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爲本 純鈴, 車谷 洋, 伊達 翔太, 砂川 融
2025 年41 巻4 号 p.
312-316
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
虫様筋の筋活動は,起始部である深指屈筋腱の張力が変化する中手指節関節(以下,MP 関節)指位と手関節肢位の影響を受ける可能性があるが,詳細に調査した報告はない.本研究は,MP 関節指位と手関節肢位が虫様筋の筋活動に与える影響を明らかにすることを目的とした.健常成人15 名に,右示指近位・遠位指節間関節屈曲伸展運動を,MP 関節指位3 条件(屈曲0°,30°,60°)と手関節肢位3 条件(背屈45°,中間位,掌屈45°)の計9 条件で行わせた.表面筋電図での虫様筋の筋活動は,手関節肢位による影響はなかったが,MP 関節指位による影響があり,屈曲0°の方が屈曲30°,60°より有意に増加した.術後リハビリテーションの際には,MP 関節伸展位での手指関節運動を行うことで,虫様筋の筋活動を促すことができる可能性が示唆された.
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御子柴 直紀, 岩本 卓士, 清田 康弘, 鈴木 拓, 松村 昇, 佐藤 和毅
2025 年41 巻4 号 p.
317-320
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
手根管症候群は全身性アミロイドーシスの初発症状の一つであり,近年,手根管症候群に対する術中腱鞘滑膜生検のスクリーニングとしての意義が注目されている.2019 年1 月~2023 年7 月に当院で手根管症候群に対して手術を行い,術中に腱鞘滑膜生検を施行した40 症例を対象に,アミロイド沈着と心アミロイドーシスの関連を検討した.循環器内科からの依頼により施行した症例は14 例,スクリーニングとして施行した症例は26 例であった.循環器内科からの依頼症例は14 例中14 例(100%)がアミロイド陽性であった.スクリーニング症例では26 例中10 例(38%)がアミロイド陽性で,特に男性は5 例中5 例(100%)が陽性であり,アミロイド陽性は,高齢,男性に有意に多かった.スクリーニング症例で心アミロイドーシスの診断に至った症例は1 例(4%)であったが,心疾患の診断に至らなかった症例も今後,心アミロイドーシスを発症する可能性があり,術中腱鞘滑膜生検のスクリーニングとしての有用性の評価にはさらなる縦断的研究が必要である.
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小川 健, 岩渕 翔, 井汲 彰, 原 友紀, 吉井 雄一
2025 年41 巻4 号 p.
321-325
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
キーンベック病術後の8 症例に対し,Gadolinium 造影dynamic MRI を行い,月状骨髄内の血流動態を調査した.造影効果を表すtime-SIR curve を3 つのタイプ(type A:血管床増加型,type B:鬱血型,type C:虚血型)に分類し,臨床成績との関連,T1(proton)強調像における骨再生(Ogawa's grade)との関連を評価した.3 例がtype A,2 例がtype AとB またはC の混在,3 例がtype C であった.Mayo wrist score でgood 以上の4 例はtype A であり,fair 以下の4 例はType C であった.Time-SIR curve は虚血型よりも血管床増加型の方が,臨床成績が良好であることが示唆された.一方で,time-SIR curve における血流量と骨再生,つまり脂肪髄の回復は必ずしも一致しない結果であった.
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本谷 和俊, 下田 康平, 岩崎 倫政
2025 年41 巻4 号 p.
326-330
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
伸筋支帯第6 コンパートメントは尺骨に付着しない二重構造であり,尺側手根伸筋(ECU)は腱溝部で下層腱鞘(subsheath)により尺骨にpulley 状に固定される.ECU 腱鞘炎は伸筋支帯第6コンパートメントの機能不全に起因し,拘束性と非拘束性に分類される.拘束性ECU 腱鞘炎はsubsheath や伸筋支帯と尺骨茎状突起との摩擦および絞扼により発症し,難治例では手術療法が適応となる.今回,著者らはクラリネット奏者に発症した難治性拘束性ECU 腱鞘炎に対し,茎状突起部分切除と伸筋支帯を用いた腱制動術を施行した1 例を経験したので報告する.
