スポーツ社会学研究
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早期公開論文
早期公開論文の2件中1~2を表示しています
  • 社会調査データの二次分析を通じた一考察
    下窪 拓也
    原稿種別: 研究論文
    論文ID: 32-02-02
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/09/03
    ジャーナル フリー 早期公開

     本研究は、運動・スポーツ実施の社会経済的格差の把握に向けて、運動・スポーツの実施動機と社会経済的地位の関連を検証した。これまで、世帯年収や学歴と成人の運動・スポーツ実施の関連が繰り返し報告されてきた。適度な運動の実施は健康に資するため、社会経済的地位による運動・スポーツ実施の格差は、健康の格差に繋がる。しかし、先行研究では社会経済的地位に応じた運動・スポーツ実施動機に関する議論が不十分であった。
     本研究は、量的調査データの二次分析を通じて上記の課題に着手した。分析では回答者を、「1日30分以上の汗をかく運動を週に2日以上」実施している運動習慣者、習慣者の定義には該当しないが運動を実施している運動実施者、そして過去1年間に運動・スポーツを実施していない非実施者の3グループに分け、社会経済的地位との関連を検証した。その後、運動習慣者と実施者を対象に実施動機の潜在構造を分析し、実施動機と社会経済的地位の関連を検証した。一連の分析から以下の結果が得られた。まず、運動実施者と習慣者は非実施者よりも世帯年収および学歴が高い傾向があり、さらに運動習慣者は実施者よりも世帯年収が高い傾向がある。ただし分析モデルの説明力は高くない。次に、社会経済的地位と実施動機の関連から、運動実施者の中で、運動・スポーツを楽しむことや親しい他者との交流を動機とする人は中学・高校卒者に多く、多様な目的を志向する人は世帯年収が400万円以上ある傾向がある。一方で、運動習慣者内では実施動機と社会経済的地位は統計的に有意な関連が確認されなかった。最後に、未来志向によって社会経済的地位と運動・スポーツ実施動機の関連を解釈できる可能性を議論した。

  • ジム空間における身体性・関係性・集合性に着目して
    堀田 文郎, 松尾 哲矢
    論文ID: 32-02-01
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/07/26
    ジャーナル フリー 早期公開
     本稿は「ボディビルダーらはジム空間においていかなる世界と対峙しているのか」という問いを起点に、ジム空間で織り成されるボディビルダーらの身体文化について検討した研究である。特に 本稿では、ボディビル・ジムに関する先行研究を参照しつつ、ジム空間で展開される固有の身体性・関係性・集合性の内実、すなわち、①ボディビルダーの行う身体実践やジム空間にて身体が有する意味(身体的位相)、②そのボディビルダーらが織り成す相互作用や関係性(関係的位相)、③そのような相互作用が総体として惹起する集合性(集合的位相)という3 つの位相で織り成される具体的な様相と位相間の関係性に着目しつつ分析を行った。
     その結果、ジム空間においてボディビルダーらが、一方では、ウェイトトレーニングという身体実践を介して自身の身体と誠実に向き合い(身体的位相)、また他方では、身体以外のものと向き合うことを禁じる暗黙の禁忌と他の使用者との社交を必要最低限にまで抑える暗黙の規範を遵守する様相が看取された(関係的位相)。そして、このような身体実践と相互作用の一連の体系は、ボディビルダーらの間に暗黙的な一体性を醸成すると同時に、ボディビルダーらにとっての身体(筋肉)を至高の価値を有する聖なるものとして構築し、ジム空間に、身体と向き合うための神聖な教会とでもいうべき独自の世界を招来する様相が明らかになった(集合的位相)。
     そして本稿では、以上の分析をヴァカンのボクシング・ジム研究と対照させることによって、ボディビル・ジムで織り成される身体文化に関する考察を行った。そこでは、ボディビル・ジムの身体文化が個人主義的でありつつ共同的であり、共同的でありつつ個人主義的であるという特質、また、身体が空間の中心的な特異点となり、その身体的位相から共感的・身体的なつながりとしての関係的位相や集合的位相が立ち上がるという特質を有していることを考察した。
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