日本統計学会誌
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44 巻, 2 号
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特集:多重比較の理論と応用—最近の展開
  • 今田 恒久
    2015 年 44 巻 2 号 p. 251-270
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    本稿では順序制約下にある正規母平均列間の差を見つけるための多重比較法を議論する.Lee and Spurrier (1995)は,この問題に対して隣り合う母平均間の差を同時検定するシングルステップ式多重比較法を提案した.Lee and Spurrier (1995) の方式に基づき,白石(2014)は閉検定手順に基づくステップダウン式多重比較法を構築し,道家他(2006) は逐次棄却型ステップダウン式多重比較法を構築した.本稿では,さらに,ステップアップ式多重比較法を提案する.以上 4 つの手法に対して指定した有意水準を満たす棄却限界値と検出力についての数値例を与え,手法を比較する.
  • 白石 高章, 杉浦 洋
    2015 年 44 巻 2 号 p. 271-314
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    分散が同一で平均に傾向性があるk群の正規分布モデルを考える.白石(2014)は,Hayter (1990)とLee and Spurrier (1995)のシングルステップの多重比較検定を優越する閉検定手順の理論を構築した.2群間のt検定統計量の最大値maxi<i (−tii)の分布の上側100α%点 (α=1−(1−α)ℓ/M, 2 ≦ ℓ ≦ Mk)を使って優越性の証明をおこなうことができる.これらの検定で用いるmaxi<i (−tii)の分布の上側100α%点を求める具体的な計算式を示す.また,Williams (1971)の逐次棄却型検定法で使われる分布の上側100α%点を求める計算式を示す.つぎに,これらの計算に現れる密度関数の性質を明らかにし,それらがLund and Bowers (1992)とStenger (1993)のsinc近似で効率的に近似できることを示す.最後にsinc近似法の例として,Hayter (1990)のシングルステップの多重比較検定を優越する閉検定手順を実行するための上側100α%点を求める計算アルゴリズムを与える.また,その有効性を数値実験により示す.
  • 中村 智洋, 八木 圭太, 山本 義郎, 道家 暎幸
    2015 年 44 巻 2 号 p. 315-339
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    この研究は,2元表において,セル毎の逐次的な用量反応試験によって得られた観測値をもとに,交互作用をもつ最小用量を逐次的に検出する逐次型多重比較法を提案する.この方法を実現するために,2×2対比を用い,交互作用なしとする帰無仮説を逐次的に検定するこの手法に群逐次検定法を応用する.もし,この逐次検定で,早い段階で交互作用を持つ用量を検出したら,その段階までの少ない観測値でこの手順を終了出来る.これより,観測値を得るのに高い費用を必要とするとき,この手法は経済的に有効である.この方法の中で,定義されたType I familywise error rateを満たすような繰返し信頼限界を決めるための積分公式を導出する.さらに,検出力を保ちながら,各セルにおける必要標本サイズをどのように求めるかを示す.シミュレーションでは,いくつかの母平均の配置に対し,検出力や必要標本サイズに関して,3つのアルファ消費関数をもとにした方法間の有効性を比較する.
  • 西山 貴弘, 兵頭 昌
    2015 年 44 巻 2 号 p. 341-362
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    本論文では,高次元枠組みにおける平均ベクトル間の多変量多重比較法について議論し,すべての対比較に対する近似同時信頼区間の構成法を提案する.正規分布の下での提案統計量の上側100α%点の漸近展開の結果を紹介し,正規性の仮定が外れた場合における帰無仮説の下での近似分布を導出する.最後にモンテカルロ・シミュレーションによって近似精度を数値的に評価する.
特集:行列分解による多変量データ解析
  • 足立 浩平
    2015 年 44 巻 2 号 p. 363-382
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    現行の標準的な因子分析の定式化では,因子負荷量と独自分散は固定したパラメータであり,共通・独自因子は潜在的な確率変数として扱われる.これとは対照的に,共通因子および独自因子もパラメータと見なして,モデル部全てをパラメータ行列で表現する因子分析の定式化が近年になって提示されている.これを行列因子分析と名づけて,その諸性質を論じることが本稿の主題である.論及することには,行列因子分析の解法が,線形代数の定理だけに基づく点で明解であり,低階数近似としての主成分分析とは対照的に,因子分析をデータ行列の高階数近似と見なせる論拠を与えることが含まれる.さらに,行列因子分析の解と標準的な因子分析の解を比較する数値例を提示し,行列因子分析を発展させたスパース因子分析法にも言及する.
  • 亀岡 弘和
    2015 年 44 巻 2 号 p. 383-407
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    実世界にはパワースペクトル,画素値,頻度など,非負値で表されるデータが多い.このように非負値で表されたデータを有意な加法的な構成成分に分解することを目的とした多変量解析手法を非負値行列因子分解 (Non-negative Matrix Factorization; NMF)といい,近年音響信号処理分野をはじめ様々な分野で注目を集めている.本稿では,NMFの基本性質,アルゴリズムの導出方法,生成モデルとしての解釈,音響信号処理への応用とそのための拡張モデルについて解説する.
  • 坂田 年男, 角 俊雄, 宮崎 充弘, 前原 貴憲
    2015 年 44 巻 2 号 p. 409-450
    発行日: 2015/03/26
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    データ解析におけるテンソルとは統計学でなじみの分割表と同じく高次元配列データのことであり,分割表が整数値をとるのに対して,テンソルは成分が任意の実(複素数)値をとる.その解析法の重要性は明らかであり,実際すでに様々な分野で応用されている.データ解析の基本はデータを分解し重要な成分を抽出することにあるが,本論考はテンソルデータのPARAFAC分解に焦点を絞り,中でも階数問題についてその数理的側面の解説を行う.
日本統計学会研究業績賞受賞者特別寄稿論文
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