日本輸血細胞治療学会誌
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ISSN-L : 1881-3011
60 巻, 1 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
総説
原著
  • 末岡 榮三朗, 山田 尚友, 山田 麻里江, 久保田 寧, 吉村 麻里子, 板村 英和, 出 勝, 横尾 眞子, 吉原 麻里, 蒲池 和晴, ...
    2014 年 60 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの輸血依存状態においては,過剰鉄の臓器内沈着により造血障害,肝機能障害など様々な臓器障害をきたす.2008年には,輸血後鉄過剰症の診療ガイドが発表され,輸血後鉄過剰症の診断基準と鉄キレート療法の開始基準が明確に示された.一方,実臨床においては,患者ごとの総赤血球輸血量を正確に把握することは手間がかかり,フェリチンの測定時期や鉄キレート療法の開始のタイミングがまちまちであることが明らかになった.そこで,病院情報システム(HIS)と輸血管理部門システムの連携を図るプログラムを構築した.輸血後鉄過剰症モニタリングプログラムと名付けたこのシステムは,(1)頻回輸血患者において総赤血球輸血量が20単位,あるいは40単位を超えた時点で担当医に輸血量を伝える.(2)同時に,血清フェリチン値などの検査オーダー画面が立ち上がる.(3)フェリチン値の結果は電子カルテの表示システムに実測値として表示する,プログラムである.2012年4月からこのシステムを稼働させ,適切な輸血後鉄過剰症の診断と治療への有用性について検討を行った.
  • 相良 康子, 後藤 信代, 井上 由紀子, 守田 麻衣子, 倉光 球, 大隈 和, 浜口 功, 入田 和男, 清川 博之
    2014 年 60 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    本邦におけるHTLV-1感染者は108万人と推計されており,HTLV-1は成人T細胞性白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)といった重篤な疾患の原因として知られている.日本赤十字社血液センターでの抗HTLV-1抗体の確認検査としては,2012年9月よりウエスタンブロット(WB)法が採用され,検査結果の通知を希望される献血者への通知に際しての判定基準となっている.しかしながら,WB法では判定保留例が多く確定に至らない事例が蓄積されている.今回,我々はWB法における判定保留事例を対象として,複数の方法による抗体検出ならびにHTLV-1プロウイルス(PV)検出を試み,性状解析を行った.その結果,WB法判定保留事例239例中89例(37.2%)でHTLV-1 PVが検出されたが,そのうち4例は化学発光酵素免疫測定(CLEIA)法で,また2例は化学発光免疫測定(CLIA)法で陰性を示した.また,PV陰性150例中19例(12.7%)では複数の抗体検出系で特異抗体が認められたことから,末梢血中のPVが検出限界以下を示すキャリアの存在が示唆され,精確なキャリア確定判定のための抗原同定と検査系確立を要すると考える.
  • 中村 文彦, 森本 武次, 南 睦, 日置 貴美子, 土屋 直道, 津田 勝代, 脇本 理栄子, 古家 美幸, 西田 まゆみ, 大成 明香, ...
    2014 年 60 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    貯血式自己血輸血推進のためには自己血外来の開設が有効である.しかし輸血部のない総合病院で自己血外来を開設することは,事務作業の煩雑さと人的資源と時間の制限から困難である.我々は自己血外来を開設するにあたり,効率的運用を目的として独自のソフトウエア「自己血輸血管理システム」を構築した.このシステムを利用して貯血依頼,計画,貯血実施,製剤登録,使用廃棄登録を行い,さらに説明書,クリニカルパス,製剤ラベルの印刷機能を持たせ,自己血外来の運用を効率的かつ安全に行うことができた.効率的なコンピュータシステムを構築することにより人的資源や時間が制限されていても自己血外来の開設は可能である.
症例報告
  • 山田 麻里江, 山田 尚友, 久保田 寧, 木村 晋也, 東谷 孝徳, 末岡 榮三朗
    2014 年 60 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    反応増強剤を使用した不規則抗体検査では,冷式抗体の持ちこしが原因で間接抗グロブリン試験が陽性となることをしばしば経験する.冷式抗体の持ちこしを回避し,臨床的意義のある不規則抗体であるかの判別に,反応増強剤無添加間接抗グロブリン試験(以下60min-IAT)が利用されている.今回,IgM型抗Mの結合がIgG型抗Mの結合を抑制したため,60min-IATの反応が陰性化した可能性が示唆された症例を経験したので報告する.症例は,初回妊娠時にIgM型抗M,第一子出産後にIgM+IgG型抗Mを検出した.3回目の妊娠時,妊娠中期から出産前日まで2週間毎に抗M抗体価を測定した.妊娠37週で,抗M抗体価が64倍まで上昇したが,希釈系列の1倍,2倍希釈血清での60min-IATは陰性であった.フローサイトメトリー(FCM)の解析では,IgM型抗Mは低温度域より37℃でよく反応する抗体であった.IgM型抗体の結合がIgG型抗体の結合を抑制し,IAT時の抗IgGグロブリン血清との架橋ができなかった可能性が示唆された.本症例のような不規則抗体の場合は,ジチオスレイトール(Dithiothreitol:DTT)処理や2-メルカプトエタノール(2-Mercaptoethanol:2-ME)等によりIgM型抗体を破壊して,臨床的意義のある抗体を検出することが有用と思われる.
活動報告
編集者への手紙
論文記事
  • 平山 文也
    2014 年 60 巻 1 号 p. 46-58
    発行日: 2014/02/28
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    背景と目的:非感染性非溶血性輸血副作用は輸血副作用の中で最も多い.いくつかの検査が樹立され副作用の診断や発症機序の理解に役立っている.本報は,現在利用可能な検査法を日本での状況と対比させながらまとめるものである.材料と方法:主にキーワード入力によりMedlineデータベースから100以上の論文を特定し,調査した.結果:血漿タンパク,血漿タンパク抗体,白血球抗体,血小板抗体,血清N-terminal-pro-brain natriuretic peptide,遺伝子マイクロキメリズムの定量,同定のための検査など多数の検査が行われている.好塩基球活性化試験や好中球活性化試験などのクロスマッチテストも副作用と輸血の因果関係の特定に利用することが可能である.結論:一部の新規検査法は完全にはバリデートされていないが,多くの検査法は臨床診断の助けとなり,副作用と輸血の因果関係の特定や場合によっては副作用発生機序の理解のためにも有用である.
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