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三好 祐史, 轉法輪 光, 島田 幸造
2025 年41 巻4 号 p.
331-334
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
当科で手術加療を行った成人の非外傷性屈筋腱皮下断裂21 例の病態と治療を後ろ向きに調査した.腱断裂の原因は,骨による摩耗が13 例で,うち有鉤骨鉤6 例,舟状骨結節2 例,豆状三角骨関節症2 例,月状骨1 例,骨折変形治癒に伴う尺骨頭あるいは橈骨遠位端の突出1 例ずつと多岐に及び,橈骨遠位端プレートによる摩耗が4 例,感染が3 例,関節リウマチによる滑膜炎が1 例と様々であった.有鉤骨,豆状三角骨,尺骨といった尺側に位置する骨では尺側指の腱断裂,舟状骨や橈骨では橈側指の腱断裂を来した.治療成績は全体の平均%TAM(total active motion)が70.6%で,excellent 5 例,good 7 例,fair 5 例,poor 4 例であった.年齢や関節リウマチの有無,あるいは単独指と複数指腱断裂間の術後成績に有意差はなかったが,単独指での腱断裂を比較すると,小指が母指より術後成績が有意に良かった.腱断裂発症から手術までの待期期間が平均3.1 か月と長いため,多くは腱移行による再建を要し,診断や治療が遅くなると成績不良であった.
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原 由紀則, 川野 健一, 星川 慎弥, 田尻 康人
2025 年41 巻4 号 p.
335-337
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
尺骨神経は肘部で外部からの圧迫により容易に障害される.このような急性圧迫障害は保存治療が原則であるため,手術治療の適応となる絞扼性尺骨神経障害とは明確に区別されなくてはならない.しかし,現状で臨床像から両者を鑑別することは難しい.急性圧迫障害の特徴を把握する目的で,急性圧迫性肘部尺骨神経障害12 例の臨床像と症状回復経過を診療録から調査した.発症時の主症状は,ほとんどの例で手内在筋麻痺ではなく小指しびれであった.肘部神経所見の陽性率はTinel 様徴候90%,肘屈曲試験33%,神経腫大0%であった.症状経過として,脱力症状の改善は発症後平均3.8 か月から自覚されていたが,小指しびれの解消には平均で5.7 か月を要しており,約4 割の症例では3 か月時点でしびれの変化を自覚していなかった.問診で急性圧迫を疑うエピソードを取りこぼさないことは必須であるが,絞扼性と判断して手術を行う際には,限局する神経腫大の確認を忘れないようにしたい.
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佐藤 大祐, 佐藤 光太朗, 村上 賢也, 三又 義訓
2025 年41 巻4 号 p.
338-341
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
当院で2020 年からの3 年間に橈骨遠位端骨折に対して手術を施行した50 歳以上の女性113 例を対象とし,骨粗鬆症治療の現状と効果について後ろ向きに調査した.骨密度検査率は92.9%であり,骨粗鬆症と診断されたのは74.3%であった.骨粗鬆症治療の内訳は,BP 製剤が24 例,VitD3 製剤が4 例,ビタミンK 製剤が1 例,テリパラチドが23 例,デノスマブが2 例,ロモソズマブが7 例であり(治療あり群),25 例は治療が行われなかった(治療なし群).単純X-P の再検率は45.3%であり,両群共に最終調査時に骨癒合が得られた.Dual-energy X-ray absorptiometry(DEXA)の再検率は27.9%であり,最終調査時のYAM 値の変化量は治療なし群が±0.0%,治療あり群が+2.6%であった.二次骨折を生じたのは治療なし群が3 例,BP 製剤投与群が3 例であった.骨粗鬆症の治療を行うことにより,橈骨遠位端骨折の治癒過程を阻害することなく,術後の骨密度が増加することが示唆され,特にデノスマブ,テリパラチド,ロモソズマブは骨密度増加作用が顕著であった.
