いく代, 上條 隆志
    2020 年 46 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    古くから桜の景観で知られる茨城県桜川市において,カスミザクラ及びヤマザクラの更新特性を調査した。筑波山系を中心に,12カ所の森林で毎木調査を行った。その結果,カスミザクラの幼木が多く記録され,ヤマザクラとあわせた2種の直径階分布が明瞭なL字型を示す更新良好地が3か所見つかった。また,胸高直径が9 cm以下の幼木個体数と森林特性との関係を,一般化線形混合モデルを用いて調べたところ,萌芽率が高い森林で幼木が多く生育する傾向にあった。萌芽率と幼木個体数との間に正の関係がみられたことから,短い周期での伐採を伴う里山管理は,桜の景観を保全する上で重要であると推測された。

  • 大澤 啓志, 森 優香, 行川 彩華
    2020 年 46 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    津波被災跡地において,7~8年経過した時点の低木植生より50年後の林相の推測を試みた。20地点の調査より,林冠木に成長できる高木種はマツ類の他は大半が落葉広葉樹で,常緑広葉樹はシロダモのみであった。海岸に近い疎林地は潮風が影響し,後背部より木本類の生育密度が低かった。クロマツ,ニセアカシア,ハンノキが優占する地点以外は多数の低木種が生育したものの,低木植生の上層部では陽樹のヤマザクラやコナラの密度が高かった。樹高別の高木種の構成や密度から,多くは樹冠が閉じ内部に階層構造を有する樹林地に遷移すると推測された。ただし海からの距離や生残高木の状況,津波以前の植生により,50年後の林相は異なると推測された。

  • 本部 星, 日置 佳之
    2020 年 46 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    市民参加等による植樹イベントには,明確な目標植生が定められずに,漠然と森づくりを目的としたものが多い。そのような植樹林では,目標を明確に再設定し,そこへ導く必要がある。本研究では,鳥取県内の植樹イベントが行われた工場の事例地において,(1)目標植生を再設定する方法と,(2)そこへ誘導する過程を,検討した。植樹林とその近隣の自然林及び二次林の種組成と構造を比較した。その結果,事例地では,ミズメやミズナラが混生するブナ林が目標植生として再設定された。また,それに至る道筋として,ブナ林とその途中相であるコナラ林の中間的な種組成の樹林を経由するのが適切であると判定された。

  • 大塚 芳嵩, 那須 守, 岩崎 寛
    2020 年 46 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,都市公園の利用を誘発する要因を機械学習により推定することを目的とした。調査は,東京都江東区に在住する地域住民を対象に都市公園の利用状況や自身の生活状況に関するオンラインアンケート調査を実施し,最終的に1,553 名から回答を得た。はじめに,潜在クラス分析により都市公園における利用行動の実施状況を低利用型および利用型の2クラスターに分類し,利用行動クラスターとした。続いて,決定木分析の目的変数として利用行動クラスターを設定し,その他の全調査項目を説明変数として予測モデルを構築した。この結果,都市公園の利用を誘発する要因として,“緑地における家族との交流”,“緑道の利用頻度”などが推定された。

  • ―学校緑化の現状調査と教育委員会の意識調査―
    鄭 蒙蒙, 阿部 建太, 岩崎 寛
    2020 年 46 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    教職員のストレス緩和に寄与する学校緑化に必要な要素・要件を把握することを目的とし,全国の教育委員会に対し,学校緑化の現状を調査した。その結果,多くの自治体において教職員を対象にした学校緑化が行われていないことがわかった。また,教育委員会は学校緑化について関与しない傾向にあり,教職員のストレス緩和を目的として学校緑化を活用する意欲も低かった。しかし,学校緑化の予算や教職員への効果検証,学校関係者に対する緑化の有効性の普及,教育委員会における学校緑化への関心度と指導力の向上,現在のメンタルヘルス対策への配慮などの課題が解決されることで,教職員のストレスケアのための学校緑化が進められると考えられた。

