ソーシャルワーク学会誌
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論文
  • -可視化されにくいジェンダーの課題に着目して-
    小倉 明子
    2026 年52 巻 p. 1-15
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     令和6年度の不登校児童生徒数は35万人を超え,その対応が喫緊の課題であることは社会の共通認識と言えようが,彼らの母親が「母親規範」というジェンダーをめぐる抑圧を受けやすいことは不可視化される傾向にある.本稿では不登校の子どものいる母親が家庭や学校との関係性の中でどの様な課題を抱えるのかについてインタビュー調査した結果をM-GTAを用いて分析し,いかなるプロセスを経てエンパワメントに向かうのかを明らかにした.そしてフェミニストソーシャルワークの視角から不登校の子どものいる母親支援のあり様として提示している.分析の結果図では母親には「個人としての私」,「家族の中の私」,「社会で生きる私」という異なる次元の狭間に表面化しにくいニーズが存在することを可視化するとともに,その狭間はエネルギーの源泉でもあると見出し,ジェンダーセンシティビティのある支援によって母親はエンパワメントに向かうと結論付けている.

  • -クラシック・グラウンデッド・セオリーによる当事者の生活世界からの考察-
    久保田 純
    2026 年52 巻 p. 17-31
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究では,クラシック・グラウンデッド・セオリーの研究方法を用いて,生活保護受給世帯の子どもの生活世界の概念化を試み,その明らかとなった生活世界と生活保護受給世帯の子ども・生活保護ケースワーカーについての先行研究を関連づけていくことで,生活保護ケースワーカーによる生活保護受給世帯の子どもに対するよりよいソーシャルワーク実践を考察していくことを目的とした.

     分析の結果,生活保護受給世帯の子どもの生活世界として【与えられた環境から自ら主体となった環境への変容】が生成された.この領域密着理論をもとに生活保護ケースワーカーの生活保護受給の子どもへのよりよいソーシャルワーク実践を考察し,生活保護ケースワーカーと生活保護受給世帯の子どもとの「反抑圧実践理論」をもとにした「援助関係」の構築や,生活保護受給の子どもの主体的な「つながり」の構築に向けた「媒介実践論」による支援の必要性を示した.

  • -ビネットを用いたソーシャルワーカーへのインタビューを通して-
    黄 慧娟
    2026 年52 巻 p. 33-53
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/12
    ジャーナル フリー

     本研究は,家族文化を基盤とする中国社会において,クライエントの主体性がどのように理解され,支援判断へ結びつけられているのかを,18名のソーシャルワーカーへのビネット・インタビューから検討した.分析の結果,本人と家族の家族観・介護観を尊重し自宅介護の可能性を探る方向と,家族全体の生活維持や介護負担の軽減を重視し施設介護を現実的選択肢として提示する方向が併存していた.これらは単なる対立ではなく,本人の意思,家族関係,孝文化,介護負担,生活条件を関連づけて理解する支援判断の枠組みに関わるものであった.中国の家族文化を背景とした主体性は,独立した意思決定としてのみではなく,家族関係や生活条件との調整の中で形成される「関係的主体性」として捉えられることが示唆された.さらに,文化的価値観が本人や家族の生活を支えるものか,過重な負担や権利の抑圧につながるものかを見極める視点の重要性も示された.

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