日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
56 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 寺谷 美雪, 神白 和正, 比留間 潔, 奥山 美樹, 藤田 浩, 香西 康司, 浅香 祐幸, 前田 かおり, 國友 由紀子, 山本 恵美, ...
    2010 年 56 巻 6 号 p. 679-686
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】赤血球濃厚液(RCC),血小板濃厚液(PC),新鮮凍結血漿(FFP)などの輸血用血液製剤(輸血用血液)は献血者の人体の一部であり,とりわけ有効利用が求められるが,一定量が有効期限切れで廃棄されているのが現状である.廃棄血を減少させるため有効期限内で別の患者に転用する努力が行われているが,一病院の中では限界がある.そこで,われわれは病院間で輸血用血液を転用し,有効利用する方法(病院間有効利用)を検討し,実施したので報告する.
    【方法】東京都が運営する7病院が本研究に参加した.まず,7病院において有効期限切れが原因で廃棄となる輸血用血液の量を調査した(平成17年1~7月).その後,平成19年9~12月の間に各病院で有効期限切れが切迫している輸血用血液の情報をインターネットメールで毎日,定時に発信し,使用できる病院があれば,その病院に搬送し輸血に用いた.搬送にあたっては血液製剤搬送用温度安定剤を用い,温度を管理しながら搬送した.搬送後の品質を管理するため,温度と外観,搬送時間などを評価し記録に残した.
    【結果】平成19年9~12月の間に,RCC 18本,PC 1本,FFP 4本の輸血用血液が病院間で有効利用された.その期間のRCCの廃棄率は1.06%で,H19年度の病院間有効利用を行わなかった期間の廃棄率1.78%と比較し明らかに低かった.
    【結論】輸血用血液の廃棄量を減少させるために期限切れの前に他の病院で利用することは有効であり,今後,多くの病院間で試みる意義があると思われた.
  • 尾崎 牧子, 二宮 早苗, 土手内 靖, 西山 記子, 谷松 智子, 西山 政孝, 和泉 賢一, 牟田 毅
    2010 年 56 巻 6 号 p. 687-691
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    我々は,ABO血液型不適合造血幹細胞移植後の患者のドナー型赤血球の検出が,全自動輸血検査システム(AutoVue)では試験管法に比べ一定の期間遅れることを経験してきた.この遅れの原因を検討するため,A型のHLA完全一致,非血縁ドナーから骨髄移植を受けたO型の1症例を対象とし,比重差で分離した赤血球の最上層,上層,中層,および下層についてA型赤血球産生回復の推移を検討した.A型赤血球はday32に,AutoVueでは最上層のみに検出された.試験管法では被凝集価は,全体で32倍であった.また,分離検体では,最上層は64倍と上層,下層の8倍に比べ有意に高かった.day35にはAutoVueでA型赤血球は下層にも検出され,上下層の差は移植2カ月後に消失した.ドナー型赤血球は移植後早期には,網赤血球を含め比重の小さい若い赤血球の割合が多いため,赤血球の上層部に多く検出されると考えられた.AutoVueにおけるドナー型赤血球の検出の遅れは,AutoVueが遠心分離後の赤血球の最下層を吸引するためと判明した.
    ABO血液型不適合造血幹細胞移植後の患者のドナー型赤血球の早期確認のためには,遠心分離後の赤血球の最上層を用い,そのモニタリングは赤血球層全体をよく混和したものを用いることが,効果的かつ正確である.
報告
  • 森田 庄治, 井上 進, 飯野 美穂, 二上 由紀, 小林 洋紀, 榎本 隆行, 石島 あや子, 柴田 洋一, 溝口 秀昭, 南 陸彦
    2010 年 56 巻 6 号 p. 692-696
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    我々は市販血小板抗体検査キットであるanti-PLT・MPHA・スクリーンを用いて,血小板輸血不応答患者151例を対象にMPHA法とM-MPHA法の2法で血小板抗体スクリーニング検査を実施した.MPHA法での陽性率は,49.0%(74/151例)で,M-MPHA法では52.3%(79/151例)であった.陽性の症例について抗体価を比較したところ,M-MPHA法はMPHA法に比べ抗体価が高かった.
  • 井本 しおん, 櫻井 孝介, 杉本 健, 橋本 誠, 西郷 勝康, 秋田 真哉, 荒木 延夫, 山下 万利子, 名村 喜一郎, 坊池 義浩, ...
    2010 年 56 巻 6 号 p. 697-701
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    背景:急性非溶血性輸血副作用(ANHTR)の対策と献血者の確保は輸血医療の重要課題である.ANHTRには患者側因子と輸血製剤(ドナー)側因子が関与する.若年献血者が減少し中高年層が相対的に増加しているが,加齢とともに高血圧,高脂血症など動脈硬化の危険因子は増加する.このようなドナー側因子がANHTR発生に寄与するかどうかを検討した報告は見当たらない.一方,献血が過剰の鉄を軽減し動脈硬化予防に有効であると示唆されており,中高年層の献血は両面からの検討が必要と思われる.
    方法:ANHTR被疑製剤ドナー群(T群)と対照群(C群)の間で,動脈硬化危険因子を中心に,血圧など身体的項目と脂質など血液検査項目を比較し両群間に差があるかどうか検討した.