  • 辻 盛生, 加藤 邦彦, 佐々木 理史, 山田 一裕, 平塚 明
    2020 年 46 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    湿地による水質浄化は,省エネルギー水質浄化法として注目された。近年,伏流式人工湿地ろ過システムの開発により高濃度の有機性排水処理が可能となった。本研究では,旧来の湿地処理法と伏流式人工湿地ろ過システムの有機性排水処理能力を比較した。その結果,旧来の湿地処理法に比べ除去速度でBODは約14倍,T-Nにおいても約12倍を超えるの浄化能力の向上が示唆された。必要な面積が確保できれば,伏流式人工湿地ろ過システムは活性汚泥法に替わる省エネルギー型排水処理として,目的に応じた応用が可能と考えられる。

  • 島田 博匡, 沼本 晋也, 野々田 稔郎
    2020 年 46 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    地質条件が異なる3カ所のスギ・ヒノキ人工林に設けた試験地において土砂移動レートを3年間測定し,林床被覆と間伐木を利用した筋工が表土移動に及ぼす影響を検討した。試験地別,筋工有無別に林床被覆率と土砂移動レートの関係を指数式で近似したところ,いずれにおいても林床被覆率が高いほど土砂移動レートが低くなる傾向がみられた。筋工有区の土砂移動レートは筋工無区よりも低かったが,林床被覆率が低いほど両者の差は大きくなる傾向を示した。

技術報告
  • 中谷 美紗子, 平林 聡, 難波 結希
    2020 年 46 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    人口減少社会において,都市緑地等のインフラの効率的な維持管理が重要である。都市緑地は炭素固定,大気浄化,雨水遮断等の生態系サービスを都市空間に提供するが,その定量的評価手法は確立していない。そこで,樹木による生態系サービスの定量的評価を目的として,i-Tree Ecoとの互換性および拡張性を実現する樹木構造解析システムを開発した。これにより国内の主要な緑化樹木についてi-Tree Eco同様に葉面積,葉・木質部乾燥重量の算出が可能となり,さらに国内で開発されたアロメトリー式に基づく木質部乾燥重量の算出も可能とした。

  • 佐藤 厚子, 畠山 乃
    2020 年 46 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    北海道に広く生育しているオオイタドリは,生育が旺盛であるため交通安全上の課題があり,生育を抑制できる維持管理方法が求められている。このため,オオイタドリの生育抑制に関する研究が各機関で行われている。本調査では,オオイタドリの生育箇所を被覆することに着目し,オオイタドリの生育している盛土のり面への施工を対象として,メッシュシート,土木シート,張芝により被覆し,被覆しない場合と比較してその効果を再検証した。オオイタドリの生育抑制の目標を植被率の低減と草丈80 cm以下として調査を行った結果,張芝では生育抑制の効果は少なかったが,メッシュシート,土木シートで被覆することにより生育を抑制できた。

  • 小川 泰浩, 玉井 幸治, 村上 亘, 岡本 隆, 岡田 康彦
    2020 年 46 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    渓流の木製堰堤の形状変化を把握するためには,大量の3次元点群データを短時間で取得可能な地上レーザースキャナの計測が有効である。その計測精度は標定点に依存するが,足場の悪い環境下における標定点の設置は容易ではない。そこで,本研究は,測定精度と作業軽減が両立する標定点設置手法を検討した。その結果,現地に標定点を設置せずにソフトウェアで標定点を設置する作業軽減方法は,標定点に約5 cmの設置誤差が生じた。いっぽう自作の小型軽量ターゲットを標定点として現地に設置する方法は,設置誤差が1.2 cm以下に抑えられ,異なる時期に3次元点群データで表現された形状の比較が可能であると考えられた。

  • 稲垣 栄洋, 岩本 百合香, 世登 大輝, 海野 菜歩子, 西川 浩二, 成瀬 和子, 櫻川 智史, 田中 伸佳, 藤浪 健二郎, 前田 研 ...
    2020 年 46 巻 1 号 p. 83-86
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    植物残渣として問題となるキウイフルーツ剪定枝と造園残渣の剪定枝をペレット化した雑草抑制資材を作成し,雑草抑制効果を検討した。ペレットは,散布後に形状が崩壊して緊密なマットを形成し,チップに比較して高い雑草抑制効果を示した。特にキウイフルーツ剪定枝ペレットは,化学的に雑草を抑制するアレロケミカルが推察され,極めて高い雑草抑制効果を示した。一方,造園残渣ペレットはキウイフルーツ剪定枝ペレットと比較して雑草抑制効果はやや小さかったものの,5 cmの厚さで被覆させることで,十分に雑草を抑制した。

