日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
55 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 杉本 達哉, 佐藤 薫, 佐々木 ひとみ, 中塩屋 千絵, 兵藤 理, 土田 文子, 櫻井 朋美, 村上 美知, 山口 陽子, 板垣 浩行, ...
    2009 年 55 巻 6 号 p. 683-690
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    背景:臍帯血移植は凍結細胞を用いるため,凍結臍帯血の造血機能評価は重要である.しかしながら,液体窒素に保存された造血前駆細胞の造血機能がどの期間保持されるかは明らかでない.
    方法
    1.Validationの23件(凍結期間1年2カ月∼5年)から有核細胞数,生細胞率,CD34測定及びCFU-GM数より凍結前,解凍後のバッグ大室,バッグ小室,セグメントの評価を行った.
    2.Validationと移植出庫前セグメント解凍検査(凍結期間1カ月∼8年)より凍結期間による造血機能の影響を検討した.
    結果
    1.検体別の造血機能検査比較
    凍結前またはバッグ大室,小室と比べセグメントの造血機能検査値は低値傾向にあったが,各検体間で良好な相関を認めた.
    2.凍結期間別造血機能検査比較
    生細胞回収率で5年以上保存群が有意(p<0.05)に低値を示したが,CD34陽性細胞,CFU-GM数では各保存期間群に差を認めなかった.
    考察:臍帯血移植申込時の造血機能評価として,セグメントからバッグ内生細胞数や機能推測の妥当性が示された.今回検討の保存期間で造血前駆細胞の造血機能減少は認めなかったが,今後も継続的な検討が必要である.
  • 野村 努, 窪田 良次, 馬場 夏美, 伊関 喜久男, 荒井 健, 山岡 源治, 稲毛 敏宏, 西郷 勝康, 北中 明, 筧 善行, 田港 ...
    2009 年 55 巻 6 号 p. 691-697
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    [背景·目的]化学療法後の血小板回復時期を予測することは,適切な血小板輸血を実施する際に重要である.我々は,多項目自動血球分析装置XE-2100の網赤血球測定チャンネルを用いて測定した幼若血小板(immature platelet fraction,IPF)の臨床的有用性について検討した.
    [対象·方法]XE-2100を用いて,健常人130名および患者100名のIPF%(血小板数に対するIPFの比率)を測定した.また,延35コースの化学療法および造血幹細胞移植を施行した19名の悪性腫瘍患者を対象に経時的にIPF%を測定し,後方視的に解析した.
    [結果]健常人のIPF%は,2.8±1.4%であった.また,IPF%と血小板数との間には,負の相関性(r=0.319)を認めた.化学療法および造血幹細胞移植症例では,血小板数が30×109/l以上に回復する1∼11日前にIPF%の一過性の上昇(IPF%ピーク値)が認められた.IPF%ピーク値が10%以上の化学療法例では,10%未満の症例に比べ有意に血小板回復が早期より認められた(3日対5日,P=0.0164).また,IPF%ピーク値が10%以上であった自家移植例では,10%未満の同種移植例に比べて血小板回復が早期より認められた(2日対4∼11日).
    [結論]IPF%は,化学療法および造血幹細胞移植後の血小板回復時期を予測し,適正な血小板輸血を実施する際に有用なマーカーとなる可能性が示唆された.
  • 秋野 光明, 田村 暁, 平山 順一, 内藤 友紀, 勝又 雅子, 本間 稚広, 山本 定光, 藤原 満博, 東 寛, 加藤 俊明, 池田 ...
    2009 年 55 巻 6 号 p. 698-704
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    血小板輸血による副作用を予防する目的で血漿を除去した洗浄·置換血小板(Washed and/or replaced platelet concentrates,W/R-PC)が調製されている.調製法としては2つの方法が主に使われているが両者を比較した報告はない.そこで,成分採血由来の血小板(Plasma-PC)を洗浄置換·保存液M-solで洗浄し,M-solに再浮遊する方法(洗浄置換法WR-method)とplasma-PC中の血漿を遠心後M-solに置換する方法(置換法R-method)について,各W/R-PCの血小板機能や輸血効果を比較検討した.
    各方法で調製されたW/R-PCの血小板回収率や残存血漿蛋白,in vitroにおける性状(pH,凝集能,%HSR,P-セレクチン陽性率,血小板形態)を調べ,アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用がみられた患者を対象に,WR-methodによるPC(WR-PC)を75バッグ(患者: 6名),R-methodによるPC(R-PC)を31バッグ(患者: 4名)に投与して,補正血小板増加数(CCI)及び副作用の予防効果を比較した.
    WR-PCとR-PCの血小板回収率はそれぞれ90.5±1.4%と89.5±1.8%で有意差はなく,血漿蛋白除去率(残存蛋白量)は,WR-PCでは96.9±0.7%(428±95mg)で,R-PCの95.4±0.9%(627±130mg)より有意に高かった(各n=7).48時間の保存期間中(PC採血後5日目),in vitroの性状はpH以外の項目に差はみられなかった.Plasma-PCは保存と共にpHが低下し,24時間後には7.05±0.04であったのに対し,W/R-PCは何れも調製直後に一時的なpHの低下が認められたが,WR-PCでは7.37±0.03,R-PCは7.40±0.02に上昇した.輸血24時間後のCCI(×104/ul)は,WR-PCが1.53±0.82(n=51),R-PCが1.59±0.78(n=18)と良好であり,何れのW/R-PCについても,輸血後の副作用の発生はなく,副作用予防効果が示された.また,何れも有害事象は認められなかった.
