スポーツ社会学研究
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28 巻 , 1 号
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特集
  • 鈴木 直文, 秋吉 遼子
    2020 年 28 巻 1 号 p. 3-5
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
  • ―ホームレスワールドカップ出場国の事例の比較検討―
    岡田 千あき
    2020 年 28 巻 1 号 p. 7-20
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
     本特集のテーマである「開発と平和のためのスポーツ(Sport for Development and Peace: SDP)」は「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)」の登場と時期を同じくして急拡大を見せた。本研究では、MDGsの最大のテーマのひとつであった「貧困」に焦点を当てたSDPについて「ホームレスワールドカップ」の事例を元に論じる。ホームレスワールドカップは、文字通りホームレス状態にある人のみが参加できるフットサルの世界大会である。ホームレスワールドカップに出場しているジンバブエ、カンボジア、オランダにおける活動内容とその成果をインタビュー調査の結果を元に考察し、比較検討を行う。比較検討からMDGs時代に未解決のSDPの課題を読み解き、SDGs時代におけるSDPの在り方の観望を試みる。
     3か国での現地調査の時期や内容、対象などは異なるが、いずれの事例においても参加者の「個人的な成果」が何らかの形で見られた。また、各団体におけるホームレスワールドカップの位置づけや活動に占める割合が、3か国のいずれにおいても低減していた。相違点としては、各国で同様の「個人的成果」を得られたとしても、それらが活かされるか否かは社会・経済状況に左右され、成果の可視化についても様々な制約の存在が明らかになった。以上の検証結果から、SDPの評価には個人的成果を丹念に拾うことに加えて、社会の発展段階と腑弱性、社会変化の中でのスポーツの捉え方や存在意義などを吟味する必要性が認められた。SDPが内包する負の側面を注視し、SDPの内部にある力の不均衡や無意識の階層を念頭に置きながら、SDPの根幹に関わるスポーツの開発学的価値を追い求めることがSDGs時代のSDPに期待される。
  • ―ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団を事例に―
    野口 亜弥
    2020 年 28 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
     社会課題の解決の手段としてスポーツを活用する開発のためのスポーツ(Sport for Development:SfD)が21世紀に入り注目を集めた。しかし、2017年に国連の当該分野の専門部署が閉鎖されて以降、国連からSfD分野における明確な指針は提示されていない。その状況の中、企業のSfD分野への参入は拡大しており、SfD分野における企業の影響力が増している。
     本稿では、2019年より日本のプログラムが本格的に開始されているローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団を事例に、企業から主要な資金提供を受けるSfD NGOの実態を明らかにし、現地のプログラム形成に及ぼすドナー企業の影響を分析する。
     2015年に国連が持続可能な開発目標(SDGs)を提唱して以降、先進国企業による経営戦略やCSR戦略はSDGsを意識したものとなった。その傾向はSfD分野にも波及しており、企業のドナーとしてのSfD領域への参入が増加している。ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団は事業の約7割の資金を企業や社会投資家からの資金提供で運営しており、2017年の三菱東京UFJ銀行のグローバルパートナー締結に伴い、2つのSfDプログラムが日本で展開されている。
     国際的なSfD NGOが参入することにより、グローバルで同財団と連携のある企業や他のSfD NGOが日本のプログラムに参画し、新規にSfD分野に従事する企業や団体の開拓に成功した。しかしながら、同財団の日本進出の理由や国内プログラムのデザインは、必ずしも、現地の社会課題を中心に据えて作成されたデザインではなく、パートナーであるグローバル企業の経営戦略やCSR戦略が大きく影響を与えている。また、企業の影響力は、政策立案から市民社会への啓発まで今後、益々影響を及ぼすことが示唆された。
     コーポレートドナー型のSfD NGOの国内進出が加速する前に、日本のコンテクストを考慮し、どの社会課題をどのようにスポーツで取り組むことが最適であるのか、指針を示すことが必要であると指摘し結びとした。
  • ―日本における「スポーツ×開発」の課題―
    小林 勉
    2020 年 28 巻 1 号 p. 37-57
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー
     スポーツは国際開発では新しい領域である。本稿では、21世紀に入り「スポーツ」の領域と「開発」の領域とが急速に接近した経緯を追いながら、SDGs時代にスポーツ界で何が起こっているのかについて概説する。SDGs時代のスポーツを解読していくためには、スポーツ界のみの動向を問うのではなく、まず何よりもSDGsに至る経緯を分析しなければならない。そこで本稿では、開発援助の領域において重要な枠組みになっている「国際レジーム論」の視点を援用して国際開発の枠組みの変遷を跡づける。そして、JICAにおける「スポーツと開発」事業やスポーツ庁が打ち出してきた国際戦略などを焦点化し、日本でどのような政策が立案されてきているのかについて明らかにしながら、日本の「スポーツ×開発」の本質的な問題について解題する。東京2020大会のムードを高める戦略やスポーツ庁またはJICAのアカウンタビリティの問題としてSDPを捉えるのではなく、スポーツ固有のアウトリーチ性を活かした支援によって、SDGsで掲げられた課題解決にいかに接合させられるのかが看過されている実態を浮き彫りにしながら、最終的に「スポーツ× SDGs」の時代を迎えつつある現在のスポーツの地平について批判的検討を試みる。
原著論文
  • ―社会関係の構築を目指す民間ボウリング場に着目して―
    笹生 心太
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 28 巻 1 号 p. 59-73
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/05/14
    [早期公開] 公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー
     本研究では、スポーツを通じて地域課題をどのように解決するかについて論じる。一般的に、社会課題・地域課題の解決にはNPOが取り組む場合が多い。しかしNPOの多くは資金的限界を抱えており、それはスポーツを通じた地域課題解決の主要な担い手である総合型地域スポーツクラブも同様である。そこで本研究では、社会課題・地域課題の解決のみでなく自社の収益向上も目指す社会的企業という事業体に着目し、いかにしてスポーツを通じた地域課題解決と収益性が両立できるかを検討する。
     X市にある民間のボウリング場は、近隣の人々の間の社会関係が乏しいという地域課題に取り組んでいる。そして同施設は、ボウリングを通じて社会関係を構築するのみでなく、そこから収益を得ることを目指している。本研究では、同施設がいかにして社会関係の構築と収益性を両立させているのか、またそれはなぜ可能なのかを明らかにする。
     同施設がそれらを両立できたもっとも重要な要因は、その支配人が団体の固定客を集めることに注力してきたことにある。定期的にボウリング場に足を運ぶ人の数が増えれば、施設の収益が向上するのみでなく、そこに集まる人々のつながりも深くなるからである。またそうした要因に加え、同施設の専務取締役と支配人は、地元の地域特性を把握し、地域住民にとって最適な戦略を採っていた。
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