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田村 文一, 柳林 聡, 吉武 彰子, 海老原 ゆかり
2025 年41 巻4 号 p.
342-345
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
母指CM 関節症に対してMini Tight Rope®︎ を用いた関節形成術では,術後に第2 中手骨側のロープの結紮点が皮下硬結として疼痛や炎症の原因となることがある.著者らは,ロープの結紮法を工夫することでこれらの問題を解決し得たため報告する.対象は2022 年1 月〜2024 年1 月に,Mini Tight Rope®︎ を用いた関節形成術を施行した12 例12 手である.本法では,従来どおりボタンの左右の孔にロープを通した後,さらに対側の孔に通して尺側に引き出し結紮することで,結紮点は常にボタンの掌側かつ尺側に位置するようになる.本法における皮下硬結に伴う疼痛や違和感の訴えは全例で認めなかった.また,ロープの結紮部がボタンの掌側に位置するため,ボタンと第2 中手骨の間に適度な間隙,つまり遊びが生じる.そのため,ロープの締結具合の調節は,単純に最大強度で締結するのみで良いと思われた.
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小山 恭史, 山田 哲也
2025 年41 巻4 号 p.
346-349
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
骨幹端粉砕型橈骨遠位端骨折において,術中では整復に難渋し,術後では経時的矯正損失が生じる可能性がある.著者らは,複数の直方体型の人工骨ブロックを1 個ずつ積み木のように移植する方法を行っている.本法を施行した7 例の術前後の単純X 線像を評価した.各パラメータとも術前生じていた転位が,術直後は正常範囲まで整復され,最終経過観察時の矯正損失量も微小であった.簡便に施行可能であり,良好な整復位の獲得と支持が得られ,有効な方法であると考えられた.
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栗原 美里, 小川 健
2025 年41 巻4 号 p.
350-354
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
本研究は,手指化膿性腱鞘炎の治療成績を集積調査し,持続局所抗菌薬還流療法(iSAP)の有効性と問題点を検討することを目的とする.手指化膿性腱鞘炎13 例のうち,9 例に従来の滑膜切除術,4 例にiSAP を併用し治療結果を検討した.全体の平均年齢は63.7 歳,男性8 例,女性5 例で,Loudon 分類の1 期1 例,2 期7 例,3 期3 例,4 期2 例であった.Flynn 機能評価は優3 例,良9 例,不可1 例で,再発は従来群で1 例に認め,両群で術後可動域,入院期間に有意差はなかった.iSAP 群1 例に薬剤性腎障害を認めた.治療成績は従来群,iSAP 群ともに良好であった.特にiSAP 群では,予後不良とされるLoudon 分類3,4 期でも良好な機能予後が得られ,再発はなかった.局所陰圧閉鎖療法(NPWT)装置装着による機能予後の低下や入院期間延長の傾向は無かった.iSAP の併用により,機能を損なわずに感染制御の確実性を高められる可能性があると考えられた.
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中嶋 優太, 三島 吉登
2025 年41 巻4 号 p.
355-358
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
逆行性指動脈島状皮弁(Reverse Digital Artery island flap:RDA flap)は指の中で大きく採取でき,生着率や知覚回復において安定した成績を持つ点から,有用な皮弁であると位置付けられている.しかしながら,指動脈を切断することが大きな欠点であり,寒冷不耐性の問題も報告されている.今回,指動脈を切断せずに温存し,代わりに指側面の皮下組織を血管茎とし,根部は中節骨レベルで立ち上がってくる指動脈背側枝を栄養動脈とした皮弁を,Artery Sparing RDA flap(AS-RDA flap)と呼称した.本皮弁を4 症例5 皮弁に行い,全生着した.血管攣縮しやすい症例があったものの,術中インドシアニングリーン蛍光造影で血流が確認できた.AS-RDA flap は血行動態以外はRDA flap とほぼ同等であると考えられ,指動脈を犠牲にするRDA flap に取って代わりうる可能性がある.
