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井上 晴太, 齊藤 晋, 正司 晃子, 山中 浩気
2024 年41 巻3 号 p.
171-177
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
PIP 関節屈曲拘縮は難治である.掌側の観血的授動術が広く行われているが,術後の再発率は高く,未だ挑戦的課題である.一方で,PIP 関節伸展拘縮については,側索解離術により比較的安定した治療成績が得られることが知られている.側索は,屈曲により背側から掌側に移動することが知られている.著者らは,術後に屈曲拘縮が再発する要因の一つとして,側索の掌側偏位による潜在的伸展機能不全を考えた.そこで,まず掌側の拘縮解除と関節牽引により伸展位を獲得し,その後,伸展位を保持して側索を背側に再配置させ,伸展拘縮の状態となった後に側索解離を行う2 段階手術を考案した.伸展制限45°以上のPIP 関節屈曲拘縮を呈する2 例4 指に本法を適応したので,その治療経過と手術成績を報告する.1 回目手術である掌側の解離術から2 回目手術である背側の側索解離までの期間は8 か月と12 か月であり,2 回目術後7 か月と術後2 年で80°と50°の伸展可動域の改善を得た.本法は,2 回目手術である側索解離までの伸展位維持期間に一旦屈曲可動域は減少するが,側索の背側移動により伸展機能が再獲得されることで,屈曲拘縮の再発を防ぐことができると考えられた.
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原田 義文, 戸祭 正喜
2024 年41 巻3 号 p.
178-181
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
Snapping triceps syndrome は,上腕三頭筋内側頭の弾発を伴う肘部管症候群である.電気生理学的所見に乏しく,本病態の理解がなければ診断治療に難渋する.症状をきたす病態としては尺骨神経の摩擦性神経炎であると考えられるが,治療では尺骨神経の前方移行に加え,上腕三頭筋内側頭切除が必要となる.術中所見では上腕三頭筋内側頭遠位に破格様の腱成分を認め,切除により弾発の改善を認めた.尺骨神経前方移行のみで症状改善は期待できず,注意を要する.
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畑中 渉
2024 年41 巻3 号 p.
182-184
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
上肢骨折患者では34.1%が亜鉛欠乏,46.3%が潜在性亜鉛欠乏で,8 割が亜鉛不足状態であった.上肢骨折患者は,体幹ならびに下肢骨折患者に比べて,血清亜鉛値は有意に高く,年齢は有意に低く,BMI は有意に高かったが,骨粗鬆症群との間に有意差はなかった.上肢骨折患者は,血清亜鉛値が極端に低くなくとも,体幹ならびに下肢骨折患者に比べて,若くして骨折を生じていた.骨粗鬆症性骨折の中で比較的初期に上肢の骨折を生じる症例が多いため,骨折予防のための骨粗鬆症評価において,亜鉛充足度のチェックが求められる.
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五月女 慧人, 松井 雄一郎, 木田 博朗, 遠藤 健, 門間 太輔, 岩崎 倫政
2024 年41 巻3 号 p.
185-191
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
当科の過去13 年間のSNAC wrist の術式と治療成績を調査し,その治療方針を再検討することを目的とした.2011 年1 月~2024 年3 月に,SNAC wrist の診断で手術を行った症例を対象とし,術式,病期,偽関節部位,術後の成績を調査した.23 例23 手に対して手術が行われ,内訳は腸骨移植術が13 手,血管柄付き橈骨移植術が2 手,Four corner arthrodesis が1 手,近位手根列切除術が2 手,舟状骨部分切除+橈骨茎状突起切除+腱球置換術(SETBR)が5 手であった.Stage Ⅰ,Ⅱに対する偽関節手術の治療成績は良好だったが,偽関節部位が近位の場合,全例で骨癒合が得られなかった.Stage Ⅱ,Ⅲに対する関節形成術の成績は比較的良好であり,手関節可動域はSETBR で高い傾向にあった.SNAC wrist の治療では,画像上の変性変化を治療するのではなく,患者の背景や希望を考慮し,除痛と機能温存を目的とした治療を行うべきである.
