日本血栓止血学会誌
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28 巻, 1 号
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特集 次世代遺伝子解析技術が血栓止血にもたらした新知見
  • 奥野 友介
    2017 年 28 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    要約:近年の次世代シークエンス技術の進歩は,サンガー法(キャピラリーシーケンス法)を中心とした従来の遺伝学的検査の方法論を変えつつある.研究においては,標的遺伝子を絞り込まずに疾患の原因遺伝子を検索することが一般的になり,臨床においては,診断未確定症例の網羅的遺伝子解析や,原因遺伝子同定のための標的遺伝子パネル解析が実用化されつつある.技術的には,サンガー法と同等かそれ以上の感度が確認され,コスト的にも,臨床検査として実用的なレベルまで低下が進んでいる.病的変異の情報が爆発 的に増加し,健常人10 万人分に達する一塩基多型データベースの構築が進む一方,技術的制約は存在し,多くの疾患において網羅的遺伝子解析で診断が確定できる率は30%前後に留まっている.本稿では,次世代シークエンス技術を用いた遺伝性疾患の原因遺伝子同定について,その可能性と現状における制限について概説する.
  • 倉橋 浩樹
    2017 年 28 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    要約:遺伝子配列情報を医療や健康管理に役立てようという「ゲノム医療」が国の施策として推進されている.次世代シーケンサーの開発に伴って,大量の遺伝子配列情報を短期間にかつ安価に得ることができるようになり,遺伝学的検査はエクソーム解析を利用したクリニカルシーケンスに急速に移行しつつある.しかし,感度などの面から診断技術としては大きく進化した反面,意義不明のバリエーション(VUS)が多く出現するという問題があり,日本人のデータベースの整備などの基盤作りを進めている.一方で,このような遺伝学的検査は,一般の臨床検査にはない特殊性,すなわち,倫理的,法的,社会的側面を考慮する必要があり,さらには心理的な影響も大きいため,一般診療の中では扱いきれない.遺伝カウンセリングの整備や人材育成も重要である.さらには,このような網羅的解析の問題点として,偶発的所見の取り扱いをどうするかは今後解決すべき大きな課題である.
  • 新堀 哲也, 青木 洋子
    2017 年 28 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    要約:無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症(RUSAT)は骨髄不全,近位橈尺骨癒合症,斜指症などを主徴とするまれな疾患である.われわれは患者1 人およびその健常な両親の全エクソーム解析を行い,MECOM(MDS1 and EVI1 complex locus)のミスセンス変異を同定した.MECOM は造血幹細胞の自己複製に重要な役割を果たすこと,再生不良性貧血患者で同遺伝子欠失の症例報告があること,発生期にlimb bud に一過性に発現することなどから機能的にも原因と強く疑われた.そこで更に2 例において同遺伝子を解析し,いずれにおいても1 例目の近傍にミスセンス変異を同定した.計3例のうち2 例はde novo 変異であり,健常人には同定されず原因と考えられた.MECOM は白血病や固形腫瘍において過剰発現,再生不良性貧血症例において欠失が同定されていた.本研究によりMECOM の特定の部位のミスセンス変異がRUSAT を起こすことが明らかとなった.
  • 稲葉 浩
    2017 年 28 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    要約:血友病は血液凝固第VIII 因子遺伝子(F8),第IX 因子遺伝子(F9)中の多種多様な遺伝子変異によって引き起こされる.これまで患者の病因遺伝子変異の解析は,1)エクソンとその近傍のPCR 増幅とシークエンスによる点変異や小規模な欠失・挿入の検出,2)MLPA(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)による大規模な欠失・挿入の検出,3)ロングPCR によるX染色体逆位の検出,が行われてきた.しかし近年,身近になった次世代シークエンス(NGS)がこれらの解析に取り入れられるようになってきた.折りしも血友病の医療は,個別化医療に向かいつつある.またゲノム編集による遺伝子治療も臨床応用に向けて着実な進歩をみせている.このような状況下,個々の患者の責任遺伝子を中心としたジェノタイプの把握にNGS 解析の活用が期待されている.
  • 加藤 秀樹, 菅原 有佳, 南学 正臣
    2017 年 28 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    要約:非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は,複数の補体系遺伝子を原因とした先天性の原因と,後天性の原因を含んだ症候群であるが,この約20 年で原因遺伝子・病態が判明し,また効果的な治療薬も登場し,急速に進歩した疾患である.次世代シークエンサーの使用により,新規原因遺伝子が発見され,また各患者の遺伝子診断にも使用され始めている.本稿では,aHUS の原因についての概説と共に,本疾患に対する次世代シークエンサーを用いた最近の研究,また遺伝子診断における注意点について概説する.
  • 森崎 裕子, 森崎 隆幸
    2017 年 28 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    要約:遺伝性大動脈疾患の多くは,若年期から大動脈解離などの重篤な合併症を発症することがしばしば問題となるが,解離発症前の大動脈拡張期に,降圧剤治療や予防的基部置換術などによる早期介入を行うことにより,解離イベントを予防することが可能である.そのため,早期診断が極めて重要であるが,その診断には専門的な知識と経験を必要とすることが多く,その結果,治療介入が遅れることも少なくなかった.確定診断のために必要とされる遺伝学的検査も原因遺伝子のサイズの大きいものが多いために,なかなか普及してこなかったが,NGS を用いた遺伝子診断技術の向上により,多くの遺伝性大動脈疾患の遺伝子診断が比較的容易にできるようになってきた.一方で,診断後の患者およびその家族の管理やケアもふくめて,遺伝子検査前後の遺伝カウンセリングの重要性が指摘されている.
原著
  • Keishi SUZUKI, Takeshi YAMAMOTO, Ikuyo TAKAGI, Erito FURUSE, Hideto SA ...
    2017 年 28 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー
    Abstract: Background: The direct anti-Xa agent edoxaban was approved in September 2014 as an alternative to warfarin for treatment of venous thromboembolism (VTE). Methods and Results: The advantages of edoxaban for VTE treatment were assessed by comparing the in-hospital clinical courses of 79 consecutive patients before and after edoxaban approval. Edoxaban was frequently used soon after its approval for VTE. The median length of hospitalization was significantly shorter after than before edoxaban approval (12.0 vs 17.0 days, respectively; p<0.01). Conclusion: Treatment with edoxaban may significantly shorten the length of hospitalization in patients with VTE compared with standard care with warfarin.
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