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仲宗根 素子, 金城 政樹, 知念 修子, 米田 晋, 大久保 宏貴, 西田 康太郎
2025 年41 巻4 号 p.
359-364
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
IP 関節に偏位のあるWassel 分類4 型の母指多指症の軸偏位に対する治療には,軟部組織の縫縮や伸筋腱の腱移行,骨切り術による矯正があり,一定の見解はない.当科では原則として骨軸角度が15°以上の症例に矯正骨切り術を施行している.当科で治療した4 例4 手の術後成績について検討した.平均手術時年齢は13.5 か月,術後経過観察期間は平均102 か月で,手術は全例で橈側母指を切除し,2 例にMP 関節内closed wedge osteotomy を,3 例に基節骨矯正骨切り術を行った.3 例に追加手術を要し,軸変位修正が1 例,関節拘縮治療が2 例であった.最終観察時のMP 角は平均11.3°,IP 角は平均11°で全例改善したが,日本手外科学会術後成績評価表では良1 例,可1 例,不良2 例であった.基節骨の骨切り術の効果は明確でなく,慎重な判断が必要である.また,軟部組織修復が術後のアライメント維持に寄与する可能性が示唆された.
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津田 健人, 野口 政隆
2025 年41 巻4 号 p.
365-369
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
ブシャール結節に対する人工関節置換術は広く行われるが,術後関節可動域や側屈変形が問題となる.当院では現在,背側アプローチにてAVANTA(SBI)人工指関節を使用している.2023 年からPIP 可動スプリントを用いた早期運動療法を行っており,導入前後での術前と最終診察時のPIP,DIP 関節の可動域,Total Active Motion(TAM),側屈角度,Visual analogue scale,Hand20,Quick DASH score を比較検討した.全例で疼痛の軽減あるいは消失を確認した.導入前はPIP 屈曲が66±4.7 度(平均値±標準偏差),DIP 屈曲が18±6.5 度,伸展が-18±6.5 度,%TAM が55.8 であり,導入後はPIP 屈曲が81 度(平均値),DIP 屈曲が55 度,伸展が-9 度,%TAM が81.2%であり,いずれも導入後が良好な可動域を示した.また,側屈に関してもスプリント導入後,増悪をきたした症例はみられなかった.装具装着下での早期運動療法により,良好な可動域の向上が望める.
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竹下 歩
2025 年41 巻4 号 p.
370-373
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
弾発指に対する経皮腱鞘切開術において,エコーで指他動屈曲時の屈筋腱滑走障害を評価することで,十分な腱鞘切開の獲得を確認できるかどうか,108 例127 指を対象に検討した.術前にエコーで滑走障害の型(滑走低下,滑走分離,滑走停止)の評価を行った後に経皮腱鞘切開術を施行し,術直後にエコーで屈筋腱滑走障害を再度評価した.術直後に滑走障害の改善が確認できた126 指(99.2%)では術後経過において弾発指の症状の残存はなく,滑走障害が残存した1 指(0.8%)で弾発現象が残存した.術直後にエコーで指他動屈曲時の屈筋腱滑走障害の改善を確認することで,十分な腱鞘切開が獲得されたかどうかを評価できる可能性が示唆された.
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三重 岳, 有島 善也, 小倉 雅
2025 年41 巻4 号 p.
374-377
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
JSSH version of CTS instrument(CTSI-JSSH)は,疼痛や夜間痛,しびれに関する質問項目を多く含む症状の重症度スコア(CTSI-SS)と機能的状態のスケール(CTSI-FS)に分かれる.2018 年~2022 年に手根管症候群(CTS)に直視下手根管開放術(Open carpal tunnel release:OCTR)を施行した39 例43 手のCTSI-JSSH 術後経過を評価した.CTSI-SS 値は術前が2.55,術後1 週が1.72,術後6 か月が1.36,術後1 年が1.27(中央値)で,術後6 か月まで有意な改善を認めた.CTSI-FS 値は術前が2.0,術後1 週が2.38,術後6 か月が1.38,術後1 年が1.25(中央値)と術後1 週で悪化し,その後は術後6 か月まで有意な改善を認めた.CTS 患者の疼痛や夜間痛,しびれは術後速やかに改善し,術後6 か月から1 年にかけて症状の改善はプラトーに達し,機能面では術後一時的に低下するが,6 か月まで有意な改善を認めた.
