日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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63 巻, 2 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
原著
  • 山口 瞳, 杉本 達哉, 前沢 由美子, 櫻井 朋美, 小山 暁史, 中塩屋 千絵, 板垣 浩行, 武井 美恵子, 土田 文子, 小林 信昌 ...
    2017 年 63 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル フリー

    非特異的な反応を示す赤血球自己抗体の存在により,交差適合試験や不規則抗体検査など種々の検査が干渉を受けることは一般的に知られている.

    今回我々は,赤血球自己抗体保有症例13症例に対して実施された赤血球輸血について解析を行った.

    赤血球輸血を実施した13症例の疾患はAIHAが9例,非AIHAが4例であり,検出された赤血球自己抗体は温式赤血球自己抗体が12例,冷式赤血球自己抗体が1例だった.また,赤血球自己抗体が患者血液型に特異性を認めたものが1例(自己抗c),赤血球自己抗体と同種抗体の混在を認めたものが1例(抗c,抗E,抗Dia,抗M)であった.

    13例中6例で輸血後のHb値上昇率は50%以上の上昇を認め,また全例で重篤な溶血所見は認められなかった(LD,AST,T-Bil,I-Bil).

    赤血球自己抗体保有患者への赤血球輸血は,適切な検査を実施して同種抗体の有無を確認すること,また,赤血球輸血後の同種抗体産生防止のため主要な血液型抗原を患者血液型と一致させた製剤を選択することが重要である.

  • 山本 哲, 荒木 あゆみ, 算用子 裕美, 小澤 敏史, 金井 ひろみ, 池田 久實, 高本 滋
    2017 年 63 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル フリー

    採血副作用における血管迷走神経反応(VVR)は,その低減化に向けて様々な防止策が講じられている.VVRの発症機転はよく解明されていないが,不安や痛み等の精神的な要因,循環血液量の減少による生理学的要因などが推定されている.今回我々は循環血液量の減少を伴わない採血前検査で発生するVVRに焦点をあて,精神的な要因により発症するVVRの特徴について検討した.本採血前のVVRを2群(検査前群と検査後群)に分類し,本採血以降のVVRと比較検討した.その結果,本採血前のVVRでは,体格が小柄で比較的やせ気味の10代の若年男性が多く含まれ,女性では3人に1人は体重50kg未満という特徴が見られた.これらのVVRでは重症例も多くあり軽視すべきではなく,採血基準を体重50kg以上に制限することで女性のVVRは減少すると推定される.

  • 佐々木 佳奈, 鈴木 由美, 伊佐 和美, 長部 隆広, 大河内 直子, 東 史啓, 内川 誠, 小笠原 健一, 佐竹 正博
    2017 年 63 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル フリー

    DNAによる赤血球型遺伝子タイピングは血清学的検査を補う有用な方法である.しかし,人種による多型性の相違もあるため,日本人を対象とした赤血球型遺伝子検査法の開発および検討を行った.

    日本人献血者5,036人を対象とし,Rh(RhCcEe),MNS,Duffy,Kidd,Diego,Dombrock式血液型について検討した.血液型判定に重要な既知の一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)についてLiquid bead array system(Luminex)による血液型判定を行い,血清学的検査による表現型と比較した.不一致が認められた検体については,直接シークエンス法により塩基配列を解析した.

    日本人5,036例の解析を行った結果,表現型との一致率はDuffyとDiegoでは100%,Rh,MNS,Kiddについてもそれぞれ99.8%以上を示した.なお,不一致となった主な原因は変異型やnull遺伝子によるものであった.本法は網羅的なタイピングが可能であり,輸血後患者の血液型判定や直接クームス陽性例,抗体の入手が困難な血液型など,血清学的検査では判定の難しい例にも有用である.

