日本血栓止血学会誌
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28 巻 , 3 号
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特集 脳梗塞2017:血栓止血学とのクロストーク
  • 星野 岳郎
    2017 年 28 巻 3 号 p. 267-277
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:今日最も汎用されているTOAST 分類では,脳梗塞はアテローム血栓性,心原性,ラクナ,その他,原因不明の5 病型に分類される.TOAST は各病型に明確な診断基準があり簡便であることが最大の利点である一方,inter-observer reliability やvalidity は十分と言えず,「原因不明」の割合が多くなってしまうなどの欠点がある.これらはSSS-TOAST,CCS といった改定分類によってある程度克服できるが,やや複雑なシステムでありあまり定着していない.また既存の分類法では最も因果関係の強い病型一つを強制的に当てはめるため,併存病態の情報が無視されてしまう問題もある.その点を解決したASCOD 分類は,病因(atherosclerosis,small vessel disease,cardiac pathology,other cause,dissection)ごとに脳梗塞との関連の強さをグレードするシステムであり,多様な目的に応用可能である.しかしながら全ての分類法は行う検査の質や完遂度などに左右され,一定のバイアスは避けられない.各分類法の長所・短所をよく理解し,目的に応じて適切な分類法を選択することが重要である.

  • 黒田 淳哉
    2017 年 28 巻 3 号 p. 278-288
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:本邦においては高齢化社会の進行とともに脳卒中対策の重要性はますます高まっているが,近年とりわけ脳梗塞発症率・死亡率の低下が鈍化している.高血圧管理の改善が進んだ一方で,高齢化や生活習慣の欧米化による代謝性疾患の増加が問題となっている.本稿では,そのような現状を踏まえ,本邦における脳卒中・脳梗塞の時代的動向や現状を国際比較も交えて概説し,脳梗塞危険因子が発症や臨床経過に及ぼす影響について,久山町研究やFukuoka Stroke Registry の報告を中心に述べる.さらに,脳梗塞発症・再発予防において,中心的な治療法である抗血栓療法の推移・現状についても概観する.本邦における脳梗塞疫学研究の成果が脳卒中医療の基盤となり得るエビデンスを構築することにより,脳卒中の予防・診療の改善につながるよう期待したい.

  • 井上 学
    2017 年 28 巻 3 号 p. 289-296
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:脳梗塞の診断において,診察についで重要視されるのは画像診断である.もちろん血栓止血学的なラボラトリー診断も重要であるが,脳画像で得られる情報量はここ近年ダイナミズムを増している.脳梗塞の直接の原因である「血栓」を観るには様々なイメージング・モダリティがあり,代表的なモダリティの最新情報についてまとめた.CT を使用したCT perfusion 画像や,CT angiography において造影剤の時相の違いを評価して側副血行路を評価するmultiphase CTA,そして古くからある超音波検査についてまとめさせていただいた.またMRIに関しては直接血栓を見つける方法と血栓の結果起こった脳組織の虚血・灌流状態を評価する方法が知られているため,MR angiography のプラークイメージングからMRI perfusion 画像のミスマッチ判定法について触れさせていただいた.超急性期治療の迅速化が叫ばれている中で “time is brain”であることに間違いはないが,“time” “tissue” “tube”の3 者を平等に評価して治療にあたることが重要であると考える.

  • 山崎 昌子
    2017 年 28 巻 3 号 p. 297-305
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:脳梗塞で血栓止血学的評価が重要な役割を果たすのは,血栓性素因を基礎に発症する特殊な脳梗塞の診断やワルファリンのモニタリングである.一方,脳梗塞の病態把握,再発リスク予測や抗血栓療法の有効性・安全性評価についても,血栓止血学的評価の有用性が示唆されている.多くの検討が行われている非弁膜症性心房細動では,脳梗塞や出血の臨床的なリスクスコアにD-ダイマーを組み合わせると心原性脳塞栓症や抗凝固療法中の出血の予測精度が改善することが示唆されており,血栓止血学的評価は脳梗塞の診断と治療の個別化に有用な可能性がある.ただし,脳梗塞の基礎病態は複雑かつ多様なため,血栓形成過程の一側面を反映するに過ぎない単一の検査だけで評価することは難しい.複数の血栓止血学的指標から慎重に評価し,画像診断など他のバイオマーカーと組み合わせて総合的に解釈する必要がある.

  • 大久保 誠二
    2017 年 28 巻 3 号 p. 306-312
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:急性期血栓溶解療法が認可されてから10 年以上経過し,さらに血管内治療の有効性が示され,多くの知見が蓄積されるとともに,様々な課題も議論されている.血栓溶解療法には限界があり,血管内治療をうまく組み合わせる,または使い分ける必要がある.発症から治療開始までの時間を少しでも短くすることは重要である.新規抗凝固薬を含め抗凝固療法中であっても適応を考慮して治療は可能である.日本と海外では血栓溶解薬の用量が違うが,これを直接比較した試験も行われた.新しい血栓溶解薬や血栓溶解薬との併用療法も検討されている.発症時間不明の脳梗塞に対する血栓溶解療法の有効性も検討されている.脳梗塞による後遺症を減らすために,今後も様々な努力が必要である.

