日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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ISSN-L : 1881-3011
59 巻, 4 号
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総説
原著
  • 櫻木 美基子, 清川 知子, 細川 美香, 帰山 ともみ, 中尾 まゆみ, 池田 珠世, 押田 眞知子, 青地 寛, 永峰 啓丞, 冨山 佳 ...
    2013 年 59 巻 4 号 p. 579-585
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
    ジャーナル フリー
    当院で2010年7月1日から2011年8月31日の14カ月間に不規則抗体検査を実施した症例中,輸血後に不規則抗体が陽性化した症例に関して,その頻度および臨床経過を検討した.不規則抗体検査の件数および実患者数は,検査件数16,945件,不規則抗体陽性456件(2.7%),実患者数は9,839例,陽性203例(2.1%)で,陽性203例中臨床的意義のある不規則抗体は93例(0.95% 93/9,839)であった.93例中輸血後に陽性化したのは14例(15% 14/93)であった.輸血実患者数は1,627例で,うち輸血後に不規則抗体検査を行ったのは700例であったため,輸血患者の2.0%(14/700)で輸血後に不規則抗体が陽性化した.さらにこの14例中輸血後30日以内に不規則抗体が陽性化した7例の副作用症状について検討したところ,1例が遅発性溶血性輸血副作用(DHTR),2例がDHTR疑診例で,残り4例は遅発性血清学的輸血副作用(DSTR)と考えられた.またDHTR 1例とDHTR疑診例1例は抗C+抗eが原因であり,これらの抗体のDHTRにおける重要性が示唆された.7例中4例が輸血歴を,女性4例中3例が妊娠歴を有しており,免疫既往のある患者はDHTRやDSTRを起こす可能性が高いと考えられた.
  • 増田 有美子, 志磨 美緒, 小松 美保, 鴨川 康代, 平松 潔子, 渡邊 由香理, 池添 香苗, 河野 武弘
    2013 年 59 巻 4 号 p. 586-592
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
    ジャーナル フリー
    当院は2007年9月よりアルブミン製剤の管理を薬剤部から輸血室に移行し,輸血療法委員会による適正使用推進を強化した.2010年1月に輸血管理料Iを算定し,その後も算定維持に向けた取り組みを継続している.
    これまでの取り組みを,薬剤部でアルブミン製剤の管理を行っていた期間(1),当院独自の標準書式を用いて,輸血室による管理を開始した期間(2),高張アルブミン製剤の濃度を変更し,投与後評価体制を導入した期間(3),投与前評価体制を導入した期間(4),輸血管理料算定後,維持するための取り組みを行った期間(5)に分けて,アルブミン製剤の使用量と,アルブミン製剤使用量/総赤血球製剤使用量(ALB/RBC)を算出し評価を行った.その結果,期間(1)から(5)にかけて高張アルブミン製剤使用量は32.3%減少し,等張アルブミン製剤使用量は45.4%減少した.ALB/RBCは3.08から1.86へと低下し,投与前後の血清アルブミン値も有意に低下した.
    輸血管理料算定に有効な方法として,標準書式を用いた医師による投与記録の徹底,高張アルブミン製剤の濃度変更,投与前後の評価体制の導入が挙げられた.輸血管理料の算定を維持するためには,医師への個別対応など投与前後の評価体制を強化することが必要であった.
症例
  • 柿木 康孝, 長瀬 政子, 高木 奈央, 内村 大祐, 佐藤 進一郎, 高本 滋
    2013 年 59 巻 4 号 p. 593-600
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
    ジャーナル フリー
    発端者(MT)は74歳男性で多発性骨髄腫の診断.カラム凝集法(Ortho Auto Vue)にて抗Aに対する反応が部分凝集(mixed-field agglutination,mf)を示した.フローサイトメトリー法(FCM法)では,A型血球集団とO型血球集団にピークをもつ2峰性のモザイクパターンを示した(A型血球72.6%,O型血球27.4%).血清A型糖転移酵素活性は256倍(対照256倍)と正常で,抗Aに対する非凝集赤血球を用いた抗A吸着解離試験は陰性であった.輸血歴はなく,双生児でもなかった.骨髄染色体は正常核型であった.これらの検査結果は治療により多発性骨髄腫が完全寛解となった後も変わらなかった.発端者の姉(MH)は77歳女性で高血圧にて治療を,発端者の弟(YT)は71歳男性で糖尿病にて治療を受けていた.どちらの症例もABO血液型検査は発端者と同様のmfを示した.FCM法でも同様のモザイクパターンを示したが,A型血球とO型血球の割合は姉(MH)ではA型血球23.6%,O型血球76.4%で,弟(YT)ではA型血球39.3%,O型血球60.7%であった.血清A型糖転移酵素活性も正常であった.同胞3例のABO遺伝子解析(Exon6,7領域のDNAシークエンス)では,発端者の遺伝子型はA101/O02で,姉はA101/O02,弟はA101/O01であり,A遺伝子型に関しては3例とも共通のA101で,塩基配列の置換・欠失を認めなかった.以上の所見より同胞3例をAmosと判定した.今回の症例はAmosの遺伝的要因をA型亜型と対比して考える上で示唆に富むと考えられた.
論文記事
  • 平山 文也
    2013 年 59 巻 4 号 p. 601-612
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/30
    ジャーナル フリー
    非溶血性輸血副作用は輸血副作用の中で最も多く,輸血関連急性肺障害(TRALI),輸血関連循環負荷(TACO),アレルギー性反応,発熱反応,輸血後紫斑病,GVHDなどが含まれる.生命を脅かす程の重篤なアナフィラキシーが起こることは稀ではあるが,アレルギー性反応は副作用の中で最も頻度が高い.副作用は患者の病苦を増すものであることから,軽微な副作用でも回避できるのであれば回避すべきである.アレルギー疾患や輸血医療の領域では過去10年間にいくつかの新しい発見がされた.例えば,特にマウスの系でそうであるが,肥満細胞は必ずしもアレルギー疾患で働く主たる唯一の細胞ではないこと.抗原性を有した未消化のあるいは消化された食物アレルゲンが献血者血中に存在した場合,輸血により患者に輸注されアナフィラキシーが起こる可能性があること.洗浄血小板については,洗浄後の回収率が100%でないことから輸血後の血小板数上昇がやや劣ることなどのデメリットもあるが,アレルギー性副作用の予防に有用であることなどである.本総説ではこれらの知見にも言及しながら,アレルギー性副作用の頻度,発生機序,検査,予防,治療などについてまとめた.
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