日本血栓止血学会誌
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Editorial
特集:血小板機能検査のup to date
  • 柏木 浩和
    原稿種別: 特集:血小板機能検査のup to date
    2026 年37 巻4 号 p. 362-367
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    血小板は生理的止血および病的血栓形成において中心的役割を担っており,血小板数だけでなく血小板機能を把握することは出血傾向および病的血栓形成の診断・予防において重要である.一方で,血小板は生細胞であり血小板血栓形成には多くの分子が複雑に関与している.また宿主防御や炎症,腫瘍増殖・転移などにおける血小板の役割も注目されており,血小板機能の評価は常に困難が伴う.現在においても血小板機能検査のゴールドスタンダードは光透過式血小板凝集能検査とされるが,手術室や救急外来でのpoint-of-careモニターとして使用される機器など多くの検査法が開発されている.それぞれの検査の特性を十分理解し,目的に応じた適切な検査を行うこととその限界を理解することが特に重要である.

  • 平岡 大輔, 石﨑 淳, 山之内 純, 竹中 克斗
    原稿種別: 特集:血小板機能検査のup to date
    2026 年37 巻4 号 p. 368-374
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    血流下血栓形成能解析システム(Total Thrombus-formation Analysis System: T-TAS®)は,マイクロチップ内に全血を一定の流速で灌流することで血流下という生理的条件を再現し,血小板粘着・活性化・凝集を含む血栓形成過程を総合的かつ定量的に評価可能な検査システムである.従来の血小板機能検査が,アゴニスト依存的で特定経路の評価にとどまるのに対し,T-TAS® platelet chipは一次止血全体を反映するグローバルアッセイとして位置づけられる.血液疾患および心血管疾患領域を中心に臨床的有用性が複数報告されている.筆者らは新たにT-TAS®を膠原病領域に応用し,全身性エリテマトーデスにおけるヒドロキシクロロキンの抗血小板作用を解析した.今後は臨床イベントとの関連の蓄積により,実臨床におけるT-TAS®の役割の明確化が期待される.

  • 兼松 毅, 鈴木 伸明
    原稿種別: 特集:血小板機能検査のup to date
    2026 年37 巻4 号 p. 375-381
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    古典的な止血機能検査の弱点を補完し,血液凝固の全過程を生体内により近い形で評価する方法として,包括的凝固機能検査がある.そのひとつである血液粘弾性検査は,全血を検体に用い,止血の3要素である血管・血小板・凝固因子のうち血小板・凝固因子のはたらきを包括的に評価できることから,血小板機能のPoint of Careモニターとしての活用が期待される.近年はROTEMをはじめ,種々のトリガー試薬を用いて複数の検体を同時に測定し,各種パラメーターを迅速・定量的に評価可能な方法が複数登場している.しかし,血小板機能異常症や抗血小板薬投与下における血液粘弾性検査の評価方法や有用性はいまだ定まっておらず,さらなる探索と検証が必要である

  • 井上 克枝, 上田 眞叶, 佐々木 知幸, 築地 長治, 白井 俊光
    原稿種別: 特集:血小板機能検査のup to date
    2026 年37 巻4 号 p. 382-387
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    本稿は,新たなin vivo血小板活性化マーカーであるsoluble C-type lectin-like receptor 2(sCLEC-2)について,その分子背景,測定法,臨床応用の可能性を概説する.sCLEC-2は血小板活性化に伴って放出される,shed CLEC-2とマイクロパーティクル上のCLEC-2を含む指標であり,通常の採血条件下でも比較的安定して測定できる点で,PF4やβ-TGより実臨床に適している.近年,ELISAに加えてCLEIA法による自動測定系も整備され,急性冠症候群,急性虚血性脳卒中,播種性血管内凝固,血栓性微小血管症,抗リン脂質抗体症候群,COVID-19などで上昇することが報告されている.脳卒中では,病型鑑別や予後予測への有用性が期待されており,sCLEC-2は血小板活性化関連疾患の新たな診断・評価マーカーとして,今後の保険収載と臨床実装が期待される.

トピックス 新しい医療モダリティシリーズ
トピックス
原著
  • 大野 久美子, 長尾 梓, 稲垣 有佐, 天野 景裕, 後藤 美和, 金田 眞, 牧野 健一郎, 長江 千愛, 澤田 暁宏, 白山 理恵, ...
    原稿種別: 原著
    2026 年37 巻4 号 p. 401-411
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    目的:日本の医療環境に適した血友病性関節症管理の推奨事項を作成する.

    方法:インフォーマルコンセンサス方式を使い,臨床専門家(整形外科医,リハビリテーション科医・理学療法士,小児科医,血液内科医)14名が血友病性関節症管理に関する40ステートメントと18サブステートメントを文献に基づき作成し,専門家30名に電子メールで送付し同意レベル(賛成,条件付き賛成,条件付き反対,反対)を調査した.

    結果:専門家30名中27名が回答した.39項目は賛成/条件付き賛成に,4項目が条件付き反対/反対に達し(すべて疼痛評価・管理に関係),15項目はコンセンサスが得られなかった.

    結論:血友病性関節症の管理は,定期的な評価(身体機能,関節超音波,生活の質(QOL),心理学的)と身体活動(理学療法などのリハビリテーション診療,有酸素運動,スポーツ),適切な疼痛管理,積極的な骨粗鬆症スクリーニングが重要である.

