日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
Print ISSN : 1881-3011
ISSN-L : 1881-3011
62 巻, 1 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
総説
  • 小林 博人, 菅野 仁
    2016 年 62 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    γδ型T細胞は1980年代に存在が確認された細胞集団であり,感染防御に重要な役割を果たしていると考えられていた.近年様々な腫瘍に対して強い細胞傷害活性を有し,癌免疫療法のエフェクター細胞として注目されている.γδ型T細胞は,細菌由来や合成リン酸化合物に対して,in vivoin vitroで強く反応して増殖し,MHC非拘束性に細胞傷害活性を呈する.また含窒素ビスホスホン酸も,in vivoin vitroでγδ型T細胞を増殖させる.これは,含窒素ビスホスホン酸により細胞内のイソプレノイド経路が阻害され,上流に蓄積したリン酸化合物をγδ型T細胞が認識するためである.これらの知見から,in vivoに直接,含窒素ビスホスホン酸や合成リン酸化合物を投与して,γδ型T細胞を刺激し,さらに活性維持のためインターロイキン2(IL-2)を投与する免疫療法を考案した.一方,in vitroで大量にγδ型T細胞を培養する方法も考案し,細胞療法としての養子免疫療法も確立した.様々な癌腫に対し臨床研究が行われ,本治療方法の有用性や克服すべき問題点が明らかとなった.本総説では,これまでのγδ型T細胞を用いたがん免疫療法の臨床試験を俯瞰し,問題点および展望について論じる.
原著
  • 小川 公代, 戸出 浩之, 碓井 正, 志賀 達哉, 滝原 瞳, 小此木 修一, 岡田 修一, 木村 知恵里, 長谷川 豊, 江連 雅彦, ...
    2016 年 62 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    心臓血管外科の術式別自己血及び同種血輸血施行の現状を調査し,効率的で的確かつ適正な手術血液準備方法について検討した.冠動脈バイパス術(CABG),体外循環不使用冠動脈バイパス術(OPCAB),弁置換・形成術(VALVE),胸部大動脈人工血管置換術(真性瘤)(TAA),同術(急性解離)(AAD),腹部大動脈人工血管置換術(真性瘤)(AAA),同術(破裂)(ruptured-AAA)の術式で施行された2,601例について,手術中の輸血施行状況を調査,同種血輸血の背景因子について検討した.またSBOEとMSBOSによる血液準備の適正性を検証した.全ての術式に共通する同種血使用の背景因子は術中出血量,循環血液量に対する出血量割合,術前ヘモグロビン値であった.効率的な自己血及び同種血準備方法は,①OPCAB, AAAでは回収式のみ,②CABG, VALVEでは回収式と希釈式を併用,③TAAでは回収式,希釈式,貯血式の併用,④AAD, ruptured-AAAでは回収式及びMSBOSに基づく同種血準備を基本とし,更にいずれの術式においても術前貧血のある症例ではSBOEに基づく同種血準備を加味する必要があると考えられた.
  • 細川 美香, 中山 小太郎純友, 櫻木 美基子, 中尾 まゆみ, 森川 珠世, 清川 知子, 青地 寛, 永峰 啓丞, 和田 浩志, 丸橋 ...
    2016 年 62 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    ABO血液型不適合生体肝移植では,通常の臓器移植に見られる細胞性免疫拒絶に加えて液性免疫拒絶が問題となる.本研究では,当院でABO血液型不適合成人生体肝移植を施行した17例を対象に,リツキシマブ投与群(9例),非投与群(8例)における抗A,抗B抗体価の推移とFFPの使用状況を比較検討した.投与群においてはさらに,リツキシマブを移植1週間前に投与した投与群-I(3例)と原則移植2週間前に投与した投与群-II(6例)に分けサブ解析を行った.移植に伴い抗体価が移植前よりリバウンドを示した症例は非投与例で8例中5例認めたが,投与群ではそのような症例は認めなかった.移植後1カ月間で抗体価が再上昇したため血漿交換(Plasma exchange:PE)を施行した症例は非投与群で8例中4例,投与群-Iで3例中2例存在し,FFPの平均使用単位数は,非投与群 122単位,投与群-I 187単位であったが,投与群-IIではPE施行例はなく,FFPの使用はゼロであった.以上の結果より,移植2週間前にリツキシマブを投与することで,より効果的に抗A,抗B抗体価のリバウンドを抑制すること,移植後のPE回数を減少させFFPの使用量の減少に寄与することが示唆された.
  • 原口 京子, 奧山 美樹, 田野崎 隆二, 國友 由紀子, 吉田 茂久, 上村 知恵, 府川 正儀, 伊藤 みゆき, 森 毅彦, 大橋 一輝 ...
    2016 年 62 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    末梢血幹細胞移植において,採取物のCD34陽性細胞数を正確に測定することが必須であるが,その方法は国内では標準化されておらず,施設間差の存在が懸念される.そこで我々は,末梢血幹細胞採取物検体をCD34陽性細胞数測定に熟練した東京都内5施設に搬送し,採取当日に測定した全6施設の結果を比較した.CV(coefficient of variation)は25%以内と比較的低く,高い相関が認められたが,特に1施設の測定値は有意に低かった.国際的に標準的な測定法とされるISHAGE-Single platform法をおこなっているか否かによる差は明らかではなかったが,常に低い値を示した施設は検体調整に問題があると考えられた.CD34陽性細胞測定に熟練していても,客観的な評価が必要で,検体調整法を含めた測定法の標準化と外部精度評価が重要であることがあらためて示された.
活動報告
  • 玉井 佳子, 田中 一人, 北澤 淳一, 岡本 道孝, 兎内 謙始, 村上 知教, 阿部 泰文, 柴崎 至, 立花 直樹, 小山内 崇将, ...
    2016 年 62 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2016/02/29
    公開日: 2016/02/24
    ジャーナル フリー
    【背景】輸血医療は重要であるが,臨床医は卒後教育を受ける機会が少ない.適正で安全な輸血医療,patient-based transfusion実践のためには,臨床医が適切な輸血知識を有することが重要である.平成26年1月~平成27年8月の期間の青森県における「県規模」で施行した卒後医師教育活動状況を報告する.【対象と主な活動内容】1.大学病院では「医療安全ハンドブック説明会」の一部として輸血の安全使用を重視した講演を行った.2.各医療機関へ出向しての講演は県内12施設で開催した.3.研修医・若手医師に対する講義(輸血医療の現状,副作用と初期対応,適正使用)を3市で(弘前市はプライマリ・ケア セミナー)開催した.【結果】1.大学病院説明会後の小テスト正答率は95%以上であった.2.講演会に参加した医師は,輸血療法委員会の定期開催,製剤の一元管理,アルブミン使用の見直し,院内輸血マニュアル改訂,学会認定・臨床輸血看護師受験推進等,自施設での輸血医療体制改善に尽力した.3.研修医への講義は,個人の知識向上に加えて所属医療機関内での安全で適正な輸血医療の浸透に貢献することがわかった.【まとめ】今後も医療機関の規模,対象医師に即した卒後輸血教育活動を強化したい.
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