日本輸血細胞治療学会誌
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54 巻, 1 号
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原著
  • 平山 順一, 東 寛, 藤原 満博, 秋野 光明, 本間 稚広, 山本 定光, 加藤 俊明, 池田 久實
    2008 年 54 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    血小板製剤による輸血副作用を発症する患者に対し,洗浄置換血小板(W/R-PC)を使用する場合がある.我が国では数種類の洗浄置換液が使用されているが,血小板の保存性能などを詳細に検討した報告はほとんどなく,W/R-PCの有効期限なども統一されていない.最近われわれは血小板保存性能の優れた洗浄置換液(M-sol)が市販輸液製剤のみで調製できることを明らかにした.本研究では現在我が国で広く使用されている洗浄置換液3種とM-solについて血小板保存性能の比較検討を行った.さらにM-solの液状での保存方法についても検討を行った.
    M-sol,ブドウ糖加酢酸リンゲルを主とする液,生理食塩水+ACD-A,冷凍血液洗浄用液3号+ACD-AによりW/R-PCを96時間まで保存した.測定項目であるpH, Pセレクチン陽性率,%HSR,%Disk, MPV,凝集能,グルコース,乳酸の数値から判断すると,洗浄置換後6時間以内ならばいずれの洗浄置換液中でも血小板機能は良好であったが,24時間を超えて保存する場合はM-solの場合のみ通常のPCと同等もしくはそれ以上の機能が維持されていた.またM-solの液状保存に関しては,アルミ蒸着した袋を用いて4℃で静置することにより,少なくとも3カ月間安定に保存できることが明らかになった.
  • 守口 淑秀, 羽藤 高明, 末丸 克矢, 荒木 博陽
    2008 年 54 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    背景·目的: 血液製剤の国内自給を達成するためには,献血事業の推進と共に適正使用による使用量の削減が必須である.愛媛県におけるアルブミン製剤の使用量は他の都道府県に比べて突出している.更に愛媛大学医学部附属病院の使用量は県内においても最上位に位置し,愛媛県における基幹病院として放置できない状況であった.薬剤部では輸血部と連携して,アルブミン製剤の適正使用を推進するため種々の方策を実行してきた.
    対象·方法: 薬剤部から医師に対して適正使用を呼びかけるとき,適正か否かを判断する基準として,厚生労働省の「血液製剤の使用指針」1)は有力なガイドラインである.しかし,この内容をアナウンスするだけでは殆ど効果が得られなかった.そこで,病院情報システムに記録された投与前後のアルブミン検査値,投与履歴,病名を該当患者毎に自動的に集計しデータ集としてプリントアウト出来るシステムを開発し,主治医に送付する事により適正使用の再確認を促した.当初はアルブミン投与量の多い症例にのみ行ったが,その後,使用目的をアンケート形式で問う届け出制を導入し,データ票を添えて全症例に対象を拡大した.また,全国調査の公表結果から得られた同一機能区分病院の平均使用量と本院の使用量を毎月グラフとして,その隔たりを視覚的に訴えた資料を作成し病院運営委員会および実務連絡会で通知した.また,診療科別の明細表も添付した.
    成績: アルブミン製剤使用量を2年間で半減できた.また,アンケート調査を含めて多くの知見を得られた.
    結論: 厚生労働省のガイドラインのみを根拠に医師に対して働きかけていた時期には,ほとんど効果が見られなかったが,病院機能区分別の使用量調査の公表により全国における状況を把握し,本院の使用量が多いということを認識できたことで,削減目標と現状を数値的に示して呼びかけたことが効果的であった.またこの調査結果により病院長をはじめとする首脳部が適正使用推進に向けてバックアップした事も大きな要因であった.更に,病院情報システムのデータを主治医にフィードバックして状況確認を促す方法が非常に有用であった.