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井上 美帆, 鶴田 敏幸, 峯 博子
2025 年41 巻4 号 p.
378-382
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
肘部管症候群の原因は種々あるが,変形性肘関節症による骨棘形成は神経を直接圧迫する原因の一つとなりうる.著者らはOsborne 法を行った後,肘部管底の骨棘を切除する方法を行っており,今回その長期成績を報告する.対象は本手術を行い,術後10 年以上経過観察可能であった9 例11 肘とした.男性8 例,女性1 例で,手術時年齢平均51.6±12.4 歳であり,術前,最終調査時にnumeric rating scale(NRS),小指のSemmes-Weinstein monofilament test(SWT),尺骨神経の運動神経伝導速(MCV),筋力,肘関節可動域,Quick-DASH,肘部管底の骨棘再発の有無を調査した.最終調査時,NRS は有意に改善した.SWT,MCV は改善傾向を示したものの有意差はなかった.筋力は有意に改善した.肘関節可動域に有意差はなく,Quick-DASH は有意に改善した.肘部管底の骨棘再発を3 肘に認めたものの,最終調査時Messina の評価はexcellent が8 肘,good が3 肘であった.本法は,肘部管底の骨棘を切除することで神経の十分な除圧が得られ,長期的にも良好な成績であり,肘部管症候群に対する術式の一つとして有用と考える.
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定岡 美里, 花香 恵, 高島 健一, 射場 浩介
2025 年41 巻4 号 p.
383-386
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
母指多指症Wassel 分類6 型は複雑な変形を呈する症例が多く,術後成績は不良とされているが,術後中長期成績に関する報告は少ない.今回,当科で手術を行ったWassel 分類6 型の術後中長期成績について検討した.術後3 年以上経過観察が可能であった4 例4 母指を対象とした.全例が男児で,罹患側は右であった.手術時年齢は平均15 か月,術後経過観察期間は平均94 か月であった.全例に橈側過剰母指切除を行い,術中関節造影所見に基づいたCM 関節軟骨部分切除よる関節アライメント矯正と長母指外転筋腱移行を3 母指に,指列移動を1 母指に行った.日本手外科学会の術後母指機能評価は優3 母指,可1 母指であった.母指CM 関節不安定性を呈した症例はなかったが,IP 関節不安定性を認めた1 例に対し固定術を追加した.母指多指症Wassel 分類6 型に対して,CM 軟骨関節面のアライメント矯正と長母指外転筋移行は有用な術式の一つと考える.
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上村 卓也, 松本 聖志朗, 矢野 公一
2025 年41 巻4 号 p.
387-391
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
神経移行術は,正常神経の一部を障害された神経に移行して麻痺筋の再建を行う方法であり,神経筋接合部の近くで神経縫合が可能であるため機能回復が早い利点がある.正常神経を移行する際,端々縫合と端側縫合が選択できる.本研究では,中枢の神経損傷部で神経修復手術(神経縫合や神経剥離)を行い,末梢で端側縫合による神経移行術(supercharged end-to-side distal nerve transfer)を並行した上肢運動神経麻痺10 例(12 神経)の治療成績について検討した.術後平均22 か月において9 神経(75%)の麻痺筋が徒手筋力テスト(MMT)4 以上に回復した.手術は麻痺出現から6 か月(最長でも12 か月)以内で麻痺筋のMMT が0 または1 の症例に対して行い,最終的に腱移行術を行う可能性のある筋枝は温存して移行神経を選択した.中枢での神経修復術に並行した末梢での端側縫合による神経移行術の治療成績は良好であった.