    成績:年齢,性別,BMI,血圧,脂質については,両群間に有意差なく,白血球数と血清総蛋白はT群で有意に高値となった.CRPは両群間で有意差はないが,T群のCRP0.1mg/dl以上で呼吸困難比率が高い傾向を認めた.
    結論:T群の動脈硬化危険因子(年齢,血圧,HDLコレステロール)はC群と同等だった.白血球数やCRP等については,より大規模な再検討が必要と思われる.
  • 猪股 真喜子, 山口 千鶴, 山本 磨知子, 北澤 淳一
    2010 年 56 巻 6 号 p. 702-708
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    肝炎,HIV感染症等の輸血関連感染症対策として,当院では,2006年5月に「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」に則って,輸血前・後ウイルス感染症検査(以後,輸血前・後感染症検査)の実施体制を整備した.
    輸血前感染症検査は,輸血実施が確認された時点でHBs抗原,HBs抗体,HBc抗体,HCV抗体,HCVコア抗原,HIV抗体の6項目,輸血後感染症検査は輸血3カ月後にHBV-DNA,HCVコア抗原,HIV抗体の3項目を実施した.
    2006年5月から2009年6月までに輸血を受けた患者576人中,輸血前感染症検査は518人(89.9%)が実施,「輸血前・後感染症検査を希望せず」58人(10.1%)と「死亡」86人(14.9%)を除くと輸血後感染症検査対象者は432人で,転院先での実施を合わせ415人(96.1%)が輸血後感染症検査を実施した.
    当初,医師,看護師や患者・家族の輸血関連感染症への認識不足から輸血前・後感染症検査未実施が散見されたが,看護部門対象に輸血勉強会等で輸血関連感染症の重要性を啓発したところ看護師が輸血前・後感染症検査について補足説明できるようになり,検査実施率が向上した.さらに,転院先の主治医や患者宅への直接の電話連絡により,高い輸血後感染症検査実施率を得た.
  • 大橋 恒, 石丸 健, 天満 智佳, 佐藤 進一郎, 加藤 俊明, 池田 久實
    2010 年 56 巻 6 号 p. 709-715
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    背景:酵素法は,産生初期のRh抗体を感度良く検出できる特徴があり,我が国では多くの施設が不規則抗体スクリーニングにこの方法を組み込んでいる.しかし,酵素法は非特異反応があり臨床的意義のない冷式抗体を検出しやすく,場合によっては必要な輸血を遅延させてしまう恐れがある.今回我々は酵素法で検出される抗体の性状を解析し,不規則抗体スクリーニングにおける酵素法の意義について検討を行った.
    方法:酵素法陽性の特異抗体123例について,反応増強剤無添加の間接抗グロブリン法(Sal-IAT),PEG法(PEG-IAT),カラム凝集法(MTS-IAT)の3法を実施した.また,抗体の臨床的意義を評価するため,アイソタイプの鑑別とIgG抗体感作量の測定,および単球貪食能試験(MMA;monocyte monolayer assay)を実施した.
    結果:3法とも陽性の71例をA群,Sal-IAT陰性でPEG-IATとMTS-IATのどちらかあるいはともに陽性の34例をB群,3法とも陰性の18例をC群に分類し,各群の抗体の性状を比較した.A群とB群はIgG1が主体であり,抗体感作量はC群よりも高く,MMAの陽性率はそれぞれ87%と24%であった.一方,C群はIgMが主体で,MMAは全例陰性であった.
    結論:臨床的意義があると考えられる酵素法陽性の抗体は,PEG-IATやMTS-IATによって検出可能であった.高感度な間接抗グロブリン法で不規則抗体スクリーニングを行う場合,酵素法を実施する意義は低いと考えられた.
論文記事
  • 藤原 孝記, 島野 佳恵, 田中 秀則, 関根 みゆき, 柏瀬 貢一, 内川 誠, 佐竹 正博, 中島 一格
    2010 年 56 巻 6 号 p. 716-724
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/13
    ジャーナル フリー
    背景:HLA・HPA抗体の検出は,血小板輸血不応症例において極めて重要である.しかし,信頼性が高くハイスループットなHLA交差適合試験法やHPA抗体検出法に関する報告はされていない.
    方法:高感度HLA・HPA抗体同時解析法としてビーズアレイを応用したimmunocomplex capture fluorescence analysis(ICFA)法を開発した.患者血清と反応させた血小板を可溶化し,モノクローナル抗体結合蛍光ビーズを反応させることにより,血小板膜糖タンパク質およびHLAクラスI分子のモノクローナル抗体エピトープを介して抗原抗体複合物を特異的に捕捉した.フローサイトメトリー解析により蛍光ビーズが捕捉した免疫複合体を検出し,抗体特異性を判定した.
    結果:HLA抗体を含む血清50例およびHPA抗体を含む血清20例を用いて検討した結果,ICFA法はFlowPRA(One Lambda)と同程度の検出感度でHLA抗体を検出することが可能であった.また,本法はMPHA法より高い検出感度でHPA抗体を検出することが可能であった.
    考察:ICFA法は,迅速・簡便かつ信頼性の高い,高感度HLA・HPA抗体同時解析法であり,AHG-LCT法に代わるHLA交差適合試験の標準法として期待される.
編集者への手紙
feedback
Top