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清永 健治, 萩原 秀, 堀井 倫子, 安食 孝士
2024 年41 巻3 号 p.
192-196
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
手指伸筋腱断裂患者に対して制限下早期自動運動療法(以下,ICAM 法)を行った.対象は9 名9 指で,損傷部位は全例でZone 5 であり,損傷指は示指2 指,中指5 指,環指1 指,小指1 指であった.介入の結果,術後3 か月で平均%TAM は93.4%を獲得することができ,9 例中7 指が日手会機能評価で優を獲得できた.ICAM 法は術後早期から可動域の拡大を得ることができ,なおかつ従来法の問題点であったMP 関節の屈曲制限や伸展不足なども解決できており,useful hand 獲得に向けた有効な方法の一つではないかと考えられた.
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湯浅 悠介, 千馬 誠悦, 白幡 毅士, 齋藤 光, 宮腰 尚久
2024 年41 巻3 号 p.
197-199
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
掌屈転位の大きい中手骨頚部骨折に対する治療成績を,保存療法群と手術療法群に分け,比較検討した.対象は掌屈転位30°以上の中手骨頚部骨折33 例36 指とした.受傷時の年齢,掌屈角度に有意差はなく,経過観察期間は手術療法群が有意に長かった(p=0.0118).最終経過観察時の掌屈角度は手術療法群が有意に小さく(p<0.001),中手指節(MP)関節伸展角度は手術療法群が有意に大きかった(p=0.00529).骨癒合率,合併症発生率,疼痛残存率,MP 関節屈曲角度,% total active motion(%TAM),握力健側比に有意差はなかった.本骨折の掌屈変形への代償は,MP 関節過伸展で行われるとされるが,その代償には限界があると考えられた.本骨折に対する保存療法,手術療法はともに概ね良好な治療成績であるが,本来のMP 関節の可動域を再獲得するためには,角状変形を解剖学的な状態に整復保持する必要があり,そのためには手術療法を選択することが望ましい.
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千葉 恭平, 河野 正明, 永原 寛之
2024 年41 巻3 号 p.
200-206
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
背尺側骨片を有する橈骨遠位端骨折を掌側ロッキングプレートで固定する際,骨片へのスクリューの挿入に,骨片やsigmoid notch の形状がどう影響しているかを調査した.2009 年 9月~2023 年9 月に治療したAO 分類C 型の背側転位型骨折のうち,背尺側骨片を有した365 手を対象とした.単純CT の水平断像で,全例の背尺側骨片とsigmoid notch の形状を調査した.また,術後の単純CT 像を評価できた115 手はスクリューの骨片への挿入有無を,術直後と癒合後の単純CT 像を評価できた57 手は骨片の矯正位損失を調査した.角度固定型プレートでは骨片をとらえにくい症例が3.6%存在した.115 手中24 手は骨片にスクリューが挿入されていなかった.骨片形状によっては,Stellar P(HOYA)がスクリュー挿入に有利である可能性があった.57 手中,背尺側骨片が矯正損失していたのは3 例で,うち2 例はスクリューが挿入されていなかった.一方,スクリューが挿入されていなくとも,整復位が保たれていたものが9 例存在した.3.6%はスクリュー挿入に限界があったものの,骨片の制動には他の要素も影響することが示唆された.
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西村 大幹, 吉田 史郎, 松浦 充洋, 高田 寛史, 平岡 弘二
2024 年41 巻3 号 p.
