日本輸血細胞治療学会誌
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60 巻, 6 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
原著
  • 内藤 祐, 林 宜亨, 秋野 光明, 若本 志乃舞, 藤原 満博, 本間 稚広, 池田 久實, 髙本 滋
    2014 年 60 巻 6 号 p. 577-584
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    日本において,新鮮凍結血漿-LR(FFP-LR)は融解後3時間以内に使用することとされている.欧米のように,融解後の使用期限が延長できれば,新生児医療や緊急性の高い救命救急での使用可能範囲は広くなると考える.我々は各血液凝固因子の活性に加えて,凝固反応の全体像が評価可能なトロンビン生成能の経時変化を検討し,FFP-LR融解後の品質について,保存温度を含めた評価を改めて試みた.その結果,血液凝固因子の中で第VIII因子活性(FVIII)が最も急速かつ大きく低下したが,融解後6時間ではEUの品質管理基準(0.7 IU/ml以上)を満たしていた.第V因子活性は4℃保存,融解後120時間で0.81±0.18 IU/mlであり,第VII因子活性は同様に0.73±0.12 IU/mlであった.フィブリノーゲン濃度は4℃保存で融解後120時間まで著しい変化をみとめなかった.トロンビン生成能は融解後120時間まで変化をみとめなかった.以上の結果から,FFP-LRは,融解後120時間でもFVIIIを除く血液凝固因子の補充に使用可能と示唆された.
  • 宮崎 孔, 松林 圭二, 佐藤 進一郎, 加藤 俊明, 池田 久實, 紀野 修一, 髙本 滋
    2014 年 60 巻 6 号 p. 585-591
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    抗血漿タンパク抗体はアナフィラキシー様の非溶血性輸血副作用の原因となることが報告されている.我々はLuminex systemを用いた抗血漿タンパク抗体検査法を開発し,非溶血性輸血副作用例についてIgA, IgA1, IgA2,ハプトグロビン,α2-マクログロブリン,セルロプラスミン,C4, C9に対する抗体の検出を試みた.さらに特異性の向上を目指してヒトプール血漿を用いた吸収試験を同時に行った.その結果,陽性コントロールである抗IgA抗体,抗IgA2抗体,抗ハプトグロビン抗体,抗セルロプラスミン抗体,抗C4抗体は全てLuminex法で検出でき,ヒトプール血漿による吸収試験でも反応の抑制が確認できた.抗IgA抗体および抗ハプトグロビン抗体を用いた感度試験ではELISA法の64倍の高感度を示した.242検体の抗体スクリーニングでは抗IgA2抗体と抗ハプトグロビン抗体の各1例ずつが検出され,いずれもELISA法では陰性であった.我々の開発したLuminex法による抗血漿タンパク抗体検査法はELISA法に比べ検出感度,特異性が高く,非溶血性副作用の原因解析に適した優れた検査法であると考える.
  • 井上 由紀子, 守田 麻衣子, 後藤 信代, 相良 康子, 入田 和男, 矢持 忠徳, 渡邉 俊樹, 岩永 正子, 浜口 功, 清川 博之
    2014 年 60 巻 6 号 p. 592-599
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    HTLV-1感染陽性と診断され,HTLV-1感染者コホート共同研究班(JSPFAD)に登録された675例を対象として,プロウイルス量(PVL)の定量と抗体検出系の各固相化抗原に対する反応性について解析を行った.無症候性HTLV-1キャリア(AC)604例について,PVLにより5群に分類してPA抗体価を比較したところ,PVL上昇に伴って抗体価は上昇を示すことから,抗体価はATL発症予測因子のひとつであるPVLを反映し,発症高危険群抽出の指標となり得る可能性が示唆された.さらに,AC604例のうち,PVLが検出限界以下の49例(8.1%)全例でHTLV-1構造蛋白質との結合が視認される特異抗体が観察され,長期にわたり複数回採血され,PVLが検出限界値近傍を呈する同一人の事例でも,継続的な抗体産生が認められた.一方,ATL発症者においても,治療によって完全寛解に導入されPVLが検出限界以下を示した場合でも特異抗体は消失しなかった.これらのことからPVを検出できないHTLV-1持続感染者の存在が確認され,核酸検査とともに精度のよい抗体検出系がHTLV-1感染者の判定に必要であることが示された.
  • 田中 朝志, 牧野 茂義, 紀野 修一, 北澤 淳一, 津野 寛和, 佐川 公矯, 高橋 孝喜, 半田 誠
    2014 年 60 巻 6 号 p. 600-608
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    2013年度調査は,日赤より輸血用血液製剤が供給された11,015施設に対して行われ,4,894施設(44.4%)から回答があった.輸血管理体制は2005年から2008年にかけて輸血業務の一元管理等,多くの体制整備が進んだがそれ以降はほぼ横ばいで,300床未満の小規模施設での整備率は相変わらず60%前後と低かった.学会認定・臨床輸血看護師のいる施設の割合は500床以上の大規模施設で32.7%,全体の4.7%であった.輸血管理料の取得施設は2012年の施設条件の変更により大幅に増加し,300床以上の施設での取得率は2011年の49.7%から2013年には88.5%となった.輸血実施体制におけるコンピュータシステムの利用率は,輸血時の携帯端末の使用などで過去5年間徐々に増加傾向がみられた.2013年の病床当たりの各血血液製剤使用量は昨年と比して,赤血球製剤と新鮮凍結血漿でほぼ横ばい,血小板製剤で微増,アルブミン製剤で微減,免疫グロブリン製剤では増加,自己血では減少傾向がみられた.国の使用基準の遵守率は,各血液製剤とも77~80%と大きな差異はみられなかった.今後も小規模施設での輸血管理体制の改善と適正使用の推進を図ることが課題である.
論文記事
  • 尼岸 悦子, 林 智也, 高 陽淑, 松山 宣樹, 石井 博之, 松倉 晴道, 保井 一太, 平山 文也
    2014 年 60 巻 6 号 p. 609-613
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    背景と目的:CD36抗体は,新生児同種免疫性血小板減少症,血小板輸血不応症,非溶血性輸血副作用などの疾患や病態を引き起こす重要な抗体であるが,抗体検出に当たってはゴールドスタンダードといえる検査方法はない.材料と方法:抗原捕捉原理に基づくがモノクローナル抗体を必要とせず,標的細胞としては遺伝子導入細胞を使用する,CD36抗体検出のための新たな検査方法を樹立することを目的とした.また,同法とMAIPA法とを感度と特異性の2点において比較した.結果:今回の新たな検査法は,(1)血小板パネルの替りに遺伝子導入細胞を使用し,(2)HLA抗体の混在に影響を受けず,(3)特異性を高めるために通常用いられるCD36モノクローナル抗体が不要であるという3点の特徴を持つ.また,MAIPA法に比して,特異性,感度共に非常に良好な成績を示した.結論:今回の新たな検査法は,CD36抗体検出において感度,特異性共に優れた検査方法である.
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