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朝永 育, 辻本 律, 松林 昌平, 西 亜紀, 尾﨑 誠
2025 年41 巻4 号 p.
392-396
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折に伴う掌側月状骨窩辺縁骨片(VLF)は,手術後の尺骨変異(UV)増加の矯正損失が起こりやすい.2017 年12 月~2023 年3 月に,VLF を伴う橈骨遠位端骨折に対してVariable Angle LCP Volar Rim Distal Radius Plate を用いて手術を行った33 例を対象とし,UV 増加の原因を検討した.手術直後と最終観察時のX 線像で,UV 増加が3mm 以上の損失群(5 例)と,UV 増加が3mm 以下の保持群(28 例)の比較検討を行った.損失群のVLF 横径平均と横径プレートサポート率平均は,保持群と比較して有意に低かった(p<0.05).尺骨茎状突起骨折の合併は損失群で5 例中0 例,保持群で28 例中19 例であり,損失群では尺骨茎状突起骨折の合併を認めなかった.VLF を伴う橈骨遠位端骨折の術後UV 増加症例は,VLF 横径が小さく横径プレートサポート率が低く,尺骨茎状突起骨折の合併がない傾向がみられた.
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川端 確, 飯盛 謙介, 高松 聖仁
2025 年41 巻4 号 p.
397-401
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
母指CM 関節症に対する鏡視下大菱形骨部分切除術を施行した13 例(男性5 例,女性8 例)の治療成績について検討した.Eaton 分類はstage 2 が2 例,stage 3 が11 例,平均年齢は66 歳,平均経過観察期間は25 か月であった.術前と最終観察時において,橈側外転は41 度から45 度へ,掌側外転は40 度から47 度へ,側方ピンチは4.7kg から6.8kg へ,指尖ピンチは2.8kg から4.6kg へ,DASH score は39.9 点から12.6 点へそれぞれ改善方向への変化を認めた.中手骨の術後沈下と亜脱臼については,大菱形骨腔が11.8mm から9.6mm,背側亜脱臼は3.5mm から4.0mm となり,共に術前から最終観察時までの変化量は軽度であった.また,中手骨の沈下や背側亜脱臼に対する追加治療は不要であった.母指CM 関節症に対して鏡視下に大菱形骨を部分切除するだけで良好な治療成績が得られた.
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高瀬 史明, 金谷 貴子
2025 年41 巻4 号 p.
402-405
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
超音波検査や神経伝導速度検査は,手根管症候群(CTS)の補助診断法として有用とされている.今回,手根管開放術を施行した症例に対し,術前と術後1 年の正中神経断面積(CSA)と電気生理学的重症度の関連を検討した.術前の正中神経CSA は術前の電気生理学的重症度の進行に伴い増大した.しかし,術後1 年での正中神経CSA の改善度と電気生理学的重症度の改善に有意な関連は認めなかった.
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洪 淑貴, 大塚 純子, 堀井 恵美子
2025 年41 巻4 号 p.
406-409
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
2013 年以降に当院にて治療した上腕骨内側上顆骨端離解35 例中,受傷機転が投球の3 例を調査した.全例男性(13 歳1 例,14 歳2 例)で,中学校野球部もしくは野球クラブチームに所属していた.全例受傷以前から投球時の肘関節内側部痛があり,画像上,内側上顆骨端核および骨幹端部の骨硬化と,骨端線幅の拡大を認めた.2 例では骨接合時に骨折部を掻爬し,術後3 か月までに骨癒合を得たが,骨折部を掻爬しなかった1 例では骨癒合に7 か月を要した.最終診察時,全例で疼痛は消失し,2 例では野球に完全復帰した.投球による上腕骨内側上顆骨端離解の病態は新鮮骨折ではなく,内側型野球肘に生じたacute on chronic 損傷であり,原因は不良な投球フォームである.術後,理学療法士による投球フォームの修正を受けたのは3 例中1 例のみで,主治医の病態に対する理解が不十分であった.
