スポーツ社会学研究
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原著論文
  • ―社会調査データの二次分析による世代効果の検証を通じた一考察―
    下窪 拓也
    2021 年 29 巻 1 号 p. 41-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    [早期公開] 公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー
     本研究は、メガスポーツイベントの招致開催がもたらす長期的な無形の影響の解明を目的とし、オリンピック競技大会の招致開催が、人々のナショナルプライドに与える影響を検証する。メガスポーツイベントの開催と開催国の人々が持つナショナルプライドとの関連はこれまでにも議論されてきたが、先行研究では、開催時期の時代背景による影響は等閑視されてきた。
     時代的背景から、1964 年東京オリンピックと1972 年札幌オリンピックの開催は、戦後の復興と国際社会への復帰という意味合いを強く持つため、日本人のナショナルプライドに強い影響を与えたことが想定される。本研究では、この東京オリンピック経験世代と札幌オリンピック経験世代の世代効果に着目して、大会の開催がナショナルプライドに与える長期的な影響を分析する。分析では、社会調査の二次データを用いて、東京オリンピック経験世代と札幌オリンピック経験世代の世代効果が、スポーツに関するナショナルプライド(スポーツプライド)と一般的なナショナルプライド(ジェネラルプライド)に与える影響を検証した。
     分析の結果は、仮説とは反して、世代効果はスポーツプライドには統計的に有意な負の影響を示し、ジェネラルプライドに対しては統計的に有意な関連を示さないことを明らかにした。オリンピック競技大会の商業主義化に伴いナショナルな表象が薄れたことで、かつての国威発揚の意味合いを強く持つ東京オリンピックや札幌オリンピックを経験した世代は、昨今のスポーツに対してもはや国への誇りを重ねなくなったのだと考えらえる。あるいは、先行研究では、1990 年代以降の日本社会の不安の蔓延に伴い、若者のスポーツプライドが高まっていることが示唆されていることから、相対的に東京オリンピックや札幌オリンピックを経験した世代のスポーツプライドが低く観測されている可能性も考えられる。最後に、本研究の限界を議論した。
  • 笠原 亜希子
    2021 年 29 巻 1 号 p. 55-69
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    [早期公開] 公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー
     わが国における知的障害者のスポーツプロモーションの課題のひとつは、意思の伝達や決定に問題を抱える知的障害者がスポーツをする当事者としていかに社会認識されるのかということにある。そこで本稿では、この課題への解決を前進させ、社会的に問題を共有する上で必要と考えられる社会構築主義的視点に立って、他者と共に自己決定をする知的障害者の「身体経験」を明らかにする論理とは何かを議論することを目的とした。それはすなわち、従来の「身体論」に基づいてその論理を探究しながら、その理論的限界を追究し、そこから新たな可能性を論じることを意味している。
     本稿ではまず、知的障害者のスポーツをめぐる「身体経験」が社会的に不可視されることについて、政治的構築主義の視点からその論理を問題化した。次に、現代社会における障害者の身体をめぐる経験の理論的課題をおさえた上で、障害学と、スポーツ社会学における「経験」の論理は、その中心に心身二元論と言語を前提とする現象学的身体論があることを確認し、知的障害者の「身体経験」を理解する上において理論的限界があることを指摘した。そこで、このような理論的現状を乗り越える理論として「肉体論」をとりあげ、その理論的背景にある人間の「未確定の存在」[Gehlen, 1993=2008]を手がかりにして、社会構築主義的視点における政治的構築主義の立場から「身体経験」の展開可能性について論じた。最終的には、この肉体論を補完する理論として、比較社会学における「間身体的連鎖」[大澤,1996]を取り上げ、スポーツ社会学における「肉体論」と「間身体的連鎖」を関係づけることを通じて、知的障害者のスポーツをめぐる他者を包括した「身体経験」を考察する上で必要と思われる新たな理論的な枠組みの可能性を指摘した。
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