日本血栓止血学会誌
Online ISSN : 1880-8808
Print ISSN : 0915-7441
29 巻 , 4 号
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特集 静脈血栓塞栓症の予防の現状と今後の課題
  • 阿部 靖之
    2018 年 29 巻 4 号 p. 343-347
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

    要約:2017 年に日本整形外科学会の症候性VTE 予防ガイドラインが発刊された.それまでのガイドラインでは,予防対象は「無症候性VTE を含む全てのVTE」であったが,新ガイドラインでは予防対象を「症候性VTE」に変更した.これは患者にとって重要な結果は無症候性VTE の減少ではなく,症候性VTE・致死性PTE と出血合併症であるという国際的ガイドラインの動向にも沿ったものである.予防対象を変更したことで,エビデンスが乏しくなりエビデンスレベルを併記した推奨はできなかった.また,これまでのわかりやすいリスク分類や予防法の表を排除した.これは一覧表が医療訴訟に安易に使用されてきたことを鑑みたものである.医療安全を意識した執筆を心がけ,基本的で安全性が高い理学的予防法,早期歩行を重視.抗凝固療法を適応する場合は,患者の個別的状況に応じて,VTE リスクと出血リスクとのバランスを考慮する必要があることを強調している.

  • 池田 正孝
    2018 年 29 巻 4 号 p. 348-352
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

    要約:静脈血栓塞栓症(VTE)は周術期に発生する時に致死的となる合併症であり,予防が最も重要である.本邦では2004 年に各学会合同のVTE 予防ガイドラインが作成されたが,消化器外科領域おいては個々の症例に対する予防法の選択基準がまだ十分とはいえず,新たなエビデンスに基づいた予防法の確立が望まれる.2012 年に発表された,米国胸部疾患学会(ACCP: American College of Chest Physician)の第9 版のVTE 予防ガイドラインでは,リスクスコアに基づくVTE 予防法が導入された.また,症候性VTE または大出血が予防のエビデンス構築における重要エンドポイントとなり,無症候性のVTE 発症に関してはその重要性が落ちたためエビデンスの創出には多数の症例が必要となった.ビッグデータに基づいたエビデンスの確立が一つの解決策で,症例登録システム,NCD(National Clinical Database)の活用が重要と考えている.

  • 杉村 基
    2018 年 29 巻 4 号 p. 353-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

    要約:21 世紀に入るまで日本の臨床現場では,欧米人との人種差が強調されてきたこともあり動脈系血栓症と比較して静脈系血栓症に対する関心は乏しかった.産婦人科領域では妊産婦死亡の直接原因として深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症(VTE)は日本において第3 位を占めていたが,2001 年妊産婦の死亡が社会問題化し,はじめて関連学会での予防対策ならびにガイドラインの策定が急遽開始された経緯がある.その後,日本でのVTE 発症率の概数調査に基づき,北米のガイドラインに該当する対策がVTE予防ガイドライン2004 年版として発表されたが,2009 年の一部改定以後,複数の関連学会による横断的予防ガイドラインの改定は行われていない.海外では各分野がエビデンスに基づき,整合性を保ちながらガイドラインの改定が行われているが,日本においては産婦人科領域,とくに産科領域ではガイドライン作成はエビデンス準拠型から臨床現場のコンセンサス準拠型に変わり現在に至っている.欧米のガイドラインとの比較において改定について展望が求められる.

  • 鈴木 海馬, 栗田 浩樹
    2018 年 29 巻 4 号 p. 361-369
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

    要約:静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)とは肺血栓塞栓症(pulmonary embolism: PE)と深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)の総称であり,近年発症率が増加している.脳卒中領域におけるVTE に対する治療・予防に関してはエビデンスも限られており,本邦でも十分に浸透していないのが現状である.また,各国の脳卒中ガイドラインに目を通すと,早期ROM介入によるDVT 予防はEuropean Stroke Organization guidelines やPolish guidelines of stroke treatment and prevention では推奨されているものの,日本脳卒中ガイドライン2015 やAmerican guidelines,AVERT trial(A Very Early Rehabilitation Trial for Stroke)では言及されておらず,早期リハビリテーション施行によるROM 訓練の重要性について早急に本邦でも評価する必要があると考える.今回,当科における治療経験を踏まえて,脳卒中領域におけるVTE の予防・治療と課題に関して述べる.

  • 榛沢 和彦
    2018 年 29 巻 4 号 p. 370-373
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

    要約:東日本大震災ではワルファリンが届くのが1 週間後になった避難所もあった.今後の首都直下地震,東南海地震では薬剤が避難所に届くのがもっと遅れる可能性もある.また通常の避難所診療所ではPT-INR 測定は困難でありワルファリンのコントロールは不可能である.そこで大規模災害が予測される地域ではワルファリンをできるだけDOAC に変更することが必要である.またワルファリンに変えられない患者も少なくないことから,平時からPT-INR をPOCT で測定できるようにDMAT や災害拠点病院では準備すること,PT-INR 測定できるPOCT がどこにあるかを医療機関で情報共有しておくことが必要である.さらに災害後にワルファリンが4 日以上届かない場合にワルファリン服用者に対してDOAC 処方するかどうかなどを本学会が中心になって提言し,可能ならガイドライン作成が必要と考えられる.

  • 小椋 透
    2018 年 29 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

    要約:静脈血栓塞栓症の発症割合は状況や部位によっては数%である.日本で静脈血栓塞栓症を評価項目とした並行群間比較試験は実施されているが,両群ともに静脈血栓塞栓症の発症が少なく,群間で有意差が認められないことがある.発症割合が数%の場合に,試験群は対照群に比べて発症が有意に減ることを示すためには多くの症例数が必要で実現可能性が乏しくなる.そこで,多くの症例数による研究を行うために,データベースや海外データが利用されている.データベースを用いた研究として,データベース内で群を作り群間比較する方法はあるが,群間で被験者背景等が不揃いの可能性がある.その場合に,部分集団やマッチング等で群間の被験者背景等を揃えて比較する方法がある.海外データは日本人と同様の特徴であるとは限らないため,日本データと併せて使用するためには,併せることの妥当性等の検証が必要となる.以上に関した研究を統計学の観点から検討する.

原著
  • 備後 真登, 鈴木 隆史, 篠澤 圭子, 上久保 淑子, 一木 昭人, 近澤 悠志, 村松 崇, 清田 育男, 大瀧 学, 四本 美保子, ...
    2018 年 29 巻 4 号 p. 379-388
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/10
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    要約:症例1 は55 歳,女性.血尿精査でAPTT,PT 延長を認めた.交差混合試験(CMT)は下に凸,第V 因子活性(FV:C)3.0%で先天性FV 欠乏症と診断した.その後筋肉内出血を呈し再度のCMTで凝固時間は補正されず,2.0 BU/mL のインヒビターが検出され後天性FV インヒビター(AFVI)と診断した.症例2 は84 歳,女性.尿路感染症で前医入院時にAPTT,PT 延長を認めた.CMTは下に凸,FV:C 15.9%で先天性FV 欠乏症と診断された.退院後に関節内出血を呈し再度のCMTで凝固時間は補正されず,5.0 BU/mL のインヒビターが検出されAFVI と診断した.両症例はステロイド治療でインヒビターは消失した.AFVI の病初期ではCMT で阻害パターンを示さず,先天性と診断されることがある.FV:C 低下時はCMT を繰り返すとともに,後天性の可能性も考えインヒビター測定が重要である.

2018 年度日本血栓止血学会 学術奨励賞
診断・治療・技術講座
第12 回日本血栓止血学会学術標準化委員会(SSC)2018 シンポジウム
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