本稿は、高校卒業後すぐにアスリートとして企業に就職するという、日本人女性アスリートに特有のキャリア形成のあり方を踏まえ、実業団スポーツとして定着しているソフトボール選手を事例に、高卒女性アスリートのキャリアプロセスの実態ならびに諸課題を探索的に明らかにすることを目的とした研究である。
まず、対象者のキャリアプロセスを「修正Role Exit Model」を援用して分析した。その結果、自主的な引退であっても、セカンドキャリアに向けた準備がほとんど行われず、引退後に初めて自らのキャリアを模索し始めるという道筋を辿ることが明らかになった。この知見は、先行研究が示したキャリアプロセスのモデルに新たなプロセスを付け加えるものである。
次に、そのプロセスに至る背景や、セカンドキャリア形成における具体的な課題について、事例-コード・マトリックスを用いて探索的に分析した。その結果、【閉鎖的な組織風土】の影響により、競技生活が〈今は競技に集中〉すべき時期であると定義され、この状況の定義に従った行動をとらざるを得なくなることから、引退後に向けた準備が行われていない実態が明らかになった。この引退後の準備不足は、【受動的な転機への対処】を余儀なくさせ、さらに【引退後のキャリア形成に対する認識】に影響を及ぼすという移行過程が見出された。とりわけ、高卒の女性アスリートは、転機に対処するための資源が乏しく、競技の世界では有利と認識されていた高卒の学歴も、引退後の労働市場では不利に転じる。この学歴に対する劣等感や資源不足が、セカンドキャリア形成における大きな障壁として認識されていた。
これらの結果は、高卒女性アスリートに応じたキャリア教育や支援の充実に加え、組織文化の見直しを含む構造的な改善の必要性を示唆している。
今後の課題としては、他競技における実態の把握や、雇用側のマネジメント意識を含めた包括的な検討が求められる。
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