日本輸血細胞治療学会誌
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61 巻, 6 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
総説
原著
  • 伊達 英子, 見山 晋一, 川尻 なぎさ, 鈴木 佳寿美, 福家 洋子, 楠見 智子, 田中 光信, 木村 恵子, 高橋 順子, 谷 慶彦
    2015 年 61 巻 6 号 p. 522-528
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/13
    ジャーナル フリー
    Emm抗原は,国際輸血学会(ISBT)において高頻度抗原(901008)に認定されている.これまで海外で8例の抗Emm保有例が報告されているが,抗体保有者に輸血が行われた報告例はなく,自然発生による抗体の可能性が高い.また臨床的意義は不明である.今回,58歳男性患者が緊急に輸血が必要となり,輸血前の検査において抗Leaと高頻度抗原に対する抗体の保有が疑われたが,やむなく交差適合試験不適合のLe(a-)型の赤血球濃厚液-LR(以下RCC)2単位の輸血を行ったところ,輸血終了30分後に血圧低下および血色素尿が出現した.さらに同日RCC 4単位,3日目に2単位を輸血したが,この時は明らかな副作用を認めなかった.しかし,6日目にRCC 2単位の輸血を行ったところ,30ml使用した時点で,嘔吐,赤褐色尿を認め輸血中止となった.精査の結果,抗Emmと同定され,本邦での検出は第1例目となる.本症例はこれまでの報告と同様に輸血歴が確認されておらず,抗Emmは自然抗体の可能性が高く,新たに重篤な急性溶血性輸血副作用の原因となる臨床的に意義のある抗体の可能性が示唆された.
  • 菅野 仁, 牧野 茂義, 北澤 淳一, 田中 朝志, 紀野 修一, 髙橋 孝喜, 半田 誠, 室井 一男
    2015 年 61 巻 6 号 p. 529-538
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/13
    ジャーナル フリー
    2013年に日赤より輸血用血液製剤が供給された実績のある10,802施設のうち,返却もしくは辞退された76施設を除く10,726施設を対象にアンケート調査を実施した.今回の回答施設は5,434施設で回答率は50.66%に達し,過去7年間で最も高い値を示した.日赤からの総供給量との比較で,赤血球製剤供給量の74.50%,血小板製剤の81.47%,そして血漿製剤の77.98%に関して調査が可能であった.輸血管理料取得施設は輸血管理料Iが472施設,IIが1,189施設に増加した.輸血適正使用加算を取得している施設は1,159施設(26.2%)に達した.輸血実施予測患者数は昨年度に比べて,自己血22.3%,同種血8.7%,合計では10%の減少を認めた.製剤別血液製剤使用量では免疫グロブリン製剤のみ増加を認めた.都道府県別の血液製剤・血漿分画製剤の使用状況において,一病床あたりの製剤使用量は各県で大きく異なっており,今後は各都道府県の合同輸血療法委員会との連携を更に強化して,適正輸血の達成状況を調査することが必要と考えられた.
症例報告
  • 冨坂 竜矢, 花岡 伸佳, 峯 梓, 中島 志保, 堀端 容子, 松浪 美佐子, 中村 好伸, 大石 博晃, 園木 孝志
    2015 年 61 巻 6 号 p. 539-545
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.ふらつき,意識消失を主訴に当院夜間救急外来を受診.右胸部皮下の巨大血腫と緊急検査で高度のプロトロンビン時間(PT)延長(81.0秒,PT-INR 6.30)が認められた.入院後,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長(158.2秒)とクロスミキシングテストにより共通系凝固因子インヒビターを疑い,第V因子(FV)活性の低下(0.6%)とFVインヒビター(0.69 BU/ml)の確認により後天性FVインヒビターと診断された.新鮮凍結血漿による凝固因子補充後に出血が一過性に重症化したが,ステロイドパルス療法および血小板輸血などによりPT, APTTは速やかに改善し,血腫も消失したため第51病日に退院となった.その後7年間でFV活性が50%付近まで低下することもあったが,PT, APTTの変動はなく出血傾向の再燃も認められていない.本症例により,重篤な出血を伴う後天性FVインヒビターに対して,大量ステロイド療法と血小板輸血療法の有効性が示唆された.
  • 岡﨑 亮太, 竹谷 健, 兒玉 るみ, 足立 絵里加, 石原 智子, 定方 智美, 金井 理恵, 三島 清司, 長井 篤
    2015 年 61 巻 6 号 p. 546-549
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/13
    ジャーナル フリー
    血液製剤による細菌感染症はまれであるが,致死的な経過をたどることもある重篤な副作用の1つである.患者は8歳男児.急性骨髄性白血病再発に対して非血縁臍帯血移植を行い,移植後5日目に血小板輸血を行った.輸血前にスワーリングを確認したが輸血開始40分後から,発熱,悪寒・戦慄,嘔吐,頭痛が出現し,血圧低下,頻脈,動脈血酸素飽和度低下を認めたため直ちに輸血を中止し,抗菌薬,免疫グロブリン,血管作動薬,ステロイドを投与し,発症3日目に解熱した.輸血後4時間以内に発熱,悪寒,頻脈,血圧低下をきたしており,患者の血液と血小板製剤から血清・遺伝子型ともに一致した大腸菌が同定されたことから,血小板製剤に大腸菌が感染したことによる敗血症性ショックと診断した.我が国で過去10年間に血小板製剤による細菌感染症は8例報告されているが,大腸菌感染の報告はない.しかし,大腸菌感染は海外で死亡例も報告されており,重篤な症状を呈する可能性が高い.したがって,細菌感染を疑う症状が出現した場合,迅速に原因菌を同定し,適切な治療を行う必要があると思われた.
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