日本産業技術教育学会誌
Online ISSN : 2434-6101
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  • 山下 泰史, 宮本 賢治, 尾崎 士郎, 米延 仁志, 斎藤 大義
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,開発したかんな身刃先の滑走式切れ味試験器の性能評価の一環として,試験器を用いた刃先の切れ味の定量評価と,刃先の表面状態の詳細な観察を行った。両者の結果を比較・検討することで,試験器を用いた刃先の切れ味評価の妥当性について検証した。この試験器は,かんな身を固定台に固定し,斜面を滑走させて供試材に衝突させることで,刃先の切れ味を進入痕の深さとして測定した。刃先の表面状態は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果,かんな身刃先の切れ味について,試験器を用いた定量評価とSEMを用いた表面観察結果との間に,顕著な相関性が見られた。したがって,試験器を活用した刃先の切れ味評価は,妥当であると考えられる。

  • 長谷川 元洋
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 175-185
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,平成20年告示の学習指導要領に準拠した平成24年度発行の技術・家庭科 技術分野(以下,技術科)の教科書と平成28年度発行の教科書の情報モラルに関する内容の特徴の変化を明らかにすることと,教科書を授業実践にどのように活用することができるかについても検討することである。3社から出版されている教科書の「D 情報に関する技術」における情報モラルの指導内容について,「カテゴリー」,「内容項目」,「分布」,「提示方法」の4つの観点から内容分析をするとともに,教科書会社3社に対して,インタビュー調査も行った。3社ともに取り扱う情報モラルの内容が出現する数が大幅に増加していた。さらに,3社とも解説を増やすなどの改善が見られた。同じ学習指導要領に準拠した教科書であっても,3社とも情報モラルに関する内容,解説方法等が改善されていることがわかった。

  • 伊藤 陽介, 土居 生命
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 187-196
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    地震や火山活動などによる災害に対する防災や減災には優れた科学と技術が必要であり,両者の関連性を理解しつつ,学習することは重要である。一方,人工衛星に搭載された合成開口レーダ(SAR)による地球観測成果の一種であるSARデータに対して干渉処理することで地形変動を画像化できる。本研究では,理科で学んだ内容と技術科の学習で得られた成果を防災の学習教材として活用する教科間連携に重点を置いた教育を科学・技術・防災教育と定義し,地球観測成果を用いて中学校において当該教育を開発・実践し,その学習効果を評価することを目的とする。授業実践時に得られた事前・事後学習評価に基づき,科学・技術・防災と興味・知識・経験・技能の関係性を考慮した分析,ならびに,時系列的な自己学習評価の考察結果から開発した科学・技術・防災教育の有用性が示された。

  • 永野 玖実, 道法 浩孝
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 197-206
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,新学習指導要領における計測・制御学習の充実を踏まえ,生活の中にある計測・制御システムの演示やシステム構想学習を可能とする教材を開発した。開発した教材は,多様なセンサ・アクチュエータ等を組み合わせ,計測・制御システムを構成することができる。インタフェース機能を一つの基板上に集約し,計測・制御機能を担うコンピュータをマイクロコンピュータではなくPCとする構成により,構成要素の明確化・可視化及びコンピュータとインタフェースについての指導に配慮した学習が展開可能である。構成可能なシステムには,エアコンディショナの風量制御,自動車の衝突防止システム等がある。計測・制御システムの仕組みの理解に関する学習における教材の評価を,検証授業を通して行った。生徒が回答したアンケート結果及びワークシートの記述から,システムの視覚的理解が容易で複数のシミュレーションが可能な本教材の有効性が示唆された。

  • 松永 泰弘, 古田 このみ
    原稿種別: 教育研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」として,子どもの興味・関心を引き出し,言語活動,観察・実験,問題解決的な学習を充実させることが求められている。子どもの興味を引き付け,探究する内容が豊かな教材として,受動歩行教材を取り上げる。先行研究では,幼稚園から大学までの幅広い学習内容を含む教材として紙製4足受動歩行模型が開発され,教材の利用方法や教育的価値を明らかにした。本研究では,小学校5年生を対象として,模型の製作,歩行原理の探究を含む授業実践を行った。児童・保護者対象にアンケート調査を行い,教材に含まれる学習内容や教育的価値を学習前の動機付け,学習活動における学習内容,学習後の児童の興味・関心の3点から明らかにする。アンケートの分析の結果,本教材は児童の興味・関心を引き出し,家庭に持ち帰った後も探究活動を行うなど,興味が継続していることが明らかになった。

  • 水野 頌之助, 岡島 佑介, 大森 康正, 磯部 征尊, 山崎 貞登
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 215-228
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    言語能力に着目したSTEAM教育連携とメタ認知能力重視の視点から,技術科における問題解決の前段階で,既存の生物育成の技術の開発過程と,技術を社会との関わりから捉える生物育成の技術ガバナンスレビュー学習指導過程モデルの提案及び,同モデルを展開するためのカリキュラムを構想,実践,評価によりデザインし,モデルの効果を検証した。生物育成の技術の見方・考え方と,技術ガバナンスに関わる思考・判断・表現の評価規準で,各々のA基準が70%弱の比率であった。生徒のワークシート記述から,小学校社会科第5学年の育種などの技術の向上に関する既習経験と関連させる重要性が示唆された。また,確認的因子分析の結果,「生物育成の技術の対象概念に関する概念的知識」と「メタ認知能力」とは,r =.39と弱いながらも有意な因子間相関が認められ,本学習モデルにおいては,メタ認知的能力と概念的知識の獲得が相互に影響する可能性が示唆された。