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坂﨑 太紀, 松本 泰一, 平塚 将太郎, 和田山 文一郎
2025 年41 巻4 号 p.
410-416
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
中手骨骨折に対する髄内ヘッドレススクリュー固定の治療成績を報告する.症例は16 例17 骨折,平均年齢は57.0 歳,平均観察期間は11.8 か月であった.骨折部位は第2 中手骨が3 骨折,第3 中手骨が1 骨折,第4 中手骨が6 骨折,第5 中手骨が7 骨折であった.骨折型は骨幹部が12 骨折で,そのうち斜骨折が7 骨折,横骨折が3 骨折,分節骨折が2 骨折であり,また頸部が5 骨折であった.全例で骨癒合し,平均骨癒合期間は2.3 か月であった.% total active motion(%TAM)は平均91.3(71.4~107.1)%,Quick DASH は平均3.75,握力の健側比は平均94.7%であった.中手骨骨折に対する髄内ヘッドレススクリュー固定は,骨折部に強固な固定が得られ,術後は外固定せず早期に可動域訓練を開始できる利点があるだけでなく,プレート固定における術後の伸筋腱癒着やプレート抜去を回避できる利点もあり,有用な術式と考える.
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五嶋 渉, 白戸 力弥, 織田 崇, 山中 佑香, 和田 卓郎
2025 年41 巻4 号 p.
417-419
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
認証あり
重度手根管症候群に対して,手根管開放術と同時にCamitz 法による母指対立再建術を施行した症例の術前と術後6 か月時のつまみ機能を,簡易上肢機能検査(simple test for evaluating hand function:STEF)を用いて比較検討した.対象は6 例6 手で,手術時平均年齢は76.5 歳であった.結果はSTEF の検査7(布)と検査10(ピン),STEF 総得点で有意に改善した.また,握力やピンチ力に有意な差はみられなかった.Semmes-Weinstein monofilament test は4 手が改善した.術後6 か月時では,Camitz 法による母指対立再建の効果とともに,手根管開放術による知覚機能の改善もつまみ機能の改善に寄与していることが推察された.重度手根管症候群に対する母指対立再建術の術後評価法として,STEF は従来の評価法と併用することで,つまみ機能の変化を包括的かつ鋭敏に捉えることができる可能性が示唆された.
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澤田 允宏, 浜田 佳孝, 南川 義隆, 外山 雄康, 堀井 恵美子, 齋藤 貴徳
2025 年41 巻4 号 p.
420-423
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
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過去に著者らが報告したスワンネック変形に対するSwanson 変法を施行した症例をさらに経験したため,術後成績を報告する.対象は5 例5 指,男性2 例,女性3 例,小指4 例,示指1 例,全例スワンネック変形であり,Swanson 変法を施行した.術前の平均自動関節可動域(ROM,伸展/屈曲)はPIP 関節が24.4°/89.2°,DIP 関節が-29.6°/84.8°であり,罹患期間は平均13 年であった.術後最終診察時の平均自動ROM(伸展/屈曲)はPIP 関節が-15°/94.4°,DIP 関節が-5°/72.8°であり,Hand20 は12 点から5.6 点に改善した.経過観察期間は平均2 年7 か月であった.術後スワンネック変形の再燃を認めた症例はなかった.症例数は少ないものの,Swanson 変法はスワンネック変形に対する術式として有用と思われた.
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安井 行彦, 粕谷 泰祐
2025 年41 巻4 号 p.
424-428
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
ジャーナル
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橈骨尺骨骨幹部骨折の1 例,橈骨尺骨遠位端骨折の1 例に伴う前腕コンパートメント症候群の2 例において,掌側区画圧の評価で,遠位での測定値が近位での測定値よりも高かった.いずれの症例も診断に有用とされる手指の他動伸展時痛が軽度であり,筋量が多い近位の腫脹が軽度であったためと考えられた.掌側区画を深層と浅層で分けて評価して治療する必要はないとする報告もあるが,今回の2 例では深掌側区画の開放が必須であった.前腕コンパートメント症候群の診断時には,同じ区画内でも測定部位により圧が異なる可能性に留意し,その他の身体所見と合わせて評価する必要がある.
