日本血栓止血学会誌
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33 巻, 5 号
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Editorial
特集:DIC Up To Date
  • 伊藤 隆史
    原稿種別: 特集:DIC Up To Date
    2022 年 33 巻 5 号 p. 520-525
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    感染と組織損傷は炎症を惹起する二大要因である.炎症を惹起する過程においては,死細胞から放出される生理活性物質(damage-associated molecular patterns: DAMPs)が重要な役割を果たしている.DAMPsは生理的な炎症反応,免疫反応,組織修復反応に関わる一方で,慢性炎症,自己免疫疾患,さらには劇症型の急性炎症性疾患や播種性血管内凝固の病態にも深く関わっている.近年,細胞死の制御機構やDAMPsの放出機構が詳細に明らかになってきていて,これらを標的とした新規治療法によって前述の病態を軽減できるのではないかと期待が高まっている.本稿では,細胞死,DAMPsの放出,DAMPsの作用に関する最近の国内外の基礎研究の動向を概説し,炎症性疾患や播種性血管内凝固の病態を考察していきたい.

  • 梅村 穣
    原稿種別: 特集:DIC Up To Date
    2022 年 33 巻 5 号 p. 526-534
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    敗血症性播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)は組織因子の放出を起点とする凝固カスケードの亢進と好中球―血小板―血管内皮の相互作用が複雑に関与したメカニズムで発症し,頻度,重症度ともに高い重要臨床課題の一つである.敗血症性DICに対して適切なタイミングで治療適応を検討するためには,日々繰り返し診断基準を用いてスクリーニングを行うことが重要であり,また血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMA)などの類似の臨床像をきたす疾患と適切に鑑別を行う必要がある.敗血症における抗凝固療法の有効性はDICの有無,重症度によって異なる可能性があり,治療対象を適切に選定することが重要である.抗凝固療法を適切な時期に開始することも,その有効性に関与する重要な要素であり,最適な治療戦略を確立するためには,今後も研究を進めていく必要がある.

  • 早川 峰司
    原稿種別: 特集:DIC Up To Date
    2022 年 33 巻 5 号 p. 535-543
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    重症外傷における凝固障害の病態については,2020年に国際血栓止血学会の3つの学術標準化委員会が共同声明を発表しているが,いまだ,国際的な合意形成を得られておらず議論が続いている.我々は,外傷そのものを原因とする受傷直後の凝固障害(trauma induced coagulopathy)の病態を線溶亢進型DICとしてとらえている.このtrauma induced coagulopathyは,①凝固活性化因子が全身循環をめぐる凝固の活性化,②線溶亢進,③消費性凝固障害から形成される.また,このtrauma induced coagulopathyに対する治療は,①早期の抗線溶療法と②フィブリノゲンを中心とした凝固因子の積極的な補充が中心となる.重症外傷では,時間経過とともにDICの病型が変化するため,その病態理解と適切な治療介入が重要である.

  • 川﨑 薫
    原稿種別: 特集:DIC Up To Date
    2022 年 33 巻 5 号 p. 544-550
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    産科DICの発症頻度は0.03~0.35%であり,発症した場合の母体死亡率は5~10%,児死亡率は30~50%と予後不良である.常位胎盤早期剝離,羊水塞栓症,分娩後異常出血,敗血症,妊娠高血圧症候群,急性妊娠性脂肪肝,HELLP症候群などの基礎疾患を契機に発症する.産科DICは急性かつ突発的に発症し,急激に進行することが多い.DICを引き起こしやすい疾患を認識し,早期診断を行い,迅速な治療介入を行うことが母体救命に繋がる.早期診断には,検査所見のみならず産科基礎疾患や臨床所見により評価する産科DICスコアが有用である.治療は,産科DICの契機となった基礎疾患の除去,輸血やフィブリノゲン製剤による補充療法,トラネキサム酸やアンチトロンビン製剤による抗DIC療法を行う.多職種連携による迅速な治療介入が母体救命のために肝要である.

  • 河野 徳明
    原稿種別: 特集:DIC Up To Date
    2022 年 33 巻 5 号 p. 551-562
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)は,主に敗血症や造血器疾患に合併する.代表的な敗血症に合併するDICの病態は,免疫細胞から放出されるヒストンやHMGB-1(High mobility group box-1 protein)などの核内蛋白が重要性な役割を果たし,線溶抑制型で臓器不全を呈する.一方,造血器腫瘍(主に白血病)に合併するDICは,線溶亢進型で主に出血症状を呈する.白血病細胞は,組織因子やcancer procoagulantを発現・放出し,外因系凝固機序を促進させ,凝固活性化する.特に,急性前骨髄性白血病細胞ではannexin IIの過剰発現により,プラスミンの生成を亢進し,線溶活性化する.DICの診断は,鑑別疾患の除外[血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy: TMAなど)]を行い,診断基準(旧厚労省 もしくは,日本血栓止血学会)に沿って行う.造血器腫瘍に合併するDICの治療では,遺伝子組み換えトロンボモジュリン製剤とAT製剤の有効性と安全性が示されている.最近,HMGB-1が,造血器腫瘍に合併するDICの病態に関与する可能性が示されている.また,残された課題であるDICに合併する脳出血についても文献的考察を行う.

  • 久宗 遼, 山川 一馬
    原稿種別: 特集:DIC Up To Date
    2022 年 33 巻 5 号 p. 563-571
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/15
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    近年,海外からの臨床ビッグデータを用いた記述疫学研究や比較研究が多く報告されるようになった.本邦でもDPC(Diagnosis Procedure Combination)データやレセプトデータが電子媒体で保存されるようになったことで,近年になり様々な分野で報告され始めた.本稿ではビッグデータとして症例数の多い保険データベースであるDPCデータを用いた播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation: DIC)に関する臨床研究に焦点し,その流れと今後の展望を論じた.DIC疫学研究ではDIC病態の周知や治療法の検討により,DICの死亡率は各基礎疾患において改善傾向が示された.各基礎疾患で治療薬の投与割合が異なっていたが,antithrombin製剤,recombinant thrombomodulin製剤の使用割合が多い傾向であった.各投与薬剤の比較研究ではいくつかの基礎疾患において死亡率の改善が認められた.DPC解析データのようなビッグデータを用いた大規模観察研究は質が高ければ,RCTに匹敵する臨床的価値を示す.今後はDIC領域において本邦からのさらなるビッグデータ解析による国際的発信が望まれる.

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