  • 高林 裕, 山口 史絵, 上田 瑠香, 福井 亘
    2020 年 46 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    京都市の市街地に位置する国民公園である京都御苑は,周辺の山々や河川などと市街地の緑をつなぐネットワークの拠点の緑のひとつとして位置づけられている。京都御苑において出現する鳥類相を通年の調査(2017年6月から2018年5月)によって把握することで,市街地に位置する既存の大規模樹林地の生物多様性を示すデータを提供することを目的とした。その結果,9目24科45種7,642羽の鳥類が確認され,通年で継続して確認された種,春先から夏にかけて個体数が増加する種,秋から冬にかけて個体数が増加する種,季節ごとに出現傾向が変化する種(夏鳥・冬鳥・漂鳥)が存在することが明らかになった。

  • 杉浦 俊弘, 小林 愛実, 立見 千尋, 馬場 光久, 島本 由麻
    2020 年 46 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    多年生であるオオハンゴンソウは,刈取らないと茎長が7月下旬の約200 cmまで直線的に伸長しその後成長が停止した。5月から8月までに地上部乾燥重量は約8.6倍に,地下部乾燥重量は1.4倍にそれぞれ増加した。地下茎容積重は5月から8月にかけて約1.5倍に増加し,地上部から地下部への転流が推測された。これに対して生育最盛期の7月に刈取った時の8月の地下茎容積重は,刈取らなかった時の約3/4に減少して有意に小さく,9月にもその影響が見られた。以上のことより,オオハンゴンソウを開花前の7月に刈取ると地上部から地下部への転流が抑制される効果があると推察された。

  • 塚川 佳介, 石坂 健彦, 鶴間 亮一, 小野寺 遼, 森崎 耕一
    2020 年 46 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    高速道路の盛土のり面樹林がグリーンインフラとして地域生態系に果たしている役割を把握することを目的に,鳥類を指標に樹林地,農耕地,住宅地の3地域で毎月1回のラインセンサス調査を2年間実施した。調査箇所は,地域毎に盛土のり面樹林沿いと対照区の2箇所とした。調査の結果,農耕地の盛土のり面樹林沿いでは樹林性鳥類が多く確認された。また,住宅地では盛土のり面樹林沿いは,対照区に比べて鳥類が多く,多様度も高かった。利用状況に着目すると,住宅地では盛土のり面樹林沿いは,対照区に比べて採餌が多かった。以上のことから,農耕地及び住宅地では,高速道路の盛土のり面樹林は鳥類の多様性の向上に寄与していると考えられた。

  • 米道 学, 軽込 勉, 塚越 剛史, 久本 洋子, 楠本 大
    2020 年 46 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    マツ材線虫病抵抗性マツは種子から多くの苗を育てるが,花粉親が必ずしも抵抗性とは限らないため,実生苗は母樹よりも抵抗性が劣ることがある。一方,挿し木によって作成したクローン苗は母樹と同じ抵抗性を持つことができるが,マツ類は発根性が悪く,さらに細根の発達した挿し木苗の取得は困難とされている。そこで本研究では,挿し床の環境を変化させたときの根系発達を評価した。密閉挿しでアカマツの挿し木を行い,プランターを地面から10 cm浮かせた。その結果,地面に置いた場合に比べて10 cm高床にした方では,根の成長が良くなる傾向がみられた。このことから,土壌水分が根系発達に影響していることが示唆された。

  • 松岡 達也, 大黒 俊哉
    2020 年 46 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    生態系サービスの観点から屋上緑化への蜜源植物の導入が望まれており,セダムの混植は乾燥しがちな屋上部において植物体の生育を良好に保つ技術の一つとされる。一方で,セダム混植の効果は蜜源植物の生育段階によって異なり得る。本研究では,生育段階の異なるキバナコスモスを用いた混植実験により,セダム混植の有効性を検証した。その結果,生育段階が進み,植物体サイズの大きい個体では,セダム混植により土壌水分量の低下が抑制され,生育が良好に保たれた。一方で,生育段階早期の個体では12日程遅れて上記の効果がみられた。得られた結果は,屋上緑化におけるセダム混植の効果が,植物体の生育段階に依存している可能性を示唆する。