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古谷 武大, 小薗 直哉, 鍋島 央, 田代 英慈, 山田 恵理奈, 中島 康晴
2025 年41 巻4 号 p.
429-432
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
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肘部管症候群と頚椎疾患は⼿指のしびれ,疼痛,筋⼒低下などの類似する臨床症状を呈し,鑑別が必要となることがあるが,脊髄圧迫病変との関連については報告が少ない.今回,肘部管症候群術後の予後評価と脊髄圧迫病変の関連について調査した.対象は2012 年1 ⽉~2023 年2 ⽉に尺⾻神経皮下前⽅移所術を⾏った27 例28 肘とした.脊髄圧迫病変の評価はMRI のT2 強調像⽮状断で圧迫なし群,圧迫あり群の2 群に分けて行った.脊髄圧迫病変の有無は圧迫なし12 例(44.4%),圧迫あり15 例(55.6%)であった.平均年齢は圧迫なし群58.1 歳,圧迫あり群68.9 歳(p=0.024)と圧迫あり群が有意に高かった.術後評価は赤堀の予後評価基準で優,良,可が,圧迫なし群はそれぞれ5,5,3,圧迫あり群はそれぞれ5,7,3(p=0.71)であった.術前頸椎MRI で53.6%の症例に脊髄圧迫病変を認めたが,圧迫病変の有無は術後成績に影響を与えなかった.
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西脇 正夫, 時枝 啓太, 石原 啓成, 寺坂 幸倫, 三戸 一晃, 堀内 行雄
2025 年41 巻4 号 p.
433-435
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
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母指CM 関節症に対して第1 中手骨外転対立位骨切り術を行った11 例の術前後に,最大伸展位,安静肢位,最大屈曲位で単純X 線側面像を撮影し,骨切り角度,末梢骨片と中枢骨片の角度変化,亜脱臼率を評価した.術前の亜脱臼率の平均は,伸展位27%,安静肢位26%,屈曲位14%であり,屈曲位で小さかった.伸展方向の骨切り角度は平均27°であり,骨切りにより末梢骨片は平均20°伸展し,中枢骨片は平均7°屈曲した.術後の安静肢位での亜脱臼率は,術前より平均11%改善して平均15%となった.安静肢位での亜脱臼率の術前後での改善量と,術前の安静肢位から屈曲位での亜脱臼率改善量との間には,強い正の相関があった.第1 中手骨外転対立位骨切り術では,末梢骨片は伸展するが,中枢骨片は屈曲する.背側亜脱臼は,術直後に全身麻酔下での筋肉が作用しない状態で改善しており,その改善量は術前の屈曲時の改善量と強く相関していた.したがって,術前に屈曲位で亜脱臼の整復程度を評価することが,本法の適応決定に有用な可能性がある.
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天野 滉大, 松木 寛之
2025 年41 巻4 号 p.
436-439
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/28
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転位を認める中手骨骨幹部斜骨折に対する手術法としては,スクリュー固定,プレート固定などが一般的に行われている.スクリュー固定はカットアウトが,プレート固定は伸筋腱の癒着などが問題視されており,臨床成績の低下をもたらしている.著者らはこれらの合併症を防ぐために,鋼線によって髄内釘固定をしたのち,縫合糸または軟鋼線で骨折部を締結する手術を行った.5 例6 指を対象とし,全指で転位を認めず骨癒合が得られ,手指の% total active motion(TAM)も100%であり,良好な成績を得ることができた.この方法は,髄内釘固定に縫合糸または軟鋼線による締結固定を併用することで,骨折部の短縮方向への転位と離開を防止できると考えた.また,プレート固定より低侵襲で癒着が起こりにくく,スクリュー固定より固定性が高くカットアウトのリスクが少ない術式だと考えられる.
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