207-210
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
術式が多彩な変形性手関節症だが,近年,低侵襲な骨切り術や関節形成術などで対応する報告が増加している.Ozyurekoglu らの経皮的逆行性スクリュー固定法は,舟状骨の摘出と手根骨間の骨切りのみを4cm の皮切で行い,手根骨間の固定は手背から経皮的に行う低侵襲な術式である.著者らはその方法を応用させて第2-3 指間より経皮的にscrew を挿入し,有頭月状骨切部に対して垂直にscrew を刺入した.Four corner fusion の基本概念は,DISI 変形を矯正した状態で有頭月状骨を固定することにあり,同部位の骨癒合率を高めるために有鉤骨と三角骨の固定を追加する.しかし,原法ではK-wire を使用しており,近年,広く使用されているheadless compression screw は高い骨癒合率を誇る.有頭月状骨間の十分な骨癒合が得られるのであれば,bicolumnar arthrodesis のような,より簡便な部分関節固定で十分な治療効果を得られるのではないかと考える.
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大村 泰人, 関根 巧也, 上原 浩介, 門野 夕峰
2024 年41 巻3 号 p.
211-217
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折(DRF)に対して優れた固定性が得られる掌側ロッキングプレート(VLP)の内固定も,解剖学的整復とVLP の至適な設置が実現できなければ,矯正損失を生じるリスクがある.著者らは最初に掌側皮質骨の解剖学的整復を行い,これを確実に仮固定した後にVLP を設置しており,これがすべての骨折型で矯正損失を防ぐ重要な手段と考えている.今回,著者らの手術手技の有効性を,DRF の矯正損失のリスク因子である掌尺側皮質骨粉砕例を後ろ向きに調査することで検討した.対象は掌尺側皮質骨の粉砕を伴うDRF で,術後3 か月間以上経過観察できた23 例である.術直後と最終診察時のradial inclination(RI),palmar tilt(PT),ulnar variance(UV)を計測し,ΔRI≧5 度,ΔPT≧5 度,ΔUV≧2mmを矯正損失ありとした.矯正損失割合が25~56%と報告される掌尺側皮質骨粉砕例でも,本研究では8.7%と低く,本手術手技の有効性を示唆する結果となった.
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北條 篤志, 森谷 浩治, 黒田 拓馬, 幸田 久男, 坪川 直人, 牧 裕
2024 年41 巻3 号 p.
218-220
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
手指再接着術後の手術部位感染(SSI)の発生率は低いとされており,その報告も少ない.本研究では,2012 年7 月~2023 年6 月に当院で手指再接着術を行った242 例のうち,術後90 日以内にSSI を生じた8 例(3.3%)を対象に,年齢,性別,SSI 発症時期,受傷機転,切断状況,手術時間,起炎菌などを調査した.8 例全て男性で,平均年齢は42.6 歳,SSI 発症は術後2~84 日(平均44 日),30 日以内の早期SSI は2 例(0.8%)だった.早期SSI の2 例は重度損傷であったが,遅発性SSI の6 例は単純外傷で,全SSI の起炎菌は黄色ブドウ球菌が最多であった.手指再接着術後のSSI 発生率は3.3%であり,早期発症では切断指の高度汚染が,遅発性SSI では鋼線刺入部の感染が原因と考えられた.早期SSI の予防には徹底したデブリドマンが必要であり,汚染の程度によっては再接着術を断念して断端形成術も考慮せざるを得ない.遅発性SSI には,創部管理とともに,骨癒合が遷延する場合は可及的早期の再手術が必要ではないかと考える.
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井手尾 勝政, 加藤 悌二, 米満 龍史, 入江 弘基, 宮本 健史
2024 年41 巻3 号 p.
221-226
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
手指の狭窄性屈筋腱腱鞘炎の長期罹患例では,PIP 関節の伸展制限を呈し治療に難渋することがある.PIP 関節伸展制限を伴う狭窄性屈筋腱腱鞘炎例に対して,直視下A1 靱帯性腱鞘切開に加えて,皮下A2 靱帯性腱鞘切開を行った29 指の術後成績について検討した.A2 靱帯性腱鞘の皮下切開を行うことで,全例で術直後にはPIP 関節の完全伸展が得られた.術後にVAS,PIP 関節伸展制限角度,患肢握力,DASH 機能障害/症状スコアは有意に改善した.ただし,術前に30°以上のPIP 関節伸展制限を認めた症例では,術直後の可動域を維持できなかった例があり,後療法が重要と考えられた.術後6 か月まで経過観察できた症例にbowstringing を呈した症例はなく,本術式はPIP 関節伸展制限を伴う狭窄性屈筋腱腱鞘炎に対する術式として有用であると考えられた.
