日本血栓止血学会誌
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Editorial
特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
  • 秋田 展幸, 林 辰弥
    原稿種別: 特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
    2024 年 35 巻 5 号 p. 572-580
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/09
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    血液凝固系は傷害局所の血栓形成による止血に重要であるが,血液凝固制御系によりその血栓形成は傷害部位に限局される.血液凝固系は,血漿中のセリンプロテアーゼ前駆体から活性型への逐次的活性化反応により進行し,フィブリノゲンがフィブリンに変換されることにより凝固塊を生成する.凝固制御系には,プロテアーゼインヒビターによる凝固制御系とプロテインC凝固制御系がある.プロテアーゼインヒビターによる凝固制御系においては,主にアンチトロンビン,組織因子経路インヒビターなどが関与している.またプロテインC凝固制御系においては,プロテインCが血管内皮細胞膜蛋白質のトロンボモジュリンと複合体を形成したトロンビンによって活性化され開始される.本稿では,血液凝固系とともにプロテアーゼインヒビターによる凝固制御系やプロテインC凝固制御系について,その生理的役割とともに構造と機能について概説する.

  • 岡本 貴行
    原稿種別: 特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
    2024 年 35 巻 5 号 p. 581-588
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/09
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    血管は正常時には血液流動性を維持するが,損傷時には血液凝固反応や血小板を活性化して止血を行う.止血機構の破綻は,血管内で血液が凝固する血栓や血管外で凝固しない出血につながる.止血や血栓,出血の病態生理の理解には血小板や血液凝固反応の活性化機序と制御機序を知ることが必要である.血管の内腔面を覆う血管内皮細胞は血液流動性と止血反応を調節する重要な細胞の一つである.血管内皮細胞は様々な因子を発現し,正常時には血小板活性化と血液凝固反応の抑制や血管拡張により抗血栓性を示し,炎症や傷害時には抗血栓性を低下するとともに,血小板活性化と血液凝固反応を開始する因子を発現して止血を誘導する.本稿では,血管内皮細胞が備える抗血栓性機序について概説したい.

  • 長屋 聡美, 森下 英理子
    原稿種別: 特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
    2024 年 35 巻 5 号 p. 589-596
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/09
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    プロテインC(PC)は肝臓で合成される凝固制御因子であり,生体内ではトロンビン-トロンボモジュリン複合体により活性化プロテインC(APC)へと変換される.APCは活性化凝固第V因子(FVa)および第VIII因子(FVIIIa)を不活化する抗凝固作用と,抗炎症活性,抗アポトーシス活性,内皮バリア機能の維持といった細胞保護作用を有している.先天性PC欠乏症/異常症は,PC遺伝子(PROC)の病的バリアントにより発症する遺伝性血栓性素因であり,常染色体顕性遺伝形式をとる.量的異常(Type I)と質的異常(Type II)に分類され,Type Iが75~80%と多い.患者の多くがヘテロ接合体であり,思春期以降に静脈血栓塞栓症や脳梗塞などの動脈血栓症を発症する.ホモ接合体や複合ヘテロ接合体は極めて稀であるが,生後数時間での新生児電撃性紫斑病,広範な頭蓋内出血,眼内出血や致死性の血栓症を発症する.本稿では,PCの構造や機能といった基礎的な内容と,先天性PC欠乏症/異常症の病態について概説する.

  • 津田 博子
    原稿種別: 特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
    2024 年 35 巻 5 号 p. 597-603
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/09
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    先天性プロテインS欠乏症はビタミンK依存性タンパク質プロテインSの血液凝固制御活性低下により,若年性に重篤な血栓症を発症する遺伝性疾患であり,「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る.)」(指定難病327)に認定されている.不完全浸透の常染色体顕性遺伝形式で伝達され,主に静脈血栓塞栓症を発症する.プロテインS抗原量と活性化プロテインC cofactor活性に基づき,量的欠乏のI型,III型,質的欠乏のII型に分類される.日本人の約1.5%はII型欠乏症を呈する遺伝子多型protein S-Tokushima変異(p.Lys196Glu)のヘテロ接合体であり,その正確な診断は静脈血栓塞栓症の発症予防と重篤化防止に極めて重要である.プロテインSは組織因子経路インヒビターのcofactorとしても血液凝固を制御するなど多彩な機能を有しており,今後の更なる病態機能解析が期待される.

  • 岡田 雅彦
    原稿種別: 特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
    2024 年 35 巻 5 号 p. 604-611
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/09
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    著者等は2020年に世界で初めてとなる,トロンボモジュリンの機能障害によって出血傾向をきたす「先天性トロンボモジュリン異常症」を報告した.患者のトロンボモジュリン蛋白(TM)はトロンビン結合ドメイン(EGF5)でホモ接合置換(Gly412Asp)されており,in vitroアッセイにおいて患者TMはトロンビン結合,プロテインCの活性化およびTAFIの活性化がいずれも欠如していることが示された.患者は低フィブリノゲン血症,高FDP/Dダイマー血症を常時呈しており,これらは出血時にさらに顕著となる.組換えヒト可溶性TM製剤が治療として有効であるが,通常量では出血が増悪することも経験した.その後,本症例とは変異部位が異なるEGF1ドメインの変異による2例目の報告がこれも我が国からなされた.本稿では先天性トロンボモジュリン異常症の病態,診断,治療,について自験例を主にして解説,考察する.

  • 田村 彰吾, 鈴木 敦夫, 鈴木 伸明
    原稿種別: 特集:血液凝固制御系の基礎と臨床
    2024 年 35 巻 5 号 p. 612-618
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/09
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    アンチトロンビン(AT)の主な生理的役割は活性型血液凝固第II因子と活性化血液凝固第X因子(FXa)の不活化であり,ヘパリン類と複合体を形成することにより,その不活化効率を飛躍的に高める.先天性AT欠乏症は静脈血栓症(venous thromboembolism: VTE)のハイリスク因子である.病型分類として,量的異常(Type I)と質的異常(Type II)に分けられ,Type IIはさらにRS(反応中心ループ内の異常),HBS(ヘパリン結合部位の異常),PE(反応部位近接領域の異常)に分類される.AT活性の測定はXa法と呼ばれるFXaの阻害活性を合成基質法で測定する手法が主流である.活性測定においてはワルファリンとヘパリン類は測定に影響を与えないが,直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant: DOAC)の使用は偽高値を呈する.VTE発症時には急性期を中心にヘパリン類による抗凝固療法がおこなわれるが,ヘパリンの効果が得られにくいヘパリンレジスタンスの状態であることに注意が必要である.

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