    WR-PCとR-PCは,血小板機能や輸血効果について,同等である事が確認されたが,R-methodは調製工程が少なく,より簡便であるため,PCの血漿除去法として推奨される.
症例
  • 緒方 正男, 今村 朋之, 池脇 淳二, 大塚 英一, 立川 良明, 宮子 博, 菊池 博, 門田 淳一, 犀川 哲典
    2009 年 55 巻 6 号 p. 705-710
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    59歳,男性.1998年発症の原因不明の好中球減少症に対し,G-CSFの投与を継続した.2003年に急性骨髄性白血病に移行し,HLA一致同胞をドナーとして,骨髄破壊的前処置による末梢血幹細胞移植を行った.移植後day 24に生着が確認されたが,day 53に再び好中球が選択的に低下し,敗血症性ショックを来した.骨髄検査では著明な細胞融解像と顆粒球系細胞の消失が認められ,キメリズム解析ではホスト由来CD3陽性細胞を48.3%認めた.Full chimerismへの転換を目的にDonor lymphocyte infusions(DLI)(CD3陽性細胞1×107/kg)を行った.DLI後full chimerismへの到達に一致して好中球は速やかに回復し,敗血症症状も改善した.しかし同時に間質性肺炎を来たしday 92に死亡した.
    患者は移植前に原因不明の好中球減少が長期経過していた.今回移植後に残存した患者由来リンパ球がドナー由来顆粒球系細胞を選択的に障害したと考えられた.DLIによる患者由来リンパ球の排除により,免疫性好中球減少の病態の改善が得られた.
報告
  • 山岡 学, 大西 修司, 有元 美代子, 市邉 明美, 阿部 操, 館農 美香, 大谷 哲司, 森 眞一郎, 福原 資郎, 海堀 昌樹
    2009 年 55 巻 6 号 p. 711-716
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    肝移植において患者がHLA抗体を保有する場合,移植片の液性拒絶の原因となり,特にリンパ球クロスマッチ(DCT)陽性では注意を要する.今回HLA抗体保有の50歳代女性でABO不適合かつDCT陽性の生体肝移植を経験したので報告する.非代償性肝硬変症と診断され,移植目的にて当院外科へ入院、生体肝移植術が実施された.ABO不適合移植で抗B抗体価を下げるため移植前に3回の血漿交換療法とリツキサンによる免疫抑制療法が実施された.移植当日と術後4週目以降の血小板減少に対しPC-HLA輸血が有効であったが,T-Bilの段階的な上昇が見られ,8週目の血小板減少ではPC-HLA輸血の効果は得られず,その後肝不全が原因で敗血症となり死亡退院となった.本例はABO不適合かつHLA抗体保有移植で,より強い免疫抑制療法の実施が強い拒絶を認めなかった要因の1つと考えられた.術後8週目以降の血小板輸血不応では,血栓性微小血管障害症(TMA)が疑われ、後に血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診断がされたことから,輸血の適応と血小板減少などの原因について早期に究明し対応する必要があると思われた.
  • 牧野 茂義, 田中 朝志, 高橋 孝喜, 佐川 公矯
    2009 年 55 巻 6 号 p. 717-722
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/15
    ジャーナル フリー
    輸血管理体制や輸血療法委員会の活動状況に関する現状を把握すべく,2004年度調査から4年連続で輸血医療の総括的アンケート調査を実施した.輸血検査·輸血用血液の一元管理は748施設(88.7%)でなされていた.輸血管理料取得の条件でもあることから,アルブミンの使用状況を輸血部門が把握している施設は621施設(75.0%)と増えてきている.輸血療法委員会は799施設(95.2%)に設置され,専任もしくは兼任の輸血責任医師の任命,輸血検査業務に責任を持つ臨床検査技師(輸血責任臨床検査技師)の配置の条件を充たす医療機関も徐々に増加し,輸血検査の24時間体制は300床以上の病床を持つ大規模病院では90.9%と整ってきているが,300床未満の中小規模病院では44.4%とまだ半数に達していなかった.輸血実施システムにおけるコンピュータの利用に関しても,年々増加傾向にはあるが未だ十分とは言えず,特に中小規模病院において55.5%にとどまっていた.輸血管理料は全体の1/3以上の医療機関(輸血管理料I: 133施設,II: 188施設)が既に取得していた.また,輸血責任医師の任命状況で病床あたりの血液使用量と廃棄率を比較したところ,専任,兼任の輸血責任医師のいる施設では,病床あたりの血液使用量は多く廃棄率は低い傾向が見られ,それは大規模病院で顕著であった.さらに大規模病院においては輸血責任医師が兼任のときは輸血責任臨床検査技師が専任の施設の方が血液廃棄率は低い傾向が見られた.
編集者への手紙
feedback
Top