  • 漆谷 綾乃, 小笠原 秀治, 田本 亮
    2020 年 46 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    東京外環自動車道千葉区間は,昭和44年の都市計画決定から約50年を経て,平成30年6月に無事開通を迎えた。東日本高速道路株式会社関東支社千葉工事事務所では事業の推進に当たり,市川を代表する「クロマツ景観」の保全対策に取り組んできた。建設工事ヤード内のクロマツを保護し存置する「保護」,国内でも事例の少ない老齢大径木の「移植」,地域連携に配慮した「新たな植樹」の,約20年に渡る取組みについて報告する。

  • 亀井 碧, 中島 敦司, 川中 一博, 井上 裕介, 吉原 敬嗣, 湯崎 真梨子, 山田 守
    2020 年 46 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    シカ不嗜好性が期待される在来草本チカラシバの種子の発芽促進方法を明らかにすることを目的に2017年10月,11月に採取した種子に対して5 ℃または25 ℃,35 ℃で乾燥処理,5 ℃で湿層処理を行い,25 ℃で発芽実験をした。その結果,採り播きでは,特に未熟な種子が多い10月種子の発芽率が低かった。11月種子では5 ℃で2ケ月間の乾燥処理,25 ℃で2ケ月間以上の乾燥処理,35 ℃で1,2ケ月間の乾燥処理,また,5 ℃で1ケ月以上の湿層処理を行うことで採取直後よりも発芽勢が高くなった。特に,5 ℃での湿層処理で休眠を解除すると3週間程度で高い最終発芽率に達すると考えられた。

  • 安藤 滉一, 深町 加津枝
    2020 年 46 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    滋賀県大津市南小松の江戸期から明治初期にかけて作成された絵図から当時の災害対応の要所である防備林の位置を把握し,今日の植生の特徴を明らかにした。江戸期の絵図では,河川沿いに広がり土砂災害などの被害を受けやすい土地が「荒れ地」とされていたが,明治初期にはマツ林となる「林」に区分されていた。こうした土地は,防備林として重要な場であったと考えられた。植生調査の結果から,今日においても河川周辺ではアカマツがコナラなどの落葉広葉樹とともに主要な構成要素となっていた。一方,常緑広葉樹への遷移も確認され,河川整備や宅地開発などの土地利用の変化,林地の管理放棄が進んでいた。

  • 河野 修一, 江崎 次夫, 原 浩之, 村上 博光, 木原 辰之, 中山 累, 寺本 行芳, 金 錫宇, 全 槿雨, 松本 淳一, 土居 幹 ...
    2020 年 46 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    集中豪雨で山腹斜面が崩壊した跡地に施工された筋工の平坦部に3年生のヒノキを植栽する際に,活着率の向上とその後の旺盛な成長を期待して,植え穴に「くらげチップ」約100 gを施した。10年後の施用区の樹高は722 cm,根元直径は112.2 mmあった。これに対し,無施用区のそれらは,それぞれ547 cm,84.8 mmであった。施用区と無施用区との間に枯損率,樹高および根元直径共に,0.1%レベルの有意差が認められた。このような相違が認められたのは,土壌改良材の持つ水分保持能力と分解後の栄養分が効果的に作用したことによるものと判断された。しかし,樹高と根元直径の伸長率は10年目で,ほぼ0に近い値となり,その効果の持続期間は10年程度と考えられた。

  • 古閑 龍太郎, 白鳥 良祐, 小柳津 倫生
    2020 年 46 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,植生基材吹付工の施肥に使用され得る化学肥料および有機質肥料を対照に,それぞれの初期生育の差異を明らかにすることで,SDGsを考慮した,輸入資源に依存せず環境負荷が少ない,持続可能性の高い施肥の方法を考察することを目的とした。植生基盤となるバーク堆肥を主とする生育基盤材に,植生基材吹付工の施肥において一般的に用いられる化学肥料,形状の異なる各有機質肥料をそれぞれ配合し,生育を比較した結果,下水汚泥堆肥,豚糞堆肥施用区は化学肥料施用区と同等の生育を示した。以上の結果から,本研究は各肥料の初期成育における施用効果を明らかにし,植生基材吹付工の施肥において特定の有機質肥料が化学肥料の代替となり得ることを示した。

