日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
57 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 恒川 浩二郎, 宇佐見 みゆき, 竹内 則子, 楢本 和美, 吉岡 亜子, 小澤 幸泰, 後藤 眞里子, 山岸 宏江, 湯浅 典博
    2011 年 57 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    [背景と目的]血液製剤の有効利用のためには廃棄血を減少させることが重要である.当院輸血部での1998年から10年間の廃棄血減少への取り組みを検証した.[結果]廃棄血が生じた原因は,輸血部から血液製剤を出庫したが使用されなかったこと,血液製剤の期限切れ,輸血を予定していた患者の死亡,血液製剤の破損が多かった.原因を医師,看護師,患者,技師・機器・血液センターに分類すると,医師の関連したものが最も多かった.廃棄血の減少要因として,血液製剤出庫前の患者検査データの医師への確認,血液製剤の適切な在庫数の確保,赤血球製剤の割り付け・返納回数の減少など16項目が挙げられた.全血液製剤の廃棄率は1998年は0.24%であったが10年間で漸減し2007年は0.06%であった.[結論]有効期限切れによる廃棄を減らす工夫,医師に適正な輸血療法の理解を促すこと,輸血緊急度の医師・検査技師間での共有,破損による廃棄を減らすことが廃棄血の減少につながる.
  • 小川 公代, 柴田 朋子, 坂下 可奈子, 戸出 浩之, 末松 直美, 志賀 達哉
    2011 年 57 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景・目的:アルブミン製剤の自給率は依然として低く,使用の適正化が求められて久しい.アルブミン製剤投与の適正性は数値基準のみでは評価できず,これが他の血液製剤と比べ対策が難しい点である.当院で行ってきた使用適正化対策とその効果について検証した.
    方法:2005年4月から(1)投与前評価の徹底,(2)投与根拠の明確化,(3)不適切使用対策,(4)保険査定対策の4つの具体的対策を順次実施した.対策開始前の2004年10月~2005年3月と,対策開始後の2005~2008年度のアルブミン製剤使用状況を比較した.
    結果:対策前と比べ,対策後の5年間で高張製剤投与前/後検査は70.6/47.1%から100/99.4%へ増加した.高張製剤投与前アルブミン値は,3.0g/dl以上での投与が14.6%から2.3%へ減少,逆に2.5g/dl未満での投与は39.6%から83.2%へ増加した.高張製剤の4日以上連日投与割合は27.8%から4.6%まで漸減した.患者一人一カ月あたりの高張製剤投与量は65.0gから,51.0gまで減少した.使用が適正化した結果,保険査定率は11.9%から2.8%へ,アルブミン使用量/総赤血球製剤使用量(A/R)は2.56から1.72へ改善した.
    結論:委員会を中心とし,関連部署が連携した対策により,医師の適正使用に対する意識が向上し確実な効果が見られた.適正使用推進のためには,(1)患者毎の具体的データの提示,(2)問題点の明確な提示及び指摘,(3)不適切使用症例の具体的提示,(4)医師個人への日常的な働きかけ,(5)関連部署の相互連携,の5つのポイントが対策を進める上で重要であった.
  • 神田 芳郎, 副島 美貴子, 川野 洋之, 江頭 弘一, 佐川 公矯
    2011 年 57 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    重篤な非溶血性輸血後副作用であるアナフィラキシーショックのリスク因子であるハプトグロビン欠損症の原因遺伝子はハプトグロビン遺伝子欠失(HPdel)であり,その頻度は約4,000人に1人であると予想される.我々は最近安全な輸血医療の遂行を目的とし迅速・簡便なリアルタイムPCR法に基づく2種のHPdel診断法を開発し報告した.今回,臨床現場への導入を目的として久留米大学病院で輸血予定患者の血液を鋳型とし,TaqMan probeを用いる方法とSYBR green Iを用い融解曲線をおこなう方法の2法を実施し結果を比較した.約1時間半で得られた結果は全サンプルで一致し,2009年1月から2010年3月末に解析した2,954名のうち91名がHP/HPdel,1名がHPdel/HPdelであった.TaqMan法は増幅シグナルそのものが結果を反映することから反応中に診断結果を予想でき,HPdel/HPdelがソフトウエアで自動検出できるため多検体処理能力に優れた方法であり,SYBR法は初期費用が低く抑えられ,より幅広い臨床現場での導入が容易であると考えられた.
症例
  • 領家 敬子, 糸賀 真人, 福田 芳美, 園山 京子, 角森 正信, 小早川 義貴, 吾郷 浩厚
    2011 年 57 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    汎血球凝集反応Polyagglutinationは,潜在していた赤血球抗原が感染症や血液疾患などにより血球表面に露出し,新鮮な正常成人血清と反応する現象であり,その種類も成因により様々である.成人T細胞白血病と緑膿菌感染症に関連し,汎血球凝集反応を認めたと考えられる患者を報告する.患者は53歳女性.非血縁者間骨髄移植と化学療法施行後であった.腰椎圧迫骨折にて入院中,突然心肺停止状態に陥った.蘇生後,集中治療室(ICU)入室となったが,心停止から9日後に死亡した.入室時の検査で血液培養から緑膿菌が検出され,その後の交差適合副試験で非特異凝集を認めた.血液センターで行われた検査で汎血球凝集反応Tk型と報告があったが確定には至らなかった.当院において,患者血液由来の緑膿菌株を用い追加試験を行った.菌株を培養し,培養液と正常O型赤血球を37℃にて反応させた.この赤血球を成人AB型血清と反応させたところ,反応開始から4日後に凝集反応を認め,緑膿菌による凝集誘導が示唆された.
  • 川尻 千華, 横田 朗, 山崎 敦子, 川口 岳晴, 鐘野 勝洋, 小野田 昌弘, 山本 恭平
    2011 年 57 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病に対する化学療法中の骨髄抑制期に濃厚血小板(PC)を輸血し,その直後に敗血症性ショックを来たした症例を経験した.
    症例:69歳,男性.急性骨髄性白血病に対する地固め療法施行目的に入院中であった.化学療法開始12日目にPC 10単位を輸血したところ,開始15分後に悪心,呼吸苦が出現したためPC投与中止.40分後に収縮期血圧70mmHg,SpO2 74%まで低下し,ショック状態に陥った.昇圧薬,抗生剤投与などの治療により,後遺症を残さずに回復した.
    結論:ショック時に採血した血液培養全てからSerratia marcescensが検出された.中止したPCの残余液培養からも同菌が検出され,両者の遺伝子解析パターンが一致したことから,PCに混入したSerratia marcescensにより敗血症を発症した可能性が高いと考えられた.
    結語:PCは常温保存であるため,細菌感染の危険が血液製剤の中でも高い.そのリスクを回避するため,細菌スクリーニング検査や病原体不活化技術の導入など,更なる対策が望まれる.
短報
feedback
Top