日本血栓止血学会誌
Online ISSN : 1880-8808
Print ISSN : 0915-7441
ISSN-L : 0915-7441
14 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総 説
  • 高木 淳一
    2003 年 14 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 和幸
    2003 年 14 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
    細胞運動は高次の生命現象の基盤となっており, がんの浸潤や, リンパ球の遊走などに重要な役割を演じている. がんの浸潤・転移は多くのステップからなる複雑な生物現象であるが, ヒトの臨床例の解析から遺伝子の変異は殆どなく, いくつかの分子の過剰発現が報告されている. その中でも, がんの進展増悪や転移と相関する低分子量G蛋白質 Rhoは, 分子スイッチとしてアクチン細胞骨格を動的に制御すると共に, Rho kinase (ROCK) を介してミオシン分子モーター活性を調節し細胞運動の速度をコントロールしている. さらにROCKは細胞の基質への接着の制御にも深く関与している. ROCKの特異的阻害薬は, 培養細胞の運動能や接着能を濃度依存性に抑制し, 動物実験において浸潤や転移を効率的に抑制した. 一方浸潤・転移に関係する細胞運動には, 速度以外に方向性が重要で, 細胞外のケモカイン濃度を特異的受容体が感知し, 細胞内のphosphatidylinositol (PI) 濃度を制御するPI 3 kinaseやPTENの局在を変化させ, 極性をもった細胞運動を調節することが報告されている. 運動先端部では, 蓄積されたPI (3, 4, 5) P3が, Rho familyG蛋白質である Cdc42や Racの活性化因子 (GEF) を活性化し, Cdc 42や Racの下流でN-WASPやWAVEを介して Arp 2/3複合体を活性化し, 急峻なアクチン繊維の重合を制御するモデルが提唱されている. さらに浸潤のためには, 細胞外基質を効率よく分解することが必要で, 膜型のマトリクス分解酵素 (MT-MMP) が浸潤先端部に局在し, マトリックスの分解を制御している. これら細胞内の分子の位置決めや, 細胞極性の形成にもアクチン骨格系が深く関与しており, その制御には RhofamilyG蛋白質が重要な役割を演じている. 近い将来, これら浸潤・転移に関与するいくつかの分子を標的にした治療法の開発が大いに期待される.
平成14年度日本血栓止血学会学術奨励賞受賞論文
トピックス
feedback
Top