  • 紀 昊青, 高橋 輝昌, 人見 拓哉, 王 玲玲, 長谷川 啓示
    2020 年 46 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,密度が異なるウレタン樹脂(18 kg/㎥:低密度,28 kg/㎥:高密度)の物理的性質(最大容水量,細孔隙量と透水係数)を測定した。また,ウレタン樹脂上で,小麦とナデシコを栽培し,ウレタン樹脂への植物根の侵入状況を調査して,この2種類のウレタン樹脂の植栽基盤としての有効性について検討した。その結果,最大容水量,細孔隙量,飽和透水係数は高密度樹脂で大きかった。植物根の侵入は高密度樹脂より低密度樹脂で多かった。

  • 大磯 毅晃, 石坂 健彦, 森崎 耕一, 小谷地 進太, 浅川 尚熙, 国武 陽子
    2020 年 46 巻 1 号 p. 131-133
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    1989年の千葉東金道路建設の際にトウキョウサンショウウオの生息地が確認され,1993年から1995年にかけて同道路近傍に代替産卵池の整備がなされた。2016年から2020年にかけて,その整備効果を把握することを目的として,地元大学との共同で同池及び周辺地域において産卵状況調査を行った。その結果,同池周辺地域において既存産卵水域は乾燥化などによる消失が多くみられた。一方,同池では年間平均100個以上もの卵塊が確認された。以上より,当池は整備後20年以上経過した現在も,なお効果を十分に発揮しており,道路建設により整備したビオトープが地域個体群の維持に欠かせないものとなっていることが示唆された。

  • 白鳥 良祐, 古閑 龍太郎, 小柳津 倫生
    2020 年 46 巻 1 号 p. 134-137
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,土壌化学性ECから法面緑化工における有機質肥料の活用可能性を明らかにすることを目的とした。植生基盤は,化学肥料,有機質肥料ともに2か月経過時点で一般土壌において植物の生育に支障がないとされるECに収束する事が確認できたが,肥料によって植生基盤からの肥料成分の溶脱の多少があった。有機質肥料は形状により溶脱傾向が異なる事も確認できた。

  • 上野 直哉, 高梨 俊輔, 秋山 菜々子, 森 俊貴, 田中 賢治
    2020 年 46 巻 1 号 p. 138-141
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,現場において簡便に分析できる測定器の実用性の検証を実施した。土壌ダイレクト測定器によるpH測定は,土壌の希釈倍率による精度への影響はないが,EC測定においては6倍希釈による測定が適切であることを確認した。また,簡易かつ安価である吸光光度計を応用した土壌分析結果に係数をかけることで,乾物土壌を使用した土壌分析結果を推定できる可能性が示唆された。吸光光度計を使用する際の土壌の希釈倍率は,2倍希釈が最も精度が高いことが示唆された。また,アルミニウムとリン酸吸収係数の相関は決定係数(R2)が0.7137であり,比較的高い相関関係であることから,アルミニウムからリン酸吸収係数を算出できる可能性が示唆された。

  • 大澤 啓志, 比嘉 友里恵, 田代 珠希
    2020 年 46 巻 1 号 p. 142-145
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    長期管理放棄された雑木林において林床管理が再開された場所で,管理回数等によるシュンランの生育状況の差異を検討した。5 m四方のコドラートを各5か所設置し,個体数を計数した。5年前に下草刈りが1回入った林に対し,10年間継続した林の方がシュンランの個体数及び開花個体数が多かった。また,スギ植林地の生育密度は著しく低かった。開花率は開空率と正の相関(r=0.773)が認められ,アズマネザサの繁茂に対し本種の保全における管理継続の重要性が示された。ただし,外生菌根菌等との共生により,本種は耐陰性を有することも示唆された。