  • 川元 俊二, 稲田 一雄, 金丸 隆幸, 永尾 修二, 落合 亮二, 内田 清久, 中里 貴浩, 海江田 令次
    2008 年 54 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    (背景)輸血を受け入れないエホバの証人の患者に対する治療の対応や指針が検討され,現在に至っている.(目的)患者の意思決定を尊重する原則に立って治療を推進していく上で,インフォームドコンセント(IC)の方法とそれを実践する為に必要な他科との医療連携について検討する.(対象と方法)過去十年間にエホバの証人の患者113名(小児3名),128例におこなったICの方法と他科との医療連携の内容を示した.ICの方法は同種輸血拒否と受け入れ可能な代替療法の許容範囲の確認,無輸血治療に伴う合併症の内容の理解と同意であった.医療連携には麻酔科医,放射線科医,消化器内視鏡医との連携が含まれた.(結果と成績)ICの過程で医療者側が治療適応外と認めた症例は無かった.治療症例は110名,125症例で手術治療107例,放射線学的観血治療10例,内視鏡的治療4例,放射線照射化学療法17例をおこなった.緊急手術および治療は15例だった.患者全員が同種血輸血の受け入れを拒否する意思を示したが,4名を除く106名が代替療法として閉鎖回路で連結された希釈式自己血および回収式自己血輸血や血液分画の投与を受け入れた.自己血輸血を29例(23%)に施行し,術中術後の管理を通して,患者の意思により術前に代替治療の適用を定めた許容範囲を超えた症例は無く,無輸血治療が本来の治療の根治性を阻害することはなかった.また手術在院死亡や重篤な合併症の併発を認めなかった.(結論)ICの徹底と院内医療連携による無輸血治療の実践によって個々の患者に対する適切な医療環境と治療成績を提供できた.
症例
  • 宇留間 元昭, 加藤 栄史, 安藤 高宣, 丹羽 玲子, 片井 明子, 林 恵美, 浅井 真理子, 伊藤 公人, 仁田 正和, 土井 まつ子 ...
    2008 年 54 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    背景: 近年,輸血による細菌感染症の報告は増加傾向にある.しかし,輸血との因果関係を直接証明した症例はほとんどない.今回,濃厚血小板(PC)の細菌汚染により発症した敗血症の一例を経験したので報告する.
    症例: 70歳男性.再生不良性貧血にて愛知医科大学病院外来通院中.血小板10,000/μl,ヘモグロビン7.9g/dlのためPC輸血,引き続き赤血球(RBC)輸血を受けた.RBC輸血開始後15分より,発熱,軽度の呼吸困難が出現し,感染症疑いにて入院となった.入院後無菌室にて抗生物質等の抗菌剤の投与を受け,全身状態は比較的安定していたが,翌朝死亡が確認された.病理解剖の承諾は得られなかった.
    原因検索のため,発熱時に患者血液検査及び血液培養を行った.さらに,PCバッグ,セグメントチューブおよびRBCバッグ内の残余血液を用いて血液培養を施行した.患者白血球は著明に減少しており(300/μl),初期の血液培養にて黄色ブドウ球菌が検出されたことより,敗血症と診断された.一方,PCバッグ,セグメントチューブ双方から黄色ブドウ球菌が検出されたが,RBCバッグから菌は検出されなかった.これら3種(患者血液,PCバッグおよびセグメントチューブ)の菌株に対する薬剤感受性試験より,全てmethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)と判定され,さらに感受性パターン,コアグラーゼ試験,遺伝子検査により,全て同一と判定されたことより,PCに混入したMSSAにより発症した敗血症であることが明らかとなった.
    結語: 輸血による細菌感染を疑った場合,患者のみならず,該当製剤バック内,さらにはセグメント内の血液を用いて細菌培養することが重要と考えられた.また,MSSAなどの皮膚常在菌は採血の際に血液製剤に混入する可能性があるため,特に常温保存のPCについては感染の危険性を認識する必要があると考えられた.
報告
  • 種市 麻衣子, 岡田 義昭, 上村 晃一朗, 福永 信人, 赤石 暁弘, 猿渡 千尋, 滝本 正敏, 阿武 啓嗣, 堀内 善信, 山口 一成
    2008 年 54 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/19
    ジャーナル フリー
    1995年に2nd第IX因子国際標準品を基準として第一世代第IX因子国内標準品の力価を測定し,我が国の血液凝固第IX因子製剤の国内標準品と定めた.2004年に第二世代第IX因子国内標準品を制定することとなり,5施設が参加して力価測定作業を行った.3rd第IX因子国際標準品を基準として用い,相対力価を測定し,第二世代の国内標準品の力価は75.0国際単位/mlに決定した.
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