日本血栓止血学会誌
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26 巻, 6 号
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特集 実験動物と血栓止血研究
  • 竹下 享典
    2015 年 26 巻 6 号 p. 597-604
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
  • 西本 哲也, 桑名 正隆
    2015 年 26 巻 6 号 p. 605-610
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
    要約:免疫性血小板減少症(ITP)は抗血小板自己抗体による網内系での血小板破壊の亢進と血小板産生障害により血小板減少をきたす自己免疫疾患である.病因はいまだ明らかでないが,ITP 患者では脾臓など網内系における抗血小板抗体,網内系マクロファージ,自己反応性CD4+ T 細胞,自己抗体産生B 細胞による病的ループの形成が持続的な抗血小板抗体の産生を誘導することが示されている.これまでITP 病態に類似した様々なマウスモデルが作製されてきたが,いずれもITP における自己免疫病態を的確に再現していなかった.そこで,私たちは末梢トレランス維持において中心的役割を果たしている制御性T 細胞に着目した.T 細胞減少後の増殖期に制御性T 細胞を欠損するモデルを作製したところ,持続的な血小板減少を示すことを見出した.本マウスは血小板抗原に対する自己免疫応答と抗血小板自己抗体のエフェクター活性の両者を的確に再現したITP の動物モデルである.本モデルを活用することでITP の病態解析,新規治療標的の同定が進むことが期待される.
  • 佐伯 和子, 劉 珉, 横溝 岳彦
    2015 年 26 巻 6 号 p. 611-618
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
    要約:12(S)-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸(12-HHT)は炭素数17 個からなる不飽和脂肪酸であり,血小板の活性化に伴い遊離されたアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)およびトロンボキサンA2 合成酵素(TxA2S)依存的に産生される.当研究室ではこれまでに,12-HHT がBLT2 受容体の高親和性リガンドであること,BLT2 受容体は皮膚や腸管の上皮細胞に高発現することを明らかにしてきた.今回,皮膚創傷後の滲出液中に12-HHT が蓄積することを見いだし,12-HHT がBLT2 受容体に作用して皮膚表皮角化細胞の移動を亢進させることで創傷治癒を促進することを明らかにした.また,COX 阻害剤であるアスピリンの副作用の一つとして皮膚創傷治癒遅延が知られていたが,この副作用が12-HHT の産生低下によって引き起こされていることも明らかにした.
  • 田村 行識, 松尾 理, 梶 博史
    2015 年 26 巻 6 号 p. 619-625
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
    要約:わが国において骨粗鬆症患者は年々増加しており,その患者数は1300 万人とも言われている.その原因は様々で,加齢,エストロゲン欠乏,栄養不足およびステロイド投与による骨脆弱化などが挙げられる.これらに加えて,近年では肥満や糖尿病など生活習慣病を基盤とした骨粗鬆症が注目されている.線溶系阻害因子Plasminogen Activator Inhibitor-1(PAI-1)は様々な生理作用を有しており,心血管疾患や糖尿病などの代謝性疾患への関与が示唆されてきた.最近著者らは,PAI-1 がストレプトゾトシン誘導性糖尿病モデルマウスにおける骨脆弱化に関与すること,さらにその病態機序には性差が存在することを明らかにした.また,続発性骨粗鬆症の中で最も頻度の高いステロイド性骨粗鬆症にもPAI-1 が関与することを見出した.これらの著者らの知見を含め,骨代謝異常におけるPAI-1 の役割が明らかになりつつあり,PAI-1 の制御が新たな治療標的となる可能性が期待される.
  • 田中 貴雄, 大口 悦宏, 俊成 由紀, 金 智蓮, 中井 綾
    2015 年 26 巻 6 号 p. 626-632
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
    要約:これまで遺伝子改変動物作製はES(embryonic stem)細胞を用いた作製法が主流であり,ES 細胞が樹立されていない系統については,ノックアウト動物の作製が難しかった.近年,新たなゲノム編集技術としてZFN(Zinc Finger Nuclease),TALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease),CRISPR/Cas9(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat / CRISPR associated proteins)など,受精卵に核酸をインジェクションすることによる遺伝子改変動物(ノックアウト動物やノックイン動物)の作製法が次々と発表され,注目を集めている.ゲノム編集技術を用いて遺伝子改変動物をこれまでより容易に作製できる時代が来た.この技術が今後の科学の発展の一翼を担うことは間違いない.
  • 萩原 英雄, 高雄 啓三, 宮川 剛
    2015 年 26 巻 6 号 p. 633-640
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
    要約:マウスはヒト疾患のモデル動物として広く使われているが,ヒトで重篤な炎症が起きた時に発現が変化する遺伝子群はマウスでは全く異なるふるまいをしており,この観点からヒトとマウスはほとんど似ていないという報告が2013 年に出された.この報告はマウスをヒト疾患のモデル動物として使うことの有効性や妥当性などについて大きな議論を巻き起こした.しかし筆者らは,この報告で解析されたのと同じ遺伝子発現データを用いて,解析手法の改善を加えて再解析をした結果,マウスはヒトの炎症性疾患のモデルになり得ることを改めて確認することができた.この結論は,炎症性の疾患に限らず,ヒト疾患のモデルとしてマウスを用いて病態・病因の解明や治療法の開発を行う際に,ヒトとマウスの共通している部分に注目して研究を進めることが有効であることを示唆するものと考えられる.
総説
  • 松尾 武文, 金子 誠, 吉賀 正亨, 小宮山 豊
    2015 年 26 巻 6 号 p. 641-646
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/15
    ジャーナル フリー
    要約:平成24 年9 月1 日に,ヘパリン起因性血小板減少症の検査として血小板第4 因子(PF4)/ヘパリン複合体抗体(HIT 抗体)の検出を目的とした,ラテックス凝集法と化学発光免疫測定法が承認された.現在,ラテックス凝集法によるHIT 抗体検査が専用の自動分析装置を用いると15 分で結果が得られることなどから,臨床に広く利用されるようになっている.今回,ラテックス凝集法による測定結果が陰性にもかかわらず,HIT 抗体検出法として標準的酵素免疫法の1 種である血小板第4 因子/ポリビニルスルホン酸固相化酵素免疫測定法(以下酵素免疫法と略)で陽性と,両者間に乖離を認めたHIT 症例について検討を行った.続いて文献検索を行うと,ラテックス凝集法に関する臨床研究論文は内外あわせて4 篇(総説1 篇を含む),本邦からの国際学会発表の抄録1 篇と少数で,邦文による臨床研究論文は検索されなかった.その内,標準的酵素免疫法とラテックス凝集法との比較が記載されている2 編では,ともにラテックス凝集法では偽陰性率が高いことが示されている.このため,ラテックス凝集法の結果を解釈する際に,偽陰性率が高いことを念頭に置く必要がある.ラテック凝集法の臨床的有用性を高めるためのエビデンスの集積を,今後に期待したい.
凝固・線溶・血小板タンパク質の機能発現機構
自己免疫性出血病FXIII/13 診断ガイド
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