ガイドライン
2026年度日本血栓止血学会 岡本賞 岡本彰祐賞
2026年度日本血栓止血学会 岡本賞 岡本歌子賞
  • 松本 智子
    原稿種別: 2026年度日本血栓止血学会 岡本賞 岡本歌子賞
    2026 年37 巻4 号 p. 424-431
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    本総説では,凝固・線溶反応を動的に評価する新規機能検査の創出と,その病態解明および臨床応用について概説した.凝固波形解析(clot waveform analysis: CWA)によりフィブリン形成過程の定量化を可能とし,さらにトロンビン生成試験(thrombin generation test: TGT),トロンビン・プラスミン生成試験(T/P-G)へと展開することで,凝固能の包括的評価を実現した.加えて,凝固線溶波形解析(clot-fibrinolysis waveform analysis: CFWA)の開発により,凝固と線溶を一連の反応として可視化する新たな評価系を確立した.これらの手法は血友病,後天性凝固異常症,血栓性疾患における病態解明や薬効評価に応用され,従来法では捉えられなかった機能的異常の検出を可能とした.さらにAI解析との融合により診断支援への応用も進んでいる.今後は標準化および多施設検証に加え,DOACモニタリングや周術期(特に心臓手術)における止血機能評価への応用が期待され,臨床検査室において実用化が進むことで,重要な機能検査として発展すると考えられる.

2026年度日本血栓止血学会 学術奨励賞
  • Nemekhbayar BAATARTSOGT
    原稿種別: 2026年度日本血栓止血学会 学術奨励賞
    2026 年37 巻4 号 p. 432-438
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    Developing variant-specific therapies for genetic diseases is not scalable, particularly for disorders with extensive allelic heterogeneity such as hemophilia B, caused by variants in the F9 gene encoding coagulation factor IX (FIX). Instead of correcting individual variants, we investigated a gain-of-function strategy using CRISPR–Cas9–based cytosine base editing to introduce the hyperactive R338Q (Shanghai) variant (c.1151G>A) into the endogenous F9 locus. This substitution enhances intrinsic tenase activity without increasing protein expression. An optimized base editor delivered via adeno-associated virus (AAV) achieved >60% target-site conversion in human cells and knock-in mouse models, resulting in increased FIX activity across multiple patient-derived F9 variants in knock-in models. Lipid nanoparticle (LNP) delivery also enabled efficient in vivo editing, while supporting repeat dosing and controlled editor exposure. These approaches resulted in a three- to sixfold increase in circulating FIX activity. Together, this gain-of-function genome-editing strategy provides a scalable and physiologically regulated therapeutic framework for hemophilia B.

  • 大栗 伸行
    原稿種別: 2026年度日本血栓止血学会 学術奨励賞
    2026 年37 巻4 号 p. 439-448
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    深部静脈血栓症(deep vein thrombosis: DVT)に対する新規抗凝固薬の標的として,凝固第XI因子(FXI)および活性化FXI(FXIa)が注目されているが,ヒトDVTでの局在やFXIaとFXaの作用の違いは明確ではない.ヒトDVTにおいてFXIが主に非器質化部でフィブリンと一致し,血小板を取り囲むように局在することを示した.家兎静脈血栓モデルでは,FXIa阻害剤とFXa阻害剤はいずれも血栓形成を抑制したが,同等の抗血栓作用を示す用量で,FXa阻害剤のみが出血時間と出血量を増加させた.フローチャンバー解析では,FXIa阻害剤はFXa阻害剤に比べてトロンビンおよびフィブリン形成の抑制作用が弱かった.以上より,FXIaはトロンビンを介した静脈血栓の成長に関与するが止血への関与は少なく,FXIa阻害の比較的弱いフィブリン形成抑制作用が出血傾向を示さない理由の一つであることが示唆された.FXIa阻害薬は出血傾向の少ない新規抗凝固薬として期待される.

  • 古川 晶子
    原稿種別: 2026年度日本血栓止血学会 学術奨励賞
    2026 年37 巻4 号 p. 449-457
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/18
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    非重症型血友病Aの一部では,凝固第VIII因子(FVIII)活性が抗原量に比して低下するcross-reactive material-positive(CRM+)表現型を示す.本研究では,中等症血友病A患者においてCRM+表現型を呈する新規FVIII-Lys1693Asn(K1693N, FVIII-Nara)変異を同定し,その機能異常の分子機構について検討した.トロンビンによる開裂部位であるArg1689のP4’部位に位置するLys1693に着目し,FVIII-K1693Nを遺伝子組み換えにより作製し,トロンビンによる活性化および開裂反応を解析した.さらに,Arg372近傍のP4’部位に位置するLys376についても同様に解析を行い,部位依存的な機能の違いを検討した.その結果,K1693N変異はArg1689におけるトロンビンによる開裂を遅延させ,FVIII活性化を著しく障害することが明らかとなった.一方,K376N変異では開裂反応自体は保たれるものの,活性化後のFVIIIaの安定性が低下していた.これらの結果は,P4’部位が切断効率および活性分子の安定性という異なる側面からFVIII機能を制御していることを示唆した.さらに本研究では,生化学的解析に加えて分子構造モデル解析を統合することで,観察された機能変化を構造的変化として一貫して説明可能であることを示した.このような機能解析と構造解析を組み合わせたアプローチは,凝固因子変異の機能評価における有用な解析手法となり得る.

第20回日本血栓止血学会学術標準化委員会(Scientific Standardization Committee: SSC)2026シンポジウムプログラム
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