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黒田 拓馬, 森谷 浩治, 幸田 久男, 坪川 直人
2024 年41 巻3 号 p.
227-231
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
背尺側骨片(DUF)を有する橈骨遠位端骨折34 例を対象として,DUF の関節面の骨折形態とDUF の術後整復位の関連を調査した.術前CT でのDUF の骨片径と関節面の骨折形態より,5 型[1 型:転位なし,2 型:背側関節包付着部裂離骨折,3 型:単独のDUF を有する,4 型:DUF と掌尺側骨片(VUF)の両方を有し,DUF 関節面が遠位橈尺関節(DRUJ)径の50%未満,5 型:DUF とVUF の両方を有し,DUF 関節面がDRUJ 径の50%以上]に分類した(DUF 分類).術後CT において,DUF の整復不良は8 例[DUF分類1 型:1/5 例(20.0%),2 型:0/4 例(0%),3 型:2/12 例(16.7%),4 型:2/8 例(25.0%),5 型:3/5 例(60.0%)]に認め,全例プレート鉗子による整復操作のみが行われていた.DUF とVUF の両方を有し,かつDUF の関節面が大きな症例では,掌背側方向への圧着のみでは橈骨月状骨窩の再建は困難であることが示唆された.
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櫻井 佑斗, 川崎 恵吉, 酒井 健, 筒井 完明, 久保 和俊, 工藤 理史
2024 年41 巻3 号 p.
232-236
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
舟状骨骨折・偽関節の治療は,Headless double thread screw(以下HS)での固定がgold standard となっている.近年,強固な固定法として舟状骨用のlocking plate(LP)が開発されたが,2 本のHS 固定がLP 固定と同等の固定力を持つとの報告がある.2019 年以降,当科で不安定性を有する舟状骨骨折・偽関節に対して,2 本のHS 固定を行った10 例を対象とした.平均年齢26.6 歳,1 例を除き男性であった.手術法は,新鮮骨折4 例中3 例で経皮的スクリュー固定,月状骨周囲脱臼の1 例で観血的整復固定術,偽関節6 例中5 例で鏡視下手術,1 例で血管柄付き骨移植術を行った.全例で骨癒合を得た.RL angle の平均は,術前7.9°,術後1.2°であった.術後最終可動域の平均は掌屈61.5°,背屈67.0°,握力健側比は91.1%,Mayo Wrist Score は88.5 であった.2 本のHS 固定は,固定性も臨床成績も良好であり,体格の小さい日本人でも使用可能であった.
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石原 健嗣, 中後 貴江, 松橋 美波
2024 年41 巻3 号 p.
237-241
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
外傷性母指CM 関節脱臼は稀な外傷であり,骨性支持に乏しい母指CM 関節では脱臼整復後に不安定性を生じやすい.治療方法として外固定,経皮的鋼線固定,靭帯修復,靭帯再建などがあるが,その選択については定まった見解がないのが現状である.著者らの施設で治療を行い,経過観察可能であった外傷性母指CM 関節脱臼5 例について調査を実施した.外固定による保存的加療を行った症例では,疼痛や不安定性残存のために後に靭帯再建術を要していた.急性期に靭帯再建あるいは靭帯修復を実施した症例では,疼痛の残存がなく,握力や可動域に関しても良好な成績であった.外傷性母指CM 関節脱臼は疼痛や不安定性残存のリスクがあり,脱臼整復後に再脱臼や不安定性を呈する症例や,保存的加療により症状の残存する症例では,積極的に手術加療を考慮すべき外傷である可能性がある.
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浦田 泰弘, 安岡 寛理, 吉村 優里奈
原稿種別: 症例報告
2024 年41 巻3 号 p.
