我が国で広く使用されている血漿由来第VIII因子製剤であるクロスエイトMについて,過去に第VIII因子製剤による治療を受けたことのない血友病A患者(PUPs)を対象とした調査研究を行い,その有効性と安全性を前方視的に評価した.24症例(重症10例,中等症6例,軽症8例)を解析対象とした本剤での止血効果は534回の出血エピソードに対して,著効281回,有効234回で96.4%が有効以上であり,無効や悪化の評価はなかった.第VIII因子インヒビターの発生は重症の1例(0.9 BU/m
l)で報告されたが,一過性と推定された.抗マウスIgG抗体産生が別の重症の1例で報告されたが,これも一過性であり,臨床症状は見られなかった.感染症に関してはHBV,HCVおよびHIVの感染事例はなかった.ヒトパルボウイルスB19に関しては本剤による感染を示唆する症例があったが,本件はその後の精密なスクリーニング法(Receptor-mediated hemagglutination: RHA)の導入とウイルス除去膜の使用により解決された.本剤は止血効果が高く,副作用やインヒビター産生が少ない安全性の高い製剤であることが示された.
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