日本産業技術教育学会誌
Online ISSN : 2434-6101
62 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 山崎 貞登
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 197-207
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本稿では,主に米国のSTEM[Science, Technology, Engineering and Mathematics の各discipline(学術分野)]教育,STEAM(STEM+Arts discipline)]教育の系譜と,各学術分野の関係性に着目し,特にエンジニアリング,デザイン,アーツ(arts)概念と,各学術分野のintegration(統合)の水準(Vasquez et al.,2013)に着目し,Society5.0 の実現に向けての,日本発STEAM 教育の要件についての論点整理をした。技術,科学,数学,アーツを,エンジニアリングとデザインで架橋し,SDGs と連動するSociety5.0 の実現を目指して,イノベーティブで,テクノロジーのリスクを評価,選択,管理・運用できる技術ガバナンス力のある人間を育成する日本発STEAM 教育と,各学術分野の関係性を示す俯瞰図を提案した。要件として,SDGs の共通テーマ,各学術分野連携の概念と資質能力を,STEAM 各教科で教科横断的に学習を支えるカリキュラム・マネジメントと,各教科担当教員の継続的専門職能発達の必要性を指摘した。

  • 遠藤 直弥, 嶋 崇志, 改正 清広
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 209-217
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     家電製品の待機電力量は一世帯全消費電力量の5.1%を占めており,省エネルギー社会の実現に向けて待機電力のさらなる低減が必要とされている。中学校技術教育においても,環境負荷や省エネルギーに関する配慮が求められることから,待機電力について扱うことができる教材の役割は大きいと考えられる。本研究では,LEDに光を照射すると起電力が発生する現象(光起電力効果)を利用することで,暗くなったら自動でLEDが点灯する光センサ回路を待機電力ゼロで動作可能にし,中学校技術教育において待機電力について扱うことができる教材の検討を行った。待機電力ゼロの光センサ回路は,電源・Pch MOSFET・受光用LED(センサ)・発光用LED・抵抗で構成され,受光用LEDに並列接続した抵抗によって,動作条件を変えることができる。また,RGBLEDや2色LEDを用いることで,1つのLEDに対してセンサと発光の両機能を持たせる教材の製作も可能である。

  • 鎌田 英一郎
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 219-228
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     中学校技術・家庭科(技術分野)においてコムギ栽培が育成する生物の成長,生態の特性等の原理・法則やそれに基づいた生物育成の技術の仕組みを理解する教材となりえるか検討するため,ペットボトルを用いたコムギの容器栽培を行い,施肥時期および施肥量の違いがコムギの生育および収量にどのような影響を及ぼすか調査した。子実収量は施肥時期によってまた年次によって異なったが,子実収量が多いものはいずれも地上部乾物重が重かった。収量構成要素では,穂数,一穂粒数および千粒重に差がみられた。千粒重は茎折率と負の相関関係が認められ,茎折率は施肥時期が遅くなると高まる傾向にあった。また,施肥量を2倍にしても子実収量は増加しなかった。コムギ栽培では各施肥時期における効果がコムギの生育状況によって異なることが明らかとなり,生物の成長,生態の特性等の原理・法則やそれに基づいた生物育成の技術の仕組みを理解できる教材となりえることが考えられた。

  • 小倉 光明, 森山 潤
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 229-237
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究の目的は,中学校技術・家庭科技術分野内容「C.エネルギー変換の技術」に焦点を当て,生徒の問題発見・課題設定力を評価する枠組みを検討することである。問題発見・課題設定力の評価観点を文献等に基づいて設定し,エネルギー利用技術作品コンテストにおける2015~2017年の中学生受賞作品43作品と公立中学校2年生76名を対象とした調査を実施し,評価した。その結果,問題発見の評価の枠組みとして,「問題のタイプ」,「問題の範囲」,「ユーザ想定」の3観点,課題設定の評価の枠組みとして「目標の探索」,「アイデアの生成」,「行動の準備」など7観点で両者の違いが検出され,これらを評価の枠組みとして利用できる可能性が示唆された。

