日本輸血細胞治療学会誌
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57 巻, 4 号
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症例
  • 西山 由加李, 泉田 久美子, 木下 美佐栄, 古屋 伴子, 吉浦 洋子, 川島 博信, 松永 彰, 井手口 裕, 田久保 智子, 迫田 岩 ...
    2011 年 57 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    58歳男性.脳出血のため当院救命救急センターを受診した.入院時,AutoVue Innova®のカラム遠心凝集法によるRh血液型検査で抗Dの反応が(3+)と通常より弱く,weak Dまたはpartial Dが疑われた.各種市販抗D試薬およびエピトープ特異的抗Dモノクローナル抗体を用いた精査では,partial DのカテゴリーDBTとほぼ同様の反応パターンを示した.Polymerase chain reaction-sequence specific primers法によるRHD遺伝子解析ではexon 5,6および7の増幅が認められず,更にcDNAのRHD遺伝子領域を直接シーケンス法にて分析したところ,RHD遺伝子のexon 5,6および7がRHCE遺伝子のexon 5,6および7に置換していることが確認された.以上より,本例は本邦でも珍しいpartial DのDBT-1(RHD-CE(5-7)-D)と同定された.
    カラム遠心凝集法での抗Dの反応は,試験管法に比べ強く反応することが多いので,カラム遠心凝集法で(3+)以下の凝集を示す場合は,weak Dやpartial Dの可能性を念頭におく必要がある.
  • 岩尾 憲明
    2011 年 57 巻 4 号 p. 274-277
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    自己血採血後に重篤な合併症(急性循環不全と意識消失)を認めた80歳以上の高齢者の2症例を報告した.症例1は自己血採血後の循環血液量減少による急性循環不全を生じたと考えられ,症例2は食後低血圧(postprandial hypotension)のために自己血採血後の食事中に意識消失を生じたと考えられた.高齢者は加齢に伴う循環血液量の減少や血行動態の変化,血圧調節機能の低下があると考えられるので,高齢者の自己血採血では血管迷走神経反射(VVR)以外にも今回の報告例のような副作用に注意する必要があり,特に80歳以上の高齢者は採血時の合併症のリスクが高いと思われる.
    したがって高齢者の自己血採血を安全に実施するためには予定採血量を少なくする,或いは80歳以上の超高齢者は自己血採血を実施しない等の採血基準を決めると同時に,診療科から出される高齢者の自己血採血予定が適切でない場合には,採血担当者が患者の状態に応じて予定採血量を変更して対応するような管理体制が必要である.
報告
  • 田中 朝志, 牧野 茂義, 大戸 斉, 高橋 孝喜, 佐川 公矯
    2011 年 57 巻 4 号 p. 278-282
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    アルブミン製剤に関する緊急アンケート調査を2009年10月に行った.国産・輸入別の使用量推移,DPCやIC(インフォームドコンセント)の使用製剤への影響等を分析し,自給率向上のための方法について検討したので報告する.5%製剤では国産製剤の占める比率は2008年で約28%と低く,2009年にさらにその比率が1%程度低下した.20%・25%製剤での国産製剤の割合は2008年でそれぞれ86・77%と高かったが,2009年には前者は81%と低下し,後者は79%と増加した.DPC導入の有無による影響をみたところ,DPC導入病院でのアルブミン製剤の自給率の平均値は未導入病院よりも若干低かった.アルブミン製剤投与についてのICは90%以上の施設で実施されていたが,原料血液の採血国や献血・非献血の別についての情報提供は約20%の施設でのみ行われていた.原料血液のICが行われている施設では各製剤とも国産製剤の使用割合が高かった.一方5%と25%製剤で国産・輸入両方の製剤を導入している施設はわずか7%であった.以上より今後のアルブミン製剤の自給率向上には原料血液についてのICが有効である可能性があるが,実効性を上げるためには各施設での製剤選択の余地を広げる努力も必要と考えられた.
  • 藤原 慎一郎, 佐藤 一也, 平田 裕二, 山本 千鶴, 松山 智洋, 尾崎 勝俊, 森 政樹, 柳沼 かおり, 菅野 直子, 中木 陽子, ...
    2011 年 57 巻 4 号 p. 283-288
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    自家末梢血幹細胞(末梢血幹細胞)採取においては,透析用の中心静脈カテーテル(dCVC)の使用が推奨されている.本研究では,動員化学療法前に鎖骨下静脈に,標準的なCVC(sCVC)を留置し末梢血幹細胞採取を行った造血器悪性腫瘍36例,計74採取について検討した.sCVC留置から末梢血幹細胞採取までの中央値は25日であった.末梢血幹細胞採取は,Spectraを用い,処理量中央値8.8l,流量中央値48.5ml/minの体外循環を行った.末梢血幹細胞動員不足を6例に認めた.採取したCD34+細胞数の中央値は,1.1×106/kg/採取,3×106/kg/患者であった.CVC感染症を2例,CVC血栓症を1例認めたが,sCVCを再挿入し採取は可能であった.アフェレーシス中の血流不足を21回認めたが,19回は血流速度の調節等にて継続可能であった.sCVCを用いた末梢血幹細胞採取は,充分量のCD34+細胞の採取が可能であり,安全に施行できると考えられる.
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