スポーツ社会学研究
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早期公開論文
早期公開論文の3件中1~3を表示しています
  • エスノメソドロジーの視点から
    ⻄村 光太郎, 渡 正
    論文ID: 34-02-01
    発行日: 2026年
    [早期公開] 公開日: 2026/08/20
    ジャーナル フリー 早期公開
     本稿は、小学校の体育授業における「理解」を、児童の内面にある認知状態としてではなく、教師と児童の相互行為によって、実践的に達成される社会現象として記述することを目的とした。エスノメソドロジーにおけるワークの研究の視点から、教示(instructions)と教示に導かれた行為(instructed actions)(Garfinkel: 2002)を切り離さずに検討することで、体育授業における「理解」の実践がいかにして成立しているのかを明らかにした。
     分析では小学校6年生のバスケットボールの授業について検討し、次の3点が示された。(1)「よーい はじめ」といった教師の指示は、笛の合図と連動し、教師の身体の向きに依存せず児童全員がレリバントな行為をとることを可能とする。一方で、特定の児童に向けられた指示は、身体の向きや状況と結びつくことで、その児童が行為を選択することが可能となる。(2)教師の指示とそれに応じる児童の行為が、他の児童にとっても、見て言えるものであるため、指示の直接の受け手ではなくとも、適切な行為を選択することが可能となる。(3)「理解がない」ということもまた、行為として観察することが可能である。活動が進行しないことや、発話の繰り返し、指さしや、対象との距離を近くするといった、修復の相互行為が生じることは、「理解がない」ことを説明可能とする。
     以上のように、体育授業における「理解」は、教師や児童の内面にあるのではなく、行為として観察可能であり、実践的に達成される社会現象であることを示した。本稿が示すように、これらの教師と児童の実践を見て言えるものとして記述することは、体育授業を学ぶものにとって、授業実践を経験や感覚に還元するのではなく、観察し、記述し、学びとるための基盤となりうるだろう。
  • 地域スポーツ実践における空間利用の可塑性
    伊藤 恵造
    論文ID: 34-02-02
    発行日: 2026年
    [早期公開] 公開日: 2026/08/20
    ジャーナル フリー 早期公開
     本研究は、人口減少と高齢化が進行する縮小社会において、行政的な制度設計や恒常的な組織的支援を欠いたまま、地域社会の中で長期にわたり存続してきた地域スポーツ実践の存立条件を明らかにすることを目的とする。分析対象は、神戸市の郊外団地において、地域住民組織によって建設され、約半世紀にわたり維持・利用されてきた非公式なスポーツ関連施設「クラブハウス」である。
     先行する地域スポーツ研究においては、スポーツ実践がいかに制度化され、政策や行政的支援と結びついてきたのかという点が主たる分析対象とされてきた。その一方で、明確な制度的位置づけをもたないまま継続してきた実践や、公式な枠組みに回収されない活動のあり方については、十分に検討されてこなかった。本稿は、こうした研究動向を踏まえ、「公式―非公式」という分析軸を導入することで、制度化を到達点としない地域スポーツ実践の社会的条件を再検討する。
     具体的には、「クラブハウス」の建設計画に関する史資料の分析、維持運営に携わってきた関係者への聞き取り調査を通じて、施設の成立過程、利用実態、ならびに行政との関係性を検討した。分析の結果、この施設は、行政による明示的な支援を欠きつつも、黙認という形で関係が維持される一方、住民組織側も過度な要望を控えるという、非対称的かつ非公式な関係性のもとで存続してきたことが明らかとなった。また、制度的位置づけの曖昧さゆえに、スポーツ活動に限定されることなく、集会や公園管理といった複数の機能を柔軟に受け入れる可塑的な公共空間として機能してきたことが確認された。
     以上の知見は、非公式であること自体が、縮小社会における地域スポーツ実践の持続を可能にする条件となり得ることを示しており、制度化や公式化を前提としてきた従来の地域スポーツ研究の視角を相対化するものである。
  • スポーツの文化的な自立に求められるスポーツ組織の実践
    笠野 英弘
    論文ID: 34-02-03
    発行日: 2026年
    [早期公開] 公開日: 2026/08/20
    ジャーナル フリー 早期公開
     本稿の目的は、スポーツの文化的な自立に求められるスポーツ組織の実践がスポーツガバナンスの概念として捉えられることとともに、そのスポーツガバナンスの分析視点を示すことである。
     まず先行研究の整理から、スポーツ愛好者とスポーツ組織の双方が主体性を発揮して愛好者を組織化することが、スポーツ組織の自立につながる可能性が示唆された。しかし、そこではスポーツの文化的な自立と愛好者の組織化との関係は十分に検討されていなかった。そこで、自立概念の検討から、自立概念を多様な依存関係の確保として捉えることで、愛好者の組織化がまさにスポーツの文化的な自立をもたらすものであると考えられた。
     また、それらの自立をもたらす愛好者の組織化には、スポーツの公共性(スポーツの多様な価値)を担保するソーシャル・ガバナンスが求められ、それがトップダウン的なガバメントに対するボトムアップ的なガバナンスとして捉えられることを示した。そして、スポーツガバナンスの起点となるのは、スポーツのプレイ性、すなわち、様々な楽しみを喚起するスポーツの無色透明性にあると考えられた。これらの考え方から、愛好者の組織化を基盤とするスポーツ組織が、国や企業のみに依存する形で手段的な効用性としてのスポーツの公共性を担保するのではなく、スポーツのプレイ性を徹底することで主体的にスポーツの公共性を構築していくことがスポーツガバナンスであると論じた。したがって、コンプライアンスやマネジメントには含まれないこうした概念が、スポーツガバナンスという用語の意義であると考えられる。最後に、そのスポーツガバナンスの分析には、スポーツの文化的な自立への貢献に照らしてスポーツ組織の制度生成と組織内構造を分析する視点が求められることを指摘した。
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