  • 嶋 崇志, 市川 太智, 改正 清広
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究では,LEDの個体差を考慮した回路設計の具体化を生徒に行わせることができる教材を開発し,授業実践を通して学習効果の検証,並びに教材評価を行った。開発した教材は,昇圧回路と定電流回路を搭載した1.5V以下の電源電圧でも駆動できるLED懐中電灯である。開発した教材を用いて,構想の実現に向け電気回路の設計を具体化する活動を取り入れた授業実践を行った。検証授業内の設計活動で用いたワークシートや事前・事後で実施したアンケートを分析したところ,本実践による回路設計の具体化は,生徒に豊富な問題解決経験を与えることで,技術的課題解決力や工夫・創造力を向上させることを示した。

  • 遠藤 直弥, 改正 清広, 仲田 和隆
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 247-256
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究では,回路を構成する素子のパラメータを設定する学習を電気回路の設計学習と定義し,生徒が構想した使用目的・条件を満たす要素の選択(抵抗値の設定)を行う学習に着目した。しかし,電気は元来不可視であり,電圧・電流の概念が獲得できていない状態で要素の選択を行うことは困難である。そこで,照度センサ付き回路を対象とし,回路に必要な素子の電気的特性を自動で測定し,測定した入出力関係から目的の動作を実現するために必要な抵抗値をシミュレーションにより求めることができる教具を開発した。開発した教具による授業実践を通して,電気回路の設計学習を照度センサ付き回路に適用することの有用性及び開発した教具の効果を検証した。

  • 宮本 賢治, 塚田 直也
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 257-265
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     2020年度からの小学校でのプログラミング教育の必修化に向けて,本研究ではブロック型プログラミング言語のScratch2.0でのプログラミングにより,制御ロボットを活用した授業の実践と検証を行った。順次・繰り返し・分岐の3つの基本処理を用いて,制御ロボットを迷路図上のスタートからゴールまで移動させるプログラムの作成を題材とし,5年生30名を対象に,6時間の授業を行った。そして,迷路を用いた事前・事後テストとアンケート調査から,プログラムを構成する基本処理を論理的に活用するプログラミング的思考や児童の興味・関心の度合いを検証した。事後アンケート調査結果から,ほとんどの児童が興味・関心を持って授業に取り組んだことが言える。事前・事後テストの結果から,制御ロボットを活用しない先行研究に比べて,特に分岐処理の理解度について大幅な改善の傾向が見られており,プログラミング的思考の育成に効果的であることが示された。

  • 西ヶ谷 浩史, 紅林 秀治
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 267-275
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     本研究の目的は,中学校技術・家庭科(技術分野)の学習において,工学設計の手法を取り入れた授業を行うことにより,学習者がエンジニアの視点を持つようになるのかを明らかにすることである。エンジニアの視点獲得に関しては,テクニシャンの視点と比較することにより明らかにした。授業は,工学設計のプロセスにおいて4つの情報(製品プラン,製品コンセプト,設計仕様,設計情報)にまとめる手法を取り入れた授業過程を考案し,実践した。その結果,生徒はエンジニアの視点(目標・目的,アイディア,記録,新しい知識の獲得,機能,改善・改良)を重視するようになった。

  • 中村 茉耶, 山本 利一, 軽部 禎文
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2020 年 62 巻 3 号 p. 277-285
    発行日: 2020/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル オープンアクセス

     「Society5.0」による社会の変化に対応するよう,高等学校の教育課程おいては,データサイエンスや機械学習に関する学習内容が「情報Ⅱ」の中に盛り込まれた。これからの社会では,様々なデータを効果的に活用して意思決定することが望まれる。そこで,本研究は,LEGO MINDSTORMS EV3とPythonを活用して,収集したデータを基に適切な解を導き出す機械学習の仕組みを学習する指導過程を提案するものである。具体的には,Pythonを活用したプログラミング学習の中に,センサから得られたデータから機械学習を通して適切なパラメータを見つけ出すものである。これらの効果を確認するため,情報系授業担当教員に対する研修にこの指導過程を提案し,評価を行った。その結果,提案した指導過程は,機械学習を体験的に学習することに一定の効果があったことが確認された。

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