本研究は、人口減少と高齢化が進行する縮小社会において、行政的な制度設計や恒常的な組織的支援を欠いたまま、地域社会の中で長期にわたり存続してきた地域スポーツ実践の存立条件を明らかにすることを目的とする。分析対象は、神戸市の郊外団地において、地域住民組織によって建設され、約半世紀にわたり維持・利用されてきた非公式なスポーツ関連施設「クラブハウス」である。
先行する地域スポーツ研究においては、スポーツ実践がいかに制度化され、政策や行政的支援と結びついてきたのかという点が主たる分析対象とされてきた。その一方で、明確な制度的位置づけをもたないまま継続してきた実践や、公式な枠組みに回収されない活動のあり方については、十分に検討されてこなかった。本稿は、こうした研究動向を踏まえ、「公式―非公式」という分析軸を導入することで、制度化を到達点としない地域スポーツ実践の社会的条件を再検討する。
具体的には、「クラブハウス」の建設計画に関する史資料の分析、維持運営に携わってきた関係者への聞き取り調査を通じて、施設の成立過程、利用実態、ならびに行政との関係性を検討した。分析の結果、この施設は、行政による明示的な支援を欠きつつも、黙認という形で関係が維持される一方、住民組織側も過度な要望を控えるという、非対称的かつ非公式な関係性のもとで存続してきたことが明らかとなった。また、制度的位置づけの曖昧さゆえに、スポーツ活動に限定されることなく、集会や公園管理といった複数の機能を柔軟に受け入れる可塑的な公共空間として機能してきたことが確認された。
以上の知見は、非公式であること自体が、縮小社会における地域スポーツ実践の持続を可能にする条件となり得ることを示しており、制度化や公式化を前提としてきた従来の地域スポーツ研究の視角を相対化するものである。
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