242-246
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
骨原発性悪性リンパ腫(primary bone lymphoma)は,骨以外の臓器に腫瘍細胞を認めない悪性リンパ腫とされ,非常に稀であり治療方法は確立していない.今回,慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma,以下CLL/SLL)による橈骨遠位骨幹端病的骨折の1 例を経験した.CLL/SLL 自体は低悪性度リンパ腫に分類されているが,本症例のごとく多巣性の場合は短期間で病変が進行することがある.治療は化学療法が主体となるが,本症例は病的骨折を生じたため,掌側ロッキングプレートで内固定を行った.その後,短期間で手関節近傍まで骨溶解が進展し,骨折部の再転位を生じたが,Bridging plate を使用することで手関節を温存することができた.
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銭谷 俊毅, 花香 恵, 高島 健一, 齋藤 憲, 寺本 篤史, 射場 浩介
2024 年41 巻3 号 p.
247-250
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
手指の変形性関節症に対する関節固定術は,疼痛改善と関節安定性の獲得が可能な術式として広く行われている.一方,術後の隣接関節症変化に留意する必要がある.本研究では,手指の変形性関節症に対して関節固定術を行った症例の術後隣接関節症変化について検討した.対象は,2006 年1 月~2021 年5 月に手指の変形性関節症に対して関節固定術を行い,術後2 年以上経過観察が可能であった19 例20 指とした.隣接関節症変化は,中手骨指節骨間(MP)関節固定術後の1 指で母指第1 手根中手骨(CM)関節に認めた.また,CM 関節固定術後の3 母指でMP 関節3 指,舟状大菱形・小菱形骨間(STT)関節1 指に認めた.隣接関節症変化を認めるまでの期間は,術後平均93 か月(24-144 か月)であった.本研究では,MP 関節とCM 関節の関節固定術後の4 指(20%)に隣接関節症変化を認めた.遠位指節間(DIP)関節と近位指節間(PIP)関節は運動軸が1 軸性であるのに対して,MP 関節とCM 関節は2 軸以上の動きを持つ.このことは,関節固定術後の隣接関節症変化の発生に影響を与える可能性があると考えられた.
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藤井 賢三, 上原 和也, 油形 公則
2024 年41 巻3 号 p.
251-254
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
著者らは遠位橈尺関節障害に対して,尺側手根伸筋半裁腱による制動術を加えたSauve-Kapandji 法を施行してきた.その治療成績および合併症について報告する.当科で本法を施行した23 例で,術前後の疼痛・関節可動域,合併症の有無およびX 線学的評価を行った.疼痛は術後有意に改善し,術前後での可動域悪化や重篤な合併症の発生はなかった.また,画像所見において背側転位やRadioulnar distance 増大などの近位断端の不安定性を示す所見も認めなかった.可及的遠位での骨切りを含めた骨切り部周囲の軟部組織に対する愛護的な手技の徹底,およびECU 半裁腱による尺骨近位断端部の安定化処置により,良好な治療成績が得られた.
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長谷川 倫子, 仲宗根 素子, 金城 政樹, 赤嶺 良幸, 小浜 博太, 西田 康太郎
2024 年41 巻3 号 p.
255-259
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
外傷による中央索欠損には側索,骨,皮膚の損傷を伴うことが多く,治療に難渋する.今回,側索損傷,骨損傷,皮膚欠損の状態や損傷指に応じて術式を選択し,中央索再建を行った4 症例について報告する.両側側索損傷,もしくは片側全欠損をきたした4 症例中,中指1 例に対しては隣接指の側索を移行するSnow 法を用い,示指2 例に対しては固有示指伸筋腱を近位で切離してturn over する手技を考案し,中央索再建を行った.骨欠損を伴い両側側索が断裂した環指1 例に対しては,中節骨基部に縫着した尺側側索に,橈側側索と中央索を縫合して再建を行い,DIP 関節固定を追加した.皮膚欠損についてはEIP turn over を行った2 例に対して,EIP turn over と同一皮切を用いて第2 背側中手動脈穿通枝皮弁で被覆した.その他の2 例は骨上の皮膚欠損であり,人工真皮で被覆した.術後,全例ともPIP 関節の可動域は良好であり,復職や元の生活への復帰が達成され,中央索欠損に対する適切な術式選択が重要であると考えられた.
