日本輸血細胞治療学会誌
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59 巻, 6 号
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原著
  • 勝又 雅子, 秋野 光明, 内藤 友紀, 本間 稚広, 加藤 俊明, 池田 久實, 高本 滋
    2013 年 59 巻 6 号 p. 791-798
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    主に新生児溶血性疾患の交換輸血に用いられる合成血「日赤」(以下,BET)は,調製の際に大容量型の冷却遠心機を用いる.しかし,このような遠心機を保有する医療機関はまれであるため,血液センター以外の施設で,BETを調製することは困難とされる.さらに血液センター製造施設の集約により,医療機関へBETを届ける輸送時間が長くなる傾向にあり,医療現場においては緊急時に間に合わない危険性を否定できない.
    そこで,我々はBETの簡便な調製方法について検討した.その結果,比較的汎用性の高い小型の卓上遠心機を使用して,BETと同等の品質を有する1/3容量の血液(以下,R-BET)を調製できることを確認した.さらに調製時,原料製剤となる赤血球濃厚液-LR「日赤」と新鮮凍結血漿-LR「日赤」の混和量を変えることで,R-BETのヘマトクリット値を35%から55%まで上げることも可能であった.
    容易に調製が可能なR-BETは,緊急を要する場合の臨床での使用に有益であると考えられた.
  • 藤井 敬子, 藤井 伸治, 淺田 騰, 西森 久和, 狩山 由貴, 池田 亮, 浅野 尚美, 小郷 博昭, 岩月 啓氏
    2013 年 59 巻 6 号 p. 799-804
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    Spectra Optia®は,COBE Spectra®に代わる次世代機であり,自動インターフェイス管理(AIM)システムを採用し全自動的にアフェレーシスを行うことができる.主に臨床使用経験が積まれていた欧州に対し,わが国では2011年7月に認可され今後の使用実績が期待される.
    今回,末梢血幹細胞採取におけるSpectra Optia®(Optia)とCOBE Spectra®(COBE)の比較を目的として,当院におけるOptia導入前後での末梢血幹細胞採取73件について,機器別採取結果を後方視的に検討した.採取回数はOptia群24回(自家15回,同種9回),COBE群49回(自家36回,同種13回),処理血液量は自家で患者体重(kg)当たり150ml,同種はドナー体重(kg)当たり200mlとした.
    単核球回収率は両機種間で有意差はなかったが,採取産物容量,赤血球混入量はOptia群で有意に少なかった.また同種のみで比較した場合,Optia群では採取産物中の血小板混入数が有意に少なかった.副作用面でも重篤なものはなく,血漿成分が過剰に採取されない簡便な全自動型血液成分分離装置としてOptiaは期待できるものと考えられた.
  • 丸橋 隆行, 横手 恵子, 青山 千夏, 堀越 晃輔, 菅井 貴裕, 西本 奈津美, 須佐 梢, 関上 智美, 橋本 陽子, 滝沢 牧子, ...
    2013 年 59 巻 6 号 p. 805-812
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    自己血貯血時には800ml以上の場合に限りエリスロポエチン製剤(erythropoiesis-stimulating agent, ESA)の使用が認められている.最近になりエポエチンα(EPOα)に加えエポエチンβ(EPOβ)も上市され2種類の皮下注射用ESA製剤が使用可能となったが,2剤間の投与時の痛みに差があることが以前より国内外から報告されている.今回,我々は自己血貯血患者にESAを投与したときの痛みの関与する因子を解析した.ESA投与時にVisual Analogue Scale(VAS)とFace Scale(FS)を患者が記載した.EPOα群100名,EPOβ群103名,のべ投与回数405回を解析の対象とした.1回目投与時の解析ではEPOα群は有意にVASが高く(p=0.0085),投与全体405回の解析でも同様であった(p<0.0001).VASを用いて多変量解析を行うとEPOαと女性が有意に痛みに関与していた.さらにESA製剤と性別で4群に分け解析すると,女性にEPOαを投与したときのみ有意にVASが高かった.以上より女性にEPOαを投与する場合には配慮が必要であるが,その痛みの差はいずれの製剤を使っても少なくとも貯血計画に影響を与えるほどのものではないと思われた.
症例
  • 難波 宏美, 藤原 孝記, 金子 強, 永友 ひとみ, 蟹井 はるか, 笠井 英利, 大曽根 和子, 前島 理恵子, 冨山 秀和, 脇本 信 ...
    2013 年 59 巻 6 号 p. 813-818
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    我々は,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)の増悪時にE抗原及びc抗原が著しく減弱し,抗E及び抗c自己抗体検出時の直接抗グロブリン試験(DAT)が陰性になる症例を経験した.
