日本血栓止血学会誌
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Editorial
特集:血友病の最近の話題
  • 西田 恭治
    原稿種別: 特集:血友病の最近の話題
    2025 年 36 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
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    血漿由来から遺伝子組換え製剤へとより効率的に欠乏凝固因子を補充する技術革新による血友病治療の進歩は目覚ましい.さらにノンファクター製剤そして遺伝子治療と治療方法の進歩は現在進行形である.他方で,何らかの行動がなければ国・地域による治療格差は広がる一方である.世界血友病連盟(World Hemophilia Federation: WFH)は,2020年のガイドライン第3版で「健常人と変わらないQOL」を目指すべきとしている.そして,定期補充療法は全ての患者に行き渡るべきスタンダードと考えている.そのための活動は多岐に及び,その一端を紹介する.我々が医療格差の現実を知り,技術革新によるQOL向上の恩恵をすべての患者が享受できるための知恵を寄せ合うことは,治療の届かない国・地域の患者のためのみならず日本の問題点をも浮き彫りにする.日本にとっては馴染みの薄い入札制度(tendering system),医療技術評価(health technology assessment: HTA),レジストリの必要性やアドボカシー活動にも触れていきたい.

  • 近澤 悠志, 松本 剛史, 西田 恭治
    原稿種別: 特集:血友病の最近の話題
    2025 年 36 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
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    稀少疾患である血友病の治療薬は初期の頃から高額であり,費用負担の軽減や治療アクセスの拡大が重要な課題であった.患者アドボカシーとは,患者やその家族が医療政策に影響を与えるために自らの権利やニーズを主張する活動であるが,まさに1960~80年代の患者会によるアドボカシー活動は盛んであった.その結果,種々の権利が獲得されつつあった1980年代に薬害エイズ事件が起こり,血友病患者会としての集合が難しくなった一方で,同事件を契機に血友病の治療費は完全に公費負担となった.その後も血友病治療薬の開発は進み,定期補充療法で健常人に近い日常生活が可能となってきたが,依然として治療コストは高く,本邦の医療経済に大きな影響がある.2024年現在,改めて血友病患者が団結し,アドボカシー活動を継続する意義とその必要性や方法について,同年大阪で開催されたHABIT summitの内容を踏まえてここで考察する.

  • 松本 剛史
    原稿種別: 特集:血友病の最近の話題
    2025 年 36 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
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    医療におけるレジストリは,特定の病気や治療法に関する患者データを収集・管理するデータベースを指し,患者の診断,治療,経過,治療成績などの情報を記録し蓄積する.血液凝固異常症は有病率の低さ,長期にわたる観察が必要であることから,レジストリを利用した血友病患者のリアルワールドデータの収集は,治療の質の向上や安全性の検証に有用である.2018年に日本血栓止血学会に血友病診療連携委員会が発足し,患者レジストリ構築部会が設置され約3年間の検討の結果,2021年血液凝固異常症レジストリ運営委員会が始動し,実際の構築作業が進められてきた.そして2024年9月「血液凝固異常症レジストリ研究」が倫理審査委員会で承認され2024年度中の患者登録を目指しシステムと環境の整備が行われている.著者は本誌2024年35巻1号でも寄稿したが,本稿では医療におけるレジストリの利活用の現状とこの新しい凝固異常症レジストリ構築の最新状況を概説する.

  • 松尾 陽子
    原稿種別: 特集:血友病の最近の話題
    2025 年 36 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
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    血友病保因者(hemophilia carriers: HC)も男性の血友病患者と同様に出血傾向を示すことが明らかになった.治療介入の必要性が高まり,女性血友病患者(women and girls with hemophilia: WGWH)やHCの新しい命名法が提言された.女性特有の過多月経や出産などの出血リスクだけでなく,血友病に特徴的な関節内出血を認めたHCの報告もあり,これらに対応するため,早期の第VIII/IX因子活性値測定が推奨されている.我が国でも実態調査が進行中だが,WGWHやHCの病態や治療法に関する課題も多い.偏見や心理的負担が彼女たちの障壁となる中,精神的・身体的に健康で前向きにライフイベントに取り組める支援体制の構築が望まれている.

  • 澤田 暁宏
    原稿種別: 特集:血友病の最近の話題
    2025 年 36 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
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    後天性血友病Aは,高齢者に多く,突然の出血傾向を来たす稀な疾患である.発見が遅れる事が多く,時に致命的な出血を来す.原因は,血液凝固第VIII因子に対する自己抗体による自己免疫疾患であり,治療として,抗体を抑制する為の免疫抑制療法と,出血症状に対する止血治療を並行して行う.免疫抑制療法は,prednisoloneとcyclophosphamideが推奨されるが,感染症の合併が問題となる.止血治療は,バイパス止血製剤が用いられていたが,新たにemicizumabが適用となり,遺伝子組換えブタ第VIII因子製剤が発売された.これら新規治療により,致命的な出血のコントロールや,長期の安静を必要とせず,生活の質を維持する事が可能となってきた.本稿では,後天性血友病Aの臨床における現状について解説する.

総説
  • 下西 成人
    原稿種別: 総説
    2025 年 36 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/18
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    中等症・軽症型血友病患者では,定期補充療法をしていない重症血友病患者と比較して一般に出血症状が軽度である.それ故に,血友病の診断がなされるまでに期間を要し,小児期から青年期を患者として認識しないまま過ごす場合もある.また,測定法による凝固因子活性の乖離も見られることや,重症度と出血回数が合致しない例もあり,治療に迷うこともある.また,明らかな出血はなくとも,微小な出血を繰り返すことにより,血友病性関節症が徐々に進行し,成人期に関節症に伴う疾痛およびQOLの低下が問題となる.また中等症・軽症型血友病患者では,インヒビターの発生リスクは重症患者と比較して低いが,インヒビターが発生すると,出血症状は重篤化し,頻回の製剤投与を伴う通院・入院治療を要することもある.そして近年,非凝固因子による治療も出現してきており,それぞれの患者に合わせた治療法を選択していく必要がある.本稿では,中等症・軽症患者における診断や治療それらに潜む課題を中心に述べていく.

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