  • 早川 幹人
    2017 年 28 巻 3 号 p. 313-325
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:2014~2015 年にかけて公表された複数のランダム化比較試験により,「発症4.5 時間以内にアルテプラーゼ静注療法を施行し」「発症6 時間以内に血管内治療開始可能な」「National Institutes of Health Stroke Scale スコア6 以上」の「内頸動脈~中大脳動脈M1 閉塞」で「Alberta Stroke Program Early CT Score 6以上」の急性期脳梗塞症例に対し,「ステント型血栓回収機器(stent retriever)」を用いて行う血管内治療は,内科治療に優る有効性を発揮することが証明された.わが国では現在,血栓回収デバイスとして血栓吸引機器であるPenumbraシステムと複数のstent retriever (Solitaire, Trevo, ReVive)が導入されており,今や適応を有する症例において「施行すべき標準治療」となっている.

  • 永金 義成
    2017 年 28 巻 3 号 p. 326-334
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:抗血小板薬は,抗凝固薬とともに脳梗塞再発予防の主役となる薬剤であるが,単独投与による脳梗塞再発抑制効果は十分ではない.近年,抗血小板薬2 剤併用療法(DAPT)が,脳梗塞または一過性脳虚血発作患者においても有効であることが示され,投与期間や抗血小板薬の組合わせに関してさまざまな研究が行われている.一方,DAPT はより強力な抗血小板作用を有する反面,出血リスクの増加は免れない.したがってDAPT を行う場合には出血リスクを評価しておく必要があり,DAPT継続中は厳格に血圧を管理し,DAPT から単独療法へ移行する時期を見極めることが重要である.現在,新規抗血小板薬の脳卒中患者への適応拡大が試みられるとともに,より確かな抗血小板作用を有するGPIIb/IIIa 受容体拮抗薬や,血小板粘着抑制をターゲットにした出血リスクの少ない抗血小板薬(GPVI 拮抗薬,von Willebrand因子阻害薬,GPIbα 阻害薬)など,新たな抗血小板薬の開発が進んでいる.

  • 平野 照之
    2017 年 28 巻 3 号 p. 335-344
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:脳梗塞の抗凝固療法には,急性期治療薬および再発予防薬としての位置付けがある.臨床現場では,脳梗塞急性期に未分画ヘパリンの持続静注を用いることが多いが,そのエビデンスは乏しい.一方,非弁膜症性心房細動を有する脳梗塞の再発予防における経口抗凝固療法の意義は確立している.直接阻害型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant, DOAC)またはワルファリンから患者プロファイルに適したものを選んで使用する.

総説
  • 山梨 義英, 高田 龍平, 鈴木 洋史
    2017 年 28 巻 3 号 p. 345-352
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:血液凝固の活性化作用を有するビタミンK は,私たちの体内では作ることができないため,主に食物から摂取している.しかし,その消化管からの吸収メカニズムについては未解明であった.われわれは,消化管に発現しているコレステロール吸収トランスポーターNiemann-Pick C1 like 1(NPC1L1)の機能解析を進める中で,NPC1L1 がコレステロールのみならず,ビタミンK の消化管吸収も担うことを世界で初めて見出した.脂質異常症治療薬として使用されているNPC1L1 阻害剤のエゼチミブは,抗血液凝固薬のワルファリンと併用されると,ワルファリンの作用増強をもたらすことが報告されている.この機序は不明であったが,今回の発見をもとに検討を行ったところ,エゼチミブによるビタミンK の吸収阻害に起因した,誰にでも生じうる薬物相互作用であることが明らかとなった.これらの知見は,ビタミンK の吸収メカニズムのさらなる解明や,ビタミンK の吸収変動を考慮した適切な薬物治療に貢献するものと期待される.

  • 岡野 登志夫
    2017 年 28 巻 3 号 p. 353-368
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    要約:ビタミンK は,血液凝固,血管石灰化,骨・軟骨形成,細胞内シグナル伝達,細胞増殖・分化など生体内の様々な反応に関与するビタミンK依存性蛋白質の特定のアミノ酸配列(グラドメイン)中のグルタミン酸残基をγ-カルボキシグルタミン酸へ変換する酵素(γ-グルタミルカルボキシラーゼ)の補因子として働く.ビタミンK 依存性蛋白質の精密構造と高次機能,さらに細胞内に極微量で存在するビタミンK の再利用を可能にするビタミンK サイクルの調節機構の解明が進む一方で,ビタミンK 代謝の全容とビタミンK 活性代謝物の同定については未解明なままに残されている.本稿では,小腸におけるビタミンK の吸収機構,体内分布と組織内での活性代謝物への構造変換およびこの反応に関与する新規代謝酵素(UBIAD1)の諸性質と新規機能について最近の研究成果を紹介する.

ガイドライン
凝固・線溶・血小板タンパク質の機能発現機構
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