  • 高橋 輝昌, 守野 陣, 寺田 健人, 土田 健人, 人見 拓哉
    2020 年 46 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    土壌の有機物分解特性の指標として,土壌中に埋設されたティーバッグの内容物の変化量から算出されるTBI(Tea Bag Index)が考案されている。本研究では,異なる緑地の土壌でTBIの測定を試み,南関東地方での適切なTea Bag の埋設期間について検討し,また,積算地温や土壌の化学的・生物的性質とTBIの関係についても検討した。南関東の緑地において夏季を含む期間に土壌間でTBIを比較する場合には,ティーバッグの埋設期間をティーバッグ付近の積算地温が40,000℃・hr.未満となる6~10週間にするとよい。TBIは土壌の化学的性質・生物的性質よりも積算地温の影響を強く受けるようであった。

  • 田崎 冬記, 川嶋 啓太, 金谷 将志, 佐藤 尚樹, 神田 房行
    2020 年 46 巻 1 号 p. 150-153
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    釧路湿原幌呂地区では,地盤切り下げや未利用排水路の埋め戻しによって,湿原植生の回復を目指す自然再生事業が行われている。一方,地下水比高と成立植生との関係が明確になっていないため,地盤切り下げ後に,外来種の侵入定着も確認されている。そこで本報告では,3Dレーザスキャナーを用いて詳細地形測量を行った。また,地下水位コンターの差分から,比高コンターを作成し,成立植生との関係を調査した。その結果,外来植物を含む群落は,比高0.6 m以上の環境で見られること,比高0.2 m未満の環境では,外来植物を含む群落はなく,目標とする湿原植生が成立し易いことを把握した。

  • 王 聞, 深町 加津枝
    2020 年 46 巻 1 号 p. 154-157
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    砺波平野の散居村の屋敷林周囲には水田が拡がり,豊かな水系が屋敷をとりまいている。近年屋敷林形態の多様化が進む一方で,典型的な屋敷林の保全は生態系サービスの機能を果たす。その実態を把握するため,本研究は地域の典型的な屋敷林であるS家を対象に,樹木・建造物・水系に関わる空間構造の把握と植物相の調査を行った。また居住者からの聞き取り調査に基づき植物と暮らしの関わりおよび水系の利用について明らかにした。

  • 広永 勇三
    2020 年 46 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    宮城県奥松島地域宮戸島の大浜地区に,海岸から70~170 m程度,標高4~6 m程度の海浜後背地がある。ここには2011年3月の大津波を受けたものの,主幹胸高直径20 cm以上のタブノキ16個体が生存する。これらは,頂部(10 m以上)まで生存する2個体,主幹途中枝と根元からの萌芽枝が生育する5個体,主幹が枯死し根元からの萌芽枝が生育する9個体である。主幹の枝と萌芽枝の生葉には顕著な潮風害は確認されなかった。萌芽枝の枝元断面積については,個体間の比較によると主幹の生枯または幹周との間には明確な関係はみられず,他方,防風物による違いの可能性が考えられる個体が多く見られた。

  • 島田 直明, 伊藤 来希
    2020 年 46 巻 1 号 p. 162-165
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    東日本大震災により,東北地方の沿岸域は甚大な被害を受けた。岩手県陸前高田市の高田松原地区では,復興事業として減災を目的としたコンクリート製の巨大な防潮堤が建設されたが,これにより景観が損なわれた。この景観を改善するために岩手県では防潮堤法面において海浜植物を用いた緑化が検討されることとなった。そこで緑化手法について考察することを目的に試験を行った。本試験は異なる土壌条件で海浜植物の播種および苗の植栽試験を行い,生育状況の調査を行った。その結果,盛土による防潮堤緑化には,基盤を砂のみとし,緑化対象種としてハマエンドウを主とし,ハマヒルガオも混ぜて種子を播種する方法が有効であると考えられた。