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川﨑 有希, 江尻 荘一, 箱﨑 道之, 田山 信敬, 松本 嘉寛
2024 年41 巻3 号 p.
260-262
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
今回,著者らは手根管レベルでの正中神経内血管腫による正中神経麻痺を生じた1 例を経験したので報告する.症例は74 歳男性で,主訴は左手指のしびれと巧緻障害であった.MRI で手根管レベルの正中神経内に造影効果のある腫瘍性病変を認め,保存療法で症状が改善しないため手術を行った.駆血下で手根管を開放したが明らかな所見を認めず,駆血を解除したところ正中神経内に青色の病変が出現した.腫瘍を周囲の神経線維束から剥離し,連続する血管を焼灼して摘出した.術後,手指のしびれは軽減し,短母指外転筋の筋力も改善した.本疾患は術中でも駆血下では肉眼的に診断困難であり,体表から腫瘤が触知できず,手根管症候群の好発年齢に生じた場合には鑑別が困難となる.電気生理学的検査所見に比して神経の術中所見に乏しい場合,本症例のように駆血を解除し,神経を観察してみることが重要である.また,手根管症候群との診断のもと,十分な除圧を行ったにもかかわらず術後に症状が改善しない場合は,本疾患を念頭に置いて超音波検査やMRI による再評価を行うことも考慮する必要がある.
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関根 巧也, 大村 泰人, 上原 浩介, 門野 夕峰
2024 年41 巻3 号 p.
263-266
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
透析シャント肢側に生じた橈骨遠位端骨折(DRF)は,手術侵襲に伴うシャント閉塞や出血リスクを回避するため,より低侵襲な保存療法,経皮的鋼線固定や創外固定を選択される傾向がある.当院では,創外固定と経皮的鋼線固定を併用した症例で矯正損失を早期に生じた経験があり,以後,プレート固定を第一選択に行っており,その治療成績について調査したので報告する.対象は2014 年8 月~2022 年7 月にシャント肢側のDRF と診断し,当院でプレート固定を行い,半年以上追跡できた6 例である.手術はターニケットを使用せず,エピネフリン含有局所麻酔薬を局所注入して行った.皮膚切開は通常よりもやや尺側においてtrans FCR approach を用いた.平均手術時間は84 分,平均術中出血量は30g だった.6 例中1 例で矯正損失を生じたが,全例で感染やシャント閉塞などの周術期合併症は起こさなかった.透析シャント肢側のDRF に対するプレート固定は,矯正損失が少なく,シャント関連の合併症を生じず,有用な治療選択肢の1 つとなり得る.
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日高 典昭, 細見 僚, 鈴木 啓介, 山中 清孝
2024 年41 巻3 号 p.
267-272
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
MP 関節の過伸展変形を伴う母指CM 関節障害に対するMP 関節制動手術(VCM)の意義を検討した.術前にMP 関節が15°以上の過伸展変形を呈し,CM 関節形成を施行して6 か月以上の経過観察を行った30 例31 手を対象とした.男性5 例5 手,女性25 例26 手,平均年齢70 歳,平均経過観察期間は2 年4 か月であった.VCM を施行した10 手(P 群)としなかった19 手(N 群)を比較したところ,術前後の平均MP 関節過伸展角度は,N 群では29 度から23 度,P 群では42 度から9 度に減少し,両群間に有意差があった.しかし,術後の平均Hand20 はN 群では17,P 群では29 で有意差がなかった.動態撮影では,N 群においてCM 関節から動き出すC 型は6 手,MP 関節から動き出すM 型は3 手,P 群においてはC 型5 手,M 型2 手であり,両群間に差はなかった.本研究結果から,VCM により過伸展変形はよく制御されるが,VCM の有無にかかわらず患者立脚型評価では差がないことが分かった.
