日本統計学会誌
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49 巻, 1 号
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原著論文
  • 白石 高章, 松田 眞一
    2019 年 49 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    交互作用のある二元配置モデルを考える.このとき,すべての主効果の相違に関するシングルステップの多重比較法としてTukey (1953)を基にした統計手法を提案できる.同様に,主効果に順序制約がある場合に,すべての主効果の相違に関するシングルステップの多重比較法としてHayter (1990)を基にした統計手法を提案できる.この論文では,これらのシングルステップの多重比較法を優越する閉検定手順について論述する.

  • 永井 恵子
    2019 年 49 巻 1 号 p. 23-60
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    2019年4月1日から,勤務の終業時刻と翌日の開始時刻の間に一定の休息時間を確保し,過重労働による健康被害を防ぐことを目的として,勤務間インターバル制度の導入が企業の努力義務として課された.そこで,本分析では,社会生活基本調査のミクロデータから,最初に,勤務間インターバルの実態について,労働者の属性などとどのように関連しているかを明らかにする.その分析結果を踏まえて,勤務間インターバルの長さや開始時刻が健康にいかに影響するかについて分析する.全国の世帯を対象とした統計調査のデータに基づいて,勤務間インターバルの長短等の健康状態への影響を分析した初めての分析である.その結果,性別以外に,フレックスタイムなどの勤務形態,学歴,職業が勤務間インターバルに関連があることがわかった.また,勤務間インターバルが短くなるほど,健康状態が悪くなる確率が高くなり,通勤時間を加味するとその傾向は顕著になる.年齢のほか,有給休暇の取得日数,勤務間インターバルの開始時刻も健康状態に影響を及ぼすことがわかった.

特集:空間データとGISによる社会経済現象の分析
  • 梶谷 義雄, 多々納 裕一
    2019 年 49 巻 1 号 p. 61-82
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    本稿では,自然災害による経済被害を評価するための手法の一つとして,空間的一般均衡モデル(SCGE)モデルを用いた分析アプローチを紹介する.SCGEモデルは,災害時において発生するサプライチェーンの被害や需要の変化についても評価できる可能性を有する.しかし,災害への適用可能性の検討を意図した研究はほとんど存在していない.希少な被害事例データを適切に活用し,災害影響分析に適したSCGEモデルの基本設定に反映するための方法論が求められている.このためには,入力条件となる生産能力の減少を経済センサス等を用いて詳細な空間スケールで把握するとともに,SCGEモデルについても均衡条件の吟味や適切なパラメーター値の設定が必要となる.筆者らは,東日本大震災後のサプライチェーン被害の大きかった数ヶ月間の経済活動を対象にSCGEモデルを構築しているが,鍵となる地域間の財・サービスの代替弾力性の程度について改良の余地があるなど課題も多い.本稿では,これまでのSCGEモデルを用いた研究について概括するとともに,統計的に有意なモデルの改善をもたらす代替弾力性の値について検討した結果を報告する.

  • 小西 純
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 49 巻 1 号 p. 83-114
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    我が国においては世帯規模の縮小化が進行している.世帯規模と住宅規模には相関関係があることから,世帯規模の縮小化の進展は既存住宅ストックとのミスマッチを発生させる要因となりうる.単身世帯と住宅規模との関係を把握することが求められるが,単身世帯や住宅規模の分布は地域性があることから,地域別の現状を統計データで捉えることが重要である.一方,統計データを利用して地域分析を行う場合,国勢調査の市区町村別の集計結果など都道府県や市区町村の地域単位に集計されたデータが利用されることが多い.このような地域データの分析は,集計地域単位や分析対象地域のサイズによって分析結果が異なる「可変単位地区問題」に注意する必要がある.本稿では,国勢調査に関する地域メッシュ統計データとGISを使い,移動窓法により任意の地域の相関係数を計算し,地域分析における空間スケールについて評価する.さらに,評価を踏まえて年齢別単身世帯と住宅の延べ面積別世帯の関係の分布を地図化し,両者の関係の地域性について考察する.

  • 森岡 渉, 岡部 篤行, 貞広 幸雄
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 49 巻 1 号 p. 115-131
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    店の出店や閉店の戦略をたてる立地マーケティングにおいて,地域の店の盛衰状況動向を分析することは基本的な分析である.そこで,本研究では,盛衰動向状況の基礎的分析として,ジニ係数を活用した地域内の店舗立地集中度測定法を提案する.その方法は,基本的にジニ係数を踏襲しているが,新たに,順序統計量を用いて店舗の空間偏在度を統計的に検定する方法と,ジニ係数を求める際に用いるローレンツ曲線を活かして,店舗が集中している「ホットスポット」を検出する方法を開発した.それらの方法を,電話帳から得られる東京都渋谷区内の各4分の1地域メッシュ(250~mメッシュ)に含まれる各種店舗数データに適用し,渋谷区における店舗施設立地の全体的な集積度と局所的な集積度を測定し,方法の有効性を確認した.

日本統計学会研究業績賞受賞者特別寄稿論文
  • 栁原 宏和
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 49 巻 1 号 p. 133-159
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    本論文では,目的変数ベクトルの次元数が大きいが標本数よりも小さい多変量線形回帰モデルにおいて,一般化情報量規準(Generalized Information Criterion: GIC)や一般化Cp (Generalized Cp: GCp)規準を特別な場合として含むモデル選択規準の最小化に基づくモデル選択を取り扱う.近年,目的変数ベクトルの次元数が標本数の増加に伴い無限大に発散してもしなくてもよい大標本・高次元漸近理論により一致性を保証したモデル選択規準が提案されている.残念ながらその一致性を持つモデル選択規準は真のモデルの確率分布が正規分布であるという仮定の下で提案されている.本論文では,大標本・高次元漸近理論の下で,先行研究で提案された正規性の仮定の下で一致性を持つモデル選択規準が,真のモデルの確率分布が正規分布ではない時でも一致性を持つことを示す.

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