日本輸血細胞治療学会誌
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54 巻, 4 号
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原著
  • 河合 泰一, 酒巻 一平, 根来 英樹, 大槻 希美, 森永 浩次, 木下 圭一, 細野 奈穂子, 岸 慎治, 山内 高弘, 浦崎 芳正, ...
    2008 年 54 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    原発性アミロイドーシス7例に対して自己末梢血幹細胞移植併用melphalan大量療法を実施した.顆粒球コロニー刺激因子の単独投与で必要な末梢血幹細胞の確保が可能で,7例中2例(29%)に血液学的寛解が得られた.心アミロイドーシスの存在した2例は移植後それぞれ42日目と159日目に治療関連死亡し,安全性確保の観点から本治療の対象外とする必要性が推測された.非寛解の4例にサルベージ治療が行われ3例に血液学的効果が得られた.Melphalan大量療法またはサルベージ治療で血液学的効果の得られた5例中4例(80%)に臨床症状の改善または安定化が得られた.心アミロイドーシスを除外すればmelphalan大量療法は安全に実施可能と推測されたが有効性には限界がある.心アミロイドーシス例やmelphalan大量療法の無効例には新規治療法を組み込んだ更なる臨床研究が必要である.
症例
  • 北澤 淳一, 猪股 真喜子, 山口 千鶴, 田中 一人, 玉井 佳子, 皆川 正仁, 福井 康三, 福田 幾夫
    2008 年 54 巻 4 号 p. 503-506
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    不規則抗体カードが輸血副作用の予防に役立った症例を経験したので報告する.
    当院で診療した抗C+e抗体による遅発性溶血性輸血副作用(DHTR)と輸血後血小板減少症の既往を有する女性が,健康診断の胸部エックス線写真で縦隔拡大を指摘され,大動脈瘤を疑われ弘前大学医学部附属病院へ紹介され手術目的に入院.術前輸血関連検査は異常なかったが,黒石病院で発行した不規則抗体カードにより抗C抗体,抗e抗体,抗HLA抗体の保有既往が判明し,Rho血液型またはHLA抗原との適合血液製剤(それぞれ赤血球製剤·血小板製剤)を使用した.ヘモグロビン最低値12.4g/dl(術後12日),血小板数最低値114,000/μl(術後6日).抗C抗体陽性(術後22日)であったが,ハプトグロビン6mg/dl未満(術後26日)以外の溶血所見は認めなかった.すなわち,DHTR発症を予防できた.
    不規則抗体カードが輸血副作用を防止できることが確認され,そのカードの有用性が広く知られることが期待される.
報告
  • 川島 博信, 丹生 恵子, 小野 順子, 佐川 公矯
    2008 年 54 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    臨床検査における精度管理調査は,地域の病院間で検査データの統一化,検査の標準化を図る上で有効な手段である.福岡県では,1972年から福岡県医師会による精度管理調査を行っており,約200の施設が参加している.輸血検査では,約120の施設が参加し,同じ検体を用いたABOおよびRho(D)血液型の判定が正確にできなかった施設は,当初より毎年10%前後存在する.しかし,間違いの原因の検討や解析,個々の施設への指導まではしていなかった.
    そこで今回,精度管理委員会が,2005年度·2006年度に不正解報告をした施設のうち5施設へ原因検索の為の視察·点検を行った.その結果,(1)4施設で技師の輸血検査の知識·経験不足が原因と考えられた.技師は関連学会へ参加しておらず,最新の情報や検査手技を得ていない.(2)3施設では,検査機器·器具類の管理不備があった,などの問題点が解明でき,それに基づき的確に改善指導が実施できた.
  • 梶本 昌子, 伊藤 明, 稲葉 頌一, 高橋 孝喜, 加藤 俊一
    2008 年 54 巻 4 号 p. 512-518
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/27
    ジャーナル フリー
    平成18年度神奈川県合同輸血療法委員会のテーマの一つとして,県内の輸血管理料申請状況について調査を行った.県内の医療機関283施設を対象に,平成18年9月∼10月にアンケートを実施し,148施設(回収率52.3%)から回答を得た.これらの施設での総血液供給単位数は726,167単位で昨年度の県内血液供給量の75%を占めていた.
    輸血管理料は4月に導入されたばかりであったが,すでに45施設(30%)が申請をしており,管理料Iが19施設,管理料IIが26施設であった.また今回申請をしなかった103施設のうち,50施設(48.5%)が今後申請を希望していた.輸血管理料の導入は保険点数が低いにもかかわらず,輸血管理体制の整備への医療機関のモチベーションを高める効果が予想以上に大きいと考えられた.輸血管理料申請までに解決しなければならない課題は,管理料Iでは,アルブミンの一元管理,専任医師,専従検査技師の配置等,輸血管理体制の整備の困難さがあげられていた.管理料IIでは,数値基準(FFP/RBC比,ALB/RBC比)達成が困難であるとした施設が上位を占めていた.また,数値基準が達成できなかった施設のうち血漿交換を除外すればFFP/RBC比の基準がクリアできる施設が6施設であった.次回の診療報酬改定時に,数値基準の見直しを要望する必要があると考えられた.
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