  • 田中 淳, 山田 知瑛里, 神田 誠也, 明石 博之, 宮本 卓也
    2020 年 46 巻 1 号 p. 166-169
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    自然進入促進型植生マットを50度以上の林道切土法面に敷設し,3年間侵入個体数を調査した。2年目から3年目に侵入数は,559%増加し,11.2個/m2となった。同期間の植被率は,267%増加し,16.5%と侵入数よりも低い増加率となった。これは,シカの食害によって地上部が損傷した影響が大きかった。傾斜と侵入位置の関係では,有意な差は確認されなかった。土質と侵入位置との関係は,土質の境界付近に多く侵入していたが,土質条件と侵入個体数に明確な関係性は認められなかった。傾斜角度や土質は必ずしも侵入のしやすさには繋がらないが,3年程度法面を保護するマットは自然侵入促進に有効であることがわかった。

  • 綾部 芳秀, 深町 加津枝
    2020 年 46 巻 1 号 p. 170-173
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    滋賀県大津市八屋戸において,2018年9月と10月にトンボ類の調査を行った。調査ではルートセンサス法とポイントセンサス法を用いた。全ての調査で計8科19種437個体のトンボ類を確認し,アキアカネの出現が最も多く全体の約6割を占めた。滋賀県のレッドリスト(2015年版)に掲載されている種としては要注目種のルリボシヤンマと分布上重要種のコノシメトンボが確認された。またルートセンサス法で設置した調査区周辺の土地利用を把握した。DCA分析およびCCA分析によりトンボ類と土地利用の関係を検討した結果,「湖岸」「河川」「林」と一部のトンボ類に関係があることが明らかになった。

  • 屋祢下 亮, 渡邊 敬太
    2020 年 46 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    生態系に配慮した法面緑化技術として,ウツギなど先駆性樹種の種子を用いた吹付け工法を開発するために,微細で光発芽性であるウツギ種子の発芽に適した固化材,基盤材の選定を行った。その結果,土木分野で増粘剤として使われている水溶性セルロース誘導体(商品名:SFCA 2000)0.5%水溶液を固化材に,径1.0 mm程度の微粒赤玉土を基盤材に用いて厚さ5 mmで播き出すことによって,模擬法面にてウツギ種子が定着し,発芽することが明らかとなった。また,播き出したウツギ種子を活着させるため,土壌厚の調整やイネ科草本類との混播について検討することが今後の課題として抽出された。

  • 山根 明, 友口 勇生, 内田 泰三
    2020 年 46 巻 1 号 p. 178-181
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    九州20水系の自然性を河川植生の自然性区分(6類型)により定量的に示し,九州の河川環境の現況を明らかにすることを試みた。その結果,九州20水系(2008~2014年)では,堤外地と堤防敷に望ましい植生の面積割合は,それぞれ54.9%(自然性区分5, 4及び3)と29.4%(自然性区分3)であった。

  • 村井 智揮, 高橋 輝昌, 土屋 秀人, 池見 勝広, 佐々木 大賢, 人見 拓哉
    2020 年 46 巻 1 号 p. 182-185
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    木質系材料の堆肥の粒径のバラツキを小さくするために,材料の粒径,窒素源となる副資材の量,切り返しの回数による酸素供給量の調整が堆肥化の進行に与える影響を評価した。材料を小さく粉砕することで堆肥の大粒径部分の割合を減らすことができた。また,窒素源である食品残渣の量を減らしたり,切り返し頻度を減らして嫌気的条件にすることは堆肥化の進行を抑制したが,粒径組成には与える影響は少なかった。

  • 友口 勇生, 内田 泰三, 早坂 大亮
    2020 年 46 巻 1 号 p. 186-189
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    九州の一級水系を対象に,同水系の河川環境,とくに外来植物群落の変遷について,河川水辺の国勢調査結果から解析を行った。その結果,次のことが示唆された。多くの水系で過去から現在にかけて,在来植物群落が外来植物群落に変遷した。施設地や人工草地等の開発(人為的攪乱)も増加したが,同攪乱の影響は,主として外来植物群落に及んだ。それ以外の外来植物群落に着目すると,過去から現在にかけてその多くがセイタカアワダチソウ群落からセイバンモロコシ群落に変遷した。とくに,この傾向は,北部九州で顕著であった。また,この変遷の過程においては,上記2群落の複合型や前者とタチスズメノヒエ群落との複合型等を形成する時期もあった。

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