  • 高橋 典子, 田野崎 隆二, 酒井 紫緒, 岸野 光司, 梶原 道子, 伊藤 経夫, 池田 和彦, 原口 京子, 渡邊 直英, 上田 恭典, ...
    2017 年 63 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル フリー

    非血縁者間骨髄移植においてドナー骨髄全有核細胞(total nucleated cells,TNC)数や生細胞率は重要な情報であるが,その測定方法は施設間で統一されていない.TNC数および生細胞率測定に関して,各施設の方法の調査および施設間差の有無について検討した.日本輸血・細胞治療学会細胞治療委員会委員の所属施設10施設で行われた非血縁者間同種骨髄移植のために搬送された骨髄液について,容量と有核細胞数濃度の測定方法,生細胞率測定の有無および方法,採取施設で測定されたTNC数,移植施設で測定し直したTNC数,抗凝固剤に関するアンケートを行い,計797件のデータが回収された.採取施設と移植施設でTNC数算出に至る方法全てが一致している施設はなかった.

    採取施設と移植施設双方のデータが揃っている512件についてTNC数の2群間比較を行ったところ,算出されたTNC数は採取施設と移植施設間で高い相関はあるものの,最大約3倍の施設間差がある症例もあった.この原因はTNC数測定方法が施設ごとに様々であるためと考えられ,TNC数測定方法標準化の必要性について検討が必要である.

  • 原口 京子, 奧山 美樹, 高橋 典子, 河原 好絵, 酒井 紫緒, 上村 知恵, 渡邊 直英, 長村―井上 登紀子, 高梨 美乃子, 上田 ...
    2017 年 63 巻 2 号 p. 126-134
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル フリー

    CD34陽性細胞(CD34)数は測定法により差が生じるため,欧米ではガイドラインが策定され外部精度評価(EQA)が定期的に実施されているが,国内では測定法も統一されておらず,全国の施設間差の実態は不明であった.今回,日本造血細胞移植学会と日本骨髄バンクの協力を得て,国際的なEQAと同様に,既知の濃度のCD34を含む固定血球サンプルを配布し測定結果を集計した.対象は自施設でCD34数測定を行っている115施設で,サンプルは市販の陽性コントロール血球(濃度の異なる2種類)を使用した.測定値の変動係数(CV)はそれぞれ18.7%と24.7%で,外れ値の施設が散見された.各施設にはそれぞれの測定値の標準偏差指標による評価を返送した.測定法に関するアンケート調査も行い,single/dual platform法がそれぞれ93/22施設,ISHAGEゲート/非ISHAGEゲートが100/15施設と国際的なガイドラインに準拠した施設が大半であり,これらの施設ではよりバラツキが少なかった.海外では外部精度評価を繰り返すことにより施設間差が減少したと報告されており,調査の継続が必要と考えられた.

論文記事
  • 山本 晃士, 山口 充, 澤野 誠, 松田 真輝, 阿南 昌弘, 井口 浩一, 杉山 悟
    2017 年 63 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2017/04/20
    公開日: 2017/05/11
    ジャーナル フリー

    背景と目的:外傷患者の急性期には凝固障害を認めることが多く,その程度は患者の生命予後を左右する.当院の高度救命救急センターでは,外傷患者の凝固障害,特に高度な低フィブリノゲン血症をすみやかに改善させる目的で,積極的にフィブリノゲン製剤の投与を行ってきた.その治療の実際と,同製剤の投与群と非投与群間で行った輸血量および生命予後の比較検討(症例対照研究)結果を報告する.方法:フィブリノゲン製剤投与の有無および投与基準の違いによって症例を3群に分けた.A群,フィブリノゲン製剤未使用;B群,受診時のフィブリノゲン値と外傷重症度を見た上でフィブリノゲン製剤3gを投与;C群,患者搬送前の情報(外傷重症度,出血状況)から判断し,搬送時ただちにフィブリノゲン製剤3gを投与.外傷重症度スコア≧26の症例における輸血量および生命予後について3群間で比較検討を行った.結果:3群間の輸血量には有意差を認めなかった.受診30日後の総生存率(搬送時の心肺停止症例を除く)はC群で有意に高く(p<0.05),搬送後48時間以内の急性期死亡率はC群で有意に低かった(p=0.005).さらに,きわめて重篤とされる外傷重症度スコア≧41群での死亡率も,C群で有意に低かった(p=0.02).結論:重症外傷症例においては,フィブリノゲン製剤の先制投与が急性期死亡率の低下に貢献し,結果として高い生存退院率をもたらす可能性が示唆された.

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