日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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ISSN-L : 1881-3011
62 巻, 5 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
原著
  • 安藤 萌, 中島 文明, 鎌田 裕美, 中村 淳子, 清水 まり恵, 永井 正, 佐竹 正博, 田所 憲治
    2016 年 62 巻 5 号 p. 587-591
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    抗NakaはCD36欠損により産生される抗体であり,重篤な輸血副作用に関与する.CD36欠損の遺伝的要因として,日本人ではexon 4の268C>Tが最も高頻度である.過去のTRALI関連輸血副作用調査では2,497例の原因製剤中から3例の高力価抗Naka保有者を見いだしたが,欠損要因は不明であった.本検討ではCD36欠損の遺伝的要因と抗体産生に何らかの関連性が見いだせるか,抗Naka陽性献血者と無作為抽出した献血者を対象にCD36欠損となる要因の調査を行った.

    今回調べた抗Naka陽性献血者は268C>Tではなく329_330delACまたは949insAが欠損要因であった.無作為抽出の献血者からは108例のCD36欠損者が見つかり,欠損要因として268C>Tが最も高頻度であったが,抗体は検出されなかった.TRALI関連抗Naka陽性献血者に健常男性が含まれることから,抗Naka産生の要因は輸血や妊娠だけではないと考えられ,現状では血液製剤原料から抗体陽性血液を排除する輸血副作用対策は困難である.欠損要因から抗Naka保有者を特定するには268C>T以外の変異にも着目する必要がある.

  • 小野寺 秀一, 金子 祐次, 渕崎 晶弘, 一杉 芽美, 栗原 勝彦, 百瀬 俊也, 松﨑 浩史, 中島 一格
    2016 年 62 巻 5 号 p. 592-600
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    血小板製剤(PC)による輸血副作用防止にはPCの洗浄が有用だが,通常,これには大型遠心機を用いたPC洗浄(遠心法)が行われる.一方,血液透析や血漿交換など医療機関における血液浄化療法では,中空糸膜を用いた血球と血漿の分離が一般的である.

    そこで我々は市販の膜型血漿分離器(分離器)EC-4A10の中空糸外側にPCを充填し,洗浄液BRS-Aにより血漿成分を除去する洗浄血小板調製法(膜法)を開発した.本研究では膜法と遠心法で調製した洗浄血小板の品質を比較した.

    血小板回収率は,膜法95.8%と遠心法90.4%で膜法が有意に高かった.血漿蛋白除去率は,膜法,遠心法の順にアルブミンは93.2%,97.2%,IgGは92.1%,96.2%,IgAは78.0%,96.2%,IgMは7.3%,96.5%,総蛋白は85.8%,95.7%と概ね遠心法が有意に高かった.一方,遠心法では調製に伴ってCD62P陽性率の上昇とHSR低下がみられたが,膜法でこれらはなく,調製後48 hまで良好な品質を維持した.

    膜法は血小板回収率の高さと血小板活性化の少なさにおいて,遠心法はIgMなどの分子量が大きな物質の蛋白除去能において優れていた.また,膜法はどこの施設でも行える利便性もあり,洗浄血小板の調製法として意義のある方法と思われた.

  • 山﨑 久義, 伊佐 和美, 小笠原 健一, 渡邉 聖司, 迫田 岩根, 入田 和男, 清川 博之
    2016 年 62 巻 5 号 p. 601-605
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    ABO血液型亜型で日本人に最も多く認められるBm型とABm型は,B遺伝子イントロン1の部分欠失により生じることが報告された.この欠失は5.8kbにおよび,GATA結合部位を有する転写エンハンサー領域が含まれる.一方,GATA>GAGAの点変異で生じたと考えられるBm型も1例報告されているが,この変異と唾液中の型物質との関係は不明である.

    今回,合計49例のBm型とABm型を解析した結果,5.8kbの欠失がない1例を認めた.エンハンサー領域を調べた結果,2つのGATAモチーフのうち3’側のGATAモチーフにGATA>GAGA変異が認められた.発端者は,オモテ検査O型,ウラ検査B型で,抗B試薬による吸着解離試験でB抗原が確認された.血漿中のB型糖転移酵素活性はほぼ対照のB型と同程度で,唾液中にはB型とH型物質が認められ,Lewis血液型はLe(a-b+)であった.以上の結果よりエンハンサー領域にGATA>GAGA変異を生じた本邦初の分泌型Bmと判定した.この変異は,赤血球B抗原の発現を低下させるが,唾液中のB型物質には影響しないことが確認された.

短報
  • 中桐 逸博, 岡井 美樹, 仲井 富久江, 文屋 涼子, 松橋 佳子, 田坂 大象, 通山 薫, 和田 秀穂
    2016 年 62 巻 5 号 p. 606-609
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    2008年4月から輸血療法適正使用委員会主導による院内のアルブミン使用の適正化を目指し,アルブミン製剤使用状況の管理体制の確立と院内アルブミン製剤の集約化,さらに高張アルブミンでは25%から20%製剤への移行の取り組みを行い7年が経過したので,その成果について検討した.2008年度の総アルブミン使用量は45,535gで,その内訳は,5%アルブミンが17,550g,20%アルブミンが7,610g,25%アルブミンが20,375gであった.高張アルブミンについては25%アルブミンが72.8%(20,375g)を占めていたが,2014年度は20%アルブミンが77.8%(16,190g)を占めるようになり,総アルブミン量は35,027.5gであった.2008年度と比べ総アルブミン量を10,507.5g(23%)減少させ得た.7年間に渡る輸血療法適正使用委員会主導によるアルブミン使用の適正化の取り組みの結果,高張アルブミン使用の削減に繋がった.アルブミン使用適正化には病院全体の協力体制が必要不可欠である.

症例報告
  • 髙野 希美, 川畑 絹代, 安田 広康, 大原 喜裕, 藁谷 朋子, 佐野 秀樹, 菊田 敦, 大戸 斉
    2016 年 62 巻 5 号 p. 610-614
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/09/30
    ジャーナル フリー

    再生不良性貧血治療中に重症感染症を併発し,保有する抗Jkaと不適合である赤血球を含む顆粒球を輸血したが,溶血反応が観察されなかった10歳代女児症例を経験した.患者は抗Jka(力価1倍)を保有していたが,免疫抑制療法中に敗血症と多臓器不全に陥ったため,やむを得ず不適合赤血球を含む同種顆粒球輸血を実施した.ドナーとして選定された近親者は,輸血前のドナー検査によりJk(a+b-)でJka不適合であることが判明した.しかし,患者の容態が急速に悪化し,時間的猶予がなく,ABO型一致,適合率約30%であるJk(a-)ドナーを探し出すことが出来なかったため,Jk(a+)赤血球(計160ml)を含む顆粒球輸血を施行した.顆粒球輸血後,直接抗グロブリン試験は陽転せず,抗Jkaも上昇しなかった.患者の生化学検査および輸血関連検査から,不適合Jk(a+)赤血球の溶血は観察されなかった.

活動報告
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