    79歳女性.2010年3月に汎血球減少症の精査・加療目的で入院となった.骨髄所見は異形成を伴った赤芽球が優位でMDS(RAEB-1)と診断された.初診時の血液型はB型RhD陽性,不規則抗体は間接抗グロブリン法(IAT)陰性であった.初診時より55病日にIATが陽性となり抗Eを検出したが,DATは陰性であった.同時に実施したRhフェノタイプ検査ではE抗原が(w+mf),c抗原が(w+mf)と極めて弱い反応を示していた.その後,抗cも検出された.骨髄細胞を用いたG-banding法の結果,種々の染色体異常を認めたが第1染色体短腕に異常は認められなかった.また,PCR-SSP法を用いたRHCE遺伝子解析の結果,55病日の検体においてC,c,E,eの増幅が認められ,R1R2(CcDEe)と判定された.
    本症例はMDSの増悪に伴ってE抗原およびc抗原に著しい減弱が認められた.
報告
  • 山内 史朗, 北澤 淳一, 田中 一人, 渡辺 新, 後藤 健治, 和野 雅治, 伊藤 経夫, 峯岸 正好, 今野 隆子, 奥村 亘, 佐藤 ...
    2013 年 59 巻 6 号 p. 819-825
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    東北地区では,厚生省(当時)から出された輸血療法に関する各種ガイドラインを実行力あるものとし,安全な輸血医療の構築を目指しAABBが行う各施設において適切な輸血医療が行われているかを第三者が点検(Inspection)し,安全を評価・認証(Accreditation)するシステムInspection and Accreditation(I&A)に着目,1998年には日本輸血学会東北支部としてI&Aの取り組みを開始した.1999年には日本輸血学会施設認定評価委員会I&A小委員会が発足し,支部による取り組みから全国的取り組みへと発展し今日に至っている.そこで,1990年代当初からI&A普及に取り組んだ東北地区の活動から全国組織による認証を行っている現在までを概観し,受審施設の伸び悩みや視察員養成など解決すべき課題を明らかにしI&A活動のさらなる活性化と我が国の輸血医療に合致した活動を導き出すことを目的として報告する.
  • 松坂 俊光
    2013 年 59 巻 6 号 p. 826-831
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    少子高齢化に伴う近未来の輸血用血液の相対的不足のリスクを回避するために以下の方策を実践した.
    若年層への献血広報としての学校への出前講座により中高生の献血に関する意識が高まることを確認した.今後の献血者の裾野拡大に資することを期待している.
    臨床医の意識改革のための血液センターの臨床研修においては,献血から使用までの過程を経験し,多くの人の心,手間,コストがかかっていることを理解することにより,安易な輸血使用を戒め,予約の意義を認識することが明らかになった.
    また,血液センターにおいて,400ml全血献血に特化すること,血液製剤の期限切れ削減,1稼働当たりの献血者数を増加させることが,献血事業の改善,効率化に重要な3本の柱と考えられた.
  • 牧野 茂義, 田中 朝志, 紀野 修一, 北澤 淳一, 津野 寛和, 佐川 公矯, 高橋 孝喜, 半田 誠
    2013 年 59 巻 6 号 p. 832-841
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    2012年調査は,日赤より輸血用血液製剤が供給された11,348施設に対し実施され4,812施設(42.4%)から回答が得られた.輸血管理体制の整備は,300床以上の医療施設では,輸血責任医師の任命以外は90%以上の実施率であり,ほぼ達成されていたが,小規模医療施設では50~70%の整備率であり,過去5年間はほとんど変化がなかった.特に輸血責任医師の任命は50.3%と低かった.2011年に輸血管理料の施設条件が変更になったため,今回調査では取得施設が急増した.輸血検査では,小規模施設において院外の検査機関に委託する施設が30%前後存在していた.2012年は病床当たりの各血液製剤使用量は昨年と比べて微増程度であったが,2008年調査と比較すると赤血球製剤15.6%,血小板製剤21.5%,新鮮凍結血漿(FFP)30.1%の増加率であった.また,都道府県別の血液使用量は,依然として2~5倍の差を認めた(赤血球製剤2.1倍,血小板製剤4.1倍,FFP 4.4倍,アルブミン製剤4.1倍,免疫グロブリン製剤5.1倍).今後は,輸血実施施設の90%を占める小規模施設における輸血管理体制の整備を進め,血液製剤の使用量の地域差を少なくすることが重要な課題である.
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