日本血栓止血学会誌
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27 巻 , 4 号
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特集 外傷性凝固障害
  • 久志本 成樹, 工藤 大介, 川副 友
    2016 年 27 巻 4 号 p. 399-407
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    要約:外傷患者の急性期死亡原因としての出血はきわめて重要である.従来,外傷後の急性期に認められる凝固異常は,アシドーシス,低体温などの生理学的恒常性の破綻や,輸液・輸血による希釈などに起因するものであり,治療に伴う副産物であるとされてきた.しかし,この10 年間,転帰に大きな影響を与える外傷急性期凝固障害の存在が広く認識された.外傷とこれに伴うショックにより惹起される線溶亢進病態であるacute traumatic coagulopathy,治療に関連する因子が加わり形成されるtrauma-induced coagulopathy がこれらを形成するが,そのメカニズムは必ずしも明確ではなく,病態解明のためのさらなる検討を要する.凝固障害の回避と治療であるdamage control resuscitation を理論的背景に基づき施行することは,今後の重症外傷に対する治療戦略としての中心的課題である.

  • 阪本 雄一郎, 小網 博之, 三池 徹
    2016 年 27 巻 4 号 p. 408-419
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    要約:大量出血に伴う生理学的反応である血液凝固障害は重症外傷で高頻度に認められるとともに死亡率の独立予測因子であり,迅速かつ正確に状況を把握することは治療戦略上極めて重要である.血液凝固障害として一般的に認められているプロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間の問題点は凝固過程初期の反映である点と血球成分に含まれる血小板の影響が反映されない点である.分離処理を行わない血液が凝固する過程における弾性粘稠度変化を測定するビスコエラスティックデバイスとしてTEG®,ROTEM®,Sonoclot®,T-TAS® などがある.2013 年にAmerican College of Surgeonから報告されたACS TQIP Massive Transfusion in Trauma Guidelines において外傷性凝固障害や出血性ショックに関する治療戦略にTEG®5000 とROTEM® の検査結果を具体的に示している.また,ビスコエラスティックデバイスの検査結果と外傷症例の転帰との関連に関しては多くの報告が認められるが,外傷症例の輸血管理や転帰改善に有益である明確な根拠はないのが現状である.

  • 石倉 宏恭
    2016 年 27 巻 4 号 p. 420-430
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    要約:外傷死亡の30–40%は受傷後早期の大量出血に伴う失血死である.この中で,出血に対する初期対応の不備が原因による死亡例が少なからず存在する.このような『防ぎ得た外傷死(preventable trauma death; PTD)』を未然に防ぐ手立てとしては,まず何よりも迅速かつ的確な止血操作が実施されなければならないが,これに加えて,近年,外傷症例の救命率向上を目的とした,damage control resuscitation(DCR)という新しい初期蘇生の概念が提唱されている.DCR の重要な要素の一つに「外傷性凝固・線溶障害の予防と是正」が挙げられており,PTD を減らすためには外傷初期からの適正な輸液と輸血を実施しなければならない.DCR を加味した外傷患者に対する初期輸液は加温晶質液(細胞外液)を1,000–2,000 mL 程度に止め,その後速やかに赤血球濃厚液(packed red blood cell; PRBC)を投与する.しかし,PRBC 10 単位を急速輸血した場合,凝固因子は40%以下にまで低下し,血小板数も50–100×109/L 以下に低下してしまう.このため,PRBC と同時に新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma; FFP)や濃厚血小板製剤(platelet concentrates; PC)を投与して,凝固障害の是正を実施しなければならない.PC 投与に限ると,その開始時期は血小板数100,000/μL で考慮し,50,000/μL を切らないように投与する.PRBC との投与比率(PRBC:PC)は少なくとも2:1 とし,可能であれば1:1 を目標とする.これを達成できればPTD を未然に防ぐことも可能となる.

  • 早川 峰司
    2016 年 27 巻 4 号 p. 431-435
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    要約:フィブリノゲンはフィブリンの唯一の基質であるため,他に代償する凝固因子がなく,止血のために不可欠な蛋白質である.このため,フィブリノゲン以外の凝固因子が潤沢に存在していてもフィブリノゲン自体が不足していれば適切な止血を得ることができない.重症外傷では,フィブリノゲンの低下が早期から生じており,フィブリノゲンの低下は,その後の大量出血や生命予後の悪化と強く関係している.この重症外傷におけるフィブリノゲン低下の機序として,①凝固活性化に伴う消費,②線溶亢進に伴う分解,③輸液/輸血療法による希釈,が考えられている.重症外傷における抗線溶薬の投与の有益性が報告されている.フィブリノゲンの補充療法としては,新鮮凍結血漿が中心となるが,フィブリノゲン濃縮製剤の有益性も検討されている.

  • 西田 岳史, 木下 喬弘, 山川 一馬
    2016 年 27 巻 4 号 p. 436-443
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    要約:トラネキサム酸はプラスミノゲンのリジン結合部位と結合することでフィブリン結合を阻害する抗線溶薬である.これまで外科手術領域において多くのエビデンスが確立されてきたが,近年,大量出血を伴う外傷患者に対する有用性が評価されつつある.本稿では,2010 年に報告された大規模ランダム化比較試験(CRASH-2 試験)に関する国際的な評価を中心にこれまでの知見を総括し,外傷性凝固線溶障害に対するトラネキサム酸の位置付けを概説した.トラネキサム酸を投与すべき最適な外傷症例として,線溶亢進が顕著な外傷受傷早期の症例,さらには,重篤な出血を来している最重症外傷症例に対する有用性が高いと考えられる.しかしながら,同薬の有効性については依然不明な点が多く,現在も複数のランダム化比較試験が進行中である.

総説
  • 射場 敏明
    2016 年 27 巻 4 号 p. 444-449
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    要約:近年,血管内皮上に存在するグリコカリクス(glycocalyx)の役割が注目されている.プロテオグリカン(proteoglycan)やグリコプロテイン(glycoprotein),糖鎖などからなるこの構造は,血管内腔の血液凝固を抑制しているだけではなく,血小板や好中球の血管内腔への接着を制御したり,血管透過性を調節したり,ずり応力などの力学的刺激を感知するなど,多彩な機能を担っていることが明らかにされてきた.極めて繊細かつ跪弱なグリコカリクスの研究は,技術的課題もあってこれまで十分な進展がみられなかった.しかし最近になって検査手法の進歩にともない,ようやく新しい展開がみられるようになってきた.そしてグリコカリクスは敗血症や虚血再灌流障害といった急性疾患のみならず,糖尿病や動脈硬化などの慢性疾患においても,病態形成においても重要な役割を演じていることが明らかにされた.本稿ではグリコカリクスの構造や機能,疾病との関連などについて最近の知見を紹介する.

凝固・線溶・血小板タンパク質の機能発現機構
ノックアウトマウスシリーズ
2016 年度日本血栓止血学会 学術奨励賞
第10 回日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)2016 シンポジウム
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