  • 松永 泰弘, 守屋 太雅, 松永 元輝
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 229-237
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    高等学校数学科において,現実事象を数学的に問題発見・解決する過程を学習過程に反映することが求められており,現実事象と数学的抽象化を往還する数学的活動教材が必要とされている。松永らの先行研究では,数学的活動をものづくりの中に見出し,新教科「理数探究」,STEM教育における教材として数学的ものづくり活動教材を提示した。本研究では,数学的ものづくり教材の中から塩山を取り上げ,高等学校において数学的活動「塩山」の授業実践を行った。また,実践を通して,塩山の教材としての特徴および教育的価値を明らかにするとともに,先行研究において明らかにされなかった種々の土台形状に対して,塩山の稜線を解析し,数値計算を伴う数学的活動を提案する。

  • 加藤 佳昭, 宮川 洋一, 上野 耕史, 森山 潤
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 239-248
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,医療・介護技術のシステムを題材として,技術ガバナンスレビューを通して技術イノベーション力を育成する中学校技術・家庭科技術分野の授業モデルを開発して実践を試みた。18単位時間の題材を構成し,中学3年生を対象とした実践と技術イノベーション力に関する事後調査を行った。授業の実践においては,全35チームがユーザーのニーズとチームのシーズを踏まえ,各チームで決め出した開発コンゼプトに基づいた製品モデルの開発を行うことができた。技術イノベーション力に関する事後調査では,技術の最適化に着目した調査(調査1),新しい技術的な製品やシステムのアイディアを発想して提案できる力に着目した調査(調査2)を実施した。その結果,調査1では全体の83.8%の生徒,調査2では全体の61.7%の生徒が満足できる状況と判断することができ,開発した授業モデル及び実践は,生徒の技術イノベーション力を育成することに有効であることが示された。

  • 大林 要介, 安藤 明伸, 梨本 雄太郎, 谷田 親彦, 上野 耕史
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 249-258
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    科学技術の発展が飛躍的な現代においては,技術の「光」と「影」に焦点を当て,技術の評価・選択・意思決定ができるような能力,すなわち技術ガバナンス能力が国民一人一人に求められる。平成29年告示の学習指導要領では「社会の発展と技術」の学習において「技術を評価し,適切な選択と管理・運用の在り方や,新たな発想に基づく改良,応用について考える」学習が位置付けられ,より重要性を増している。このような中,既存の製品やシステムの開発過程を社会との関わりから捉える学習が行われつつあり,一定の成果が見られている。一方,既存の技術のみならず,既存の技術の開発と普及の過程を踏まえ,これからの普及が期待される技術の開発と普及の過程における役割と影響を評価し,選択,管理・運用,改良,応用の在り方を考える学習を展開することで,生徒が技術ガバナンス能力を働かせながら技術のイノベーションの視点へとつなげることができると考えられる。そこで本稿では,内容D「情報の技術」の学習に焦点を絞り,技術ガバナンスと技術イノベーションの視点から技術リテラシーを育む授業を実践し効果を検証した。宮城県内の学校で行った授業実践について生徒の自由記述を分析し,授業の成果と課題を明らかにした。

  • 小林 渓太, 高瀬 和也, 塩田 真吾
    原稿種別: 実践研究論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 259-267
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    情報モラル教育は中学校技術・家庭科の技術分野においても多様な取り組みが行われてきたが,「良い」「悪い」のケーススタディによる教材を用いた指導も多く,倫理観の観点からみると生徒自身に自分事としての自覚が生まれにくいため効果が十分ではなかった。そこで本研究では,道徳教育との連携を見据え,中学校技術・家庭科技術分野において,生徒の「自覚」を促し,倫理観の育成を目指した教材を開発した。「良い」「悪い」という二者択一的な指導ではなく,著作権をテーマに,答えのない判断に迷う社会的事例を扱った読み物教材の開発を試みた。中学校2年生を対象に1コマの授業を実践し,道徳性の評価も踏まえつつ倫理観の観点から開発した教材の評価を行った。授業の事前と事後で比較したところ,道徳性の評価の観点のうち道徳的判断力,道徳的実践意欲と態度,について有意差が見られた。倫理観の評価の観点である道徳としての問題を考え続ける姿勢,についても有意差が見られ,自由記述によるテキストマイニングからも倫理観の向上に繋がる一定の効果が確認できた。

  • 井手 広康, 奥田 隆史
    原稿種別: 実践事例論文
    専門分野: 技術教育
    2021 年 63 巻 2 号 p. 269-278
    発行日: 2021/06/28
    公開日: 2022/06/28
    ジャーナル オープンアクセス

    2019年に改訂された高等学校学習指導要領において,文部科学省は授業で取り扱うプログラミング言語を指定していないが,高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修教材においてPythonのプログラムを例示している。ただし,Pythonにはさまざまなプログラミング環境が存在するが,プログラミング言語と同様にプログラミング環境についても指定していない。そこで,本研究では,高等学校のプログラミング教育において,プログラミング環境の違いによって生じる教育効果の違いを比較することを目的とし,7つのクラスに対してそれぞれ異なるPythonのプログラミング環境を用いて同一の授業を行った。ARCS評価シート,事前・事後アンケート,確認テストの結果から,プログラミング環境のうちTextFile形式のものに良い結果が表れる傾向があり,特にJupyter Lab (TextFile)とSpyderが他のプログラミング環境と比較して高い教育効果が期待できることがわかった。

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