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中村 恒一, 磯部 文洋, 村井 貴
2024 年41 巻3 号 p.
273-279
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
認証あり
本研究の目的は,母指CM 関節症に対してCM 関節面を掻把し,内転した中手骨を矯正し,開いた掌側部分に骨移植を行うopen wedge fusion(open 法)と,中手骨近位背側を切除し,内転した中手骨を矯正して固定するclosed wedge fusion(closed 法)の2 つの術式の術後1 年時の成績を比較することである.34 例を対象とした.どちらの術式もVAS,DASH score ともに有意に改善した.Closed 法群で手術時間および固定した中手骨と大菱形骨長が有意に低値であった.術後1 年時のMP 関節痛はopen 法群の37%,closed 法群の13%に認めた.Open 法群では術後1 年時の伸展角度が有意に低値であり,屈曲角度が有意に高値であった.Closed 法による関節固定は術後のMP 関節痛の発生を軽減すると考えられた.それによる筋力低下は生じなかった.MP 関節の術前過伸展はopen 法の方が術後により矯正されていた.
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浅田 雅樹, 金谷 貴子, 池本 和子, 高瀬 史明
2024 年41 巻3 号 p.
280-282
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
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Dupuytren 拘縮術後に関節伸展角度を維持する目的で伸展スプリントが使用されるが,施設によって形状・装着期間は様々である.当院では,掌側からスプリント材を当てて最大関節伸展位を保持できるよう作製した掌側型を主に使用してきたが,最近では掌側型に背側から関節を圧迫するスプリント材を追加した挟み込み型を使用している.今回,術前に小指PIP 関節伸展不足角度(Extesion Deficit,以下ED)≧30°を呈したDupuytren 拘縮術後30 指に対し,掌側型もしくは挟み込み型の夜間スプリントの装着を行い,術後4 週間経過時の両者のED の変化,改善度(術前ED-4週間目ED/術前ED)を比較した.両装具間での術後ED の変化,改善度に有意な差はなかった.手術後の伸展スプリントは型に関係なく,他動的最大PIP 関節伸展位を保持できれば,効果が期待できると考えた.
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田中 秀明, 飯田 博幸, 橋野 悠也
2024 年41 巻3 号 p.
283-285
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
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手根管症候群の再発例とトランスサイレチン型心アミロイドーシスとの関連について検討した.29 例58 手の両側手根管症候群の患者(再発4 例,非再発25 例)のアミロイド陽性率および心アミロイドーシスの診断頻度を調査した.その結果,9 例(31%)でアミロイド陽性となり,9 例中4 例はトランスサイレチン型アミロイド陽性の再発例であった.また,9 例中2 例は心アミロイドーシスの診断となり,いずれも再発例であった.再発手根管症候群は心アミロイドーシスの大きな危険信号であるといえる.
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森本 友紀子, 石河 恵, 濵 峻平, 高松 聖仁
2024 年41 巻3 号 p.
286-288
発行日: 2024年
公開日: 2024/12/24
ジャーナル
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Lichtman 分類の病期3B 期以降の進行期キーンベック病に対する加療は定まっていないが,部分手関節固定術,近位手根列切除術などのサルベージ手術を施行している報告を散見する.当科にて,病期3B 期のキーンベック病に対し,適応が病期3A 期までとされる有頭骨短縮骨切り術(以下CSO)を施行し,短期的に良好な除痛効果を得たので報告する.病期3B 期のキーンベック病6 例に対してCSO を施行した.術後,手関節可動域,握力,DASH スコアは全例で速やかに改善し,最終観察時までに症状の増悪は認められなかった.単純X 線パラメーターのLunate Height Index,Carpal Height Index は横ばいからやや低下傾向であった.2 例で隣接関節の関節症性変化の進行を認めたが,除痛効果は維持できている.将来的な関節症性変化の進行や除痛効果の維持等について長期的な経過観察が必要と考える.
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