日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
54 巻, 6 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著
  • 山本 晃士, 菊地 良介, 花井 慶子, 成田 友美, 加藤 千秋, 柴山 修司, 中村 太郎, 藤本 康弘, 木内 哲也, 高松 純樹
    2008 年 54 巻 6 号 p. 619-624
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    <背景·目的>肝臓移植術を受けるレシピエントには肝機能が極度に低下した例が多く,血小板減少に加え凝固障害を合併しており,しばしば大量出血をきたす.当院では肝臓移植術中に血液凝固能を評価するとともに,凝固能低下が進行した際の輸血治療について検討した.<対象·方法>対象は2003年から2005年にかけて行った肝臓移植術31例.術前および肝臓摘出時,門脈血流再開時,門脈血流再開4時間後,10時間後,16時間後および24時間後の4ポイントで血液凝固検査を行い,凝固能低下の程度と出血量の相関について検討した.著明な凝固能低下を認めた場合にはフィブリノゲン製剤を投与し,出血量および輸血量の変化について検討した.<結果>術中もっとも減少幅の大きかったのはフィブリノゲン値で,門脈血流再開時に最低値(82±49mg/dl)を示した.術中出血量が5l以上の群と5l未満の群では,肝摘出∼門脈血流再開4時間後のフィブリノゲン値に有意差を認め,前者では最低フィブリノゲン値が75mg/dl未満であった.術中の最低フィブリノゲン値が75mg/dl未満の群と75mg/dl以上の群で門脈血流再開2時間後までの出血量を比較すると,後者において有意に出血量が少なかった.術中にフィブリノゲン値100mg/dlを維持するようフィブリノゲン製剤を投与したところ,出血量は約30%減少し,輸血量も大幅に減らすことができた(平均で赤血球製剤20%減,新鮮凍結血漿50%減,血小板製剤60%減).<考察>肝臓移植術中にはフィブリノゲン値100mg/dlを維持するようフィブリノゲン製剤を投与することにより,出血量および輸血量を大幅に減少させうると考えられた.
  • 松山 宣樹, 平山 文也, 保井 一太, 谷上 純子, 古田 里佳, 福森 泰雄, 木村 貴文, 谷 慶彦, 柴田 弘俊
    2008 年 54 巻 6 号 p. 625-631
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    非溶血性輸血副作用の中では蕁麻疹が最も多い.その発生機序は輸血製剤由来のアレルゲンと患者由来IgE抗体による,I型アレルギーと想像されているが,未だ不明な点も存在している.一方,肥満細胞/好塩基球が関与するアレルギー反応にはこれ以外に,造影剤アレルギーに代表される様に,刺激因子が直接,同細胞を活性化し症状を惹起する経路も存在する事から,同症例においても,輸血製剤中に含まれるHLA抗体や好塩基球抗体等の刺激因子が,同細胞を直接刺激し,脱顆粒に至る可能性がある.そこで,本研究ではこの可能性を検証する為に,まず,好塩基球抗体を検出する検査法の樹立を検討した.方法として,既に報告している5-cell lineage IFTを一部変更し,従来法で各血液細胞マーカーとして用いていたCD4,CD20,CD14抗体に加え,新たにCD123抗体を加えた.これにより,好塩基球を含む6系統血液細胞に対する抗体の検出が可能となった.次に,本法を用いて,アレルギー性輸血副作用23症例を対象に白血球抗体の検索を行った結果,患者23例中14例,製剤19例中6例において抗体が検出され,その内,7例は好塩基球に反応する抗体であった.これにより,好塩基球に反応する抗体の存在も明らかとなった.
報告
  • 立花 直樹, 北澤 淳一, 田中 一人, 兎内 謙始, 玉井 佳子
    2008 年 54 巻 6 号 p. 632-637
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    血液製剤適正使用の推進と情報共有を目的として,平成12年に青森県輸血療法委員会合同会議を設立し,以後,年1回開催している.合同会議では,事前に施行している輸血療法関連アンケート調査の解析報告,輸血療法適正化に効果が見られた施設の取り組みの紹介,赤十字血液センターからの情報提供を行い,青森県健康福祉部主催の「血液製剤使用適正化に関する講演会」を行った.これらの活動の結果について総括した.第1に,輸血管理体制が整備されている施設が増加した.第2には,副作用に対する体制が整備された施設が増加した.第3には,血液製剤使用量について,血小板製剤·新鮮凍結血漿の使用量が減少した.第4には,赤血球製剤と血小板製剤の廃棄量·率が低下した.合同会議の活動により,輸血管理·実施体制が整えられ,血液製剤適正使用が行われつつあると評価した.また,各施設の輸血療法委員会の活動の活性化にも有用と思われた.
feedback
Top