症例は79歳男性. 平成7年3月より, 肩, 膝関節の疼痛にて当院整形外科通院. 10月より足背浮腫出現し, 体重減少, 微熱も伴うため, 平成8年5月当科紹介入院. 血小板軽度増加, CRP, RFの高値, fibrinogen (Fbg), FDP, DD上昇, thrombin-antithrombin complex (TAT), plasmin-α
2plasmin inhibitor complex (PIC) 上昇, IL-6増加を認めたが, 各種検査より悪性腫瘍の合併は否定された. 以上より, 慢性関節リウマチを基礎疾患として過凝固状態によるものと考え, PGI
2誘導体である Beraprost sodium 60μg/day の投与を開始した. その結果, 1週間後には足背浮腫も消失し, CRP, Fbg, FDP, DD, TAT, IL-6も低下した. Beraprost sodium は
in vitro においては血管内皮細胞上のTMの発現を高めるとする報告があり, 本例において, DICが改善した機序としては, Beraprost sodium によりTMの発現が高められた可能性と, IL-6が抑制されたことによる凝固亢進状態の是正などが考えられ, 今後の症例の蓄積が必要と思われた.
抄録全体を表示