日本輸血細胞治療学会誌
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最新号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
総説
  • 豊嶋 崇徳
    2018 年 64 巻 6 号 p. 675-680
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    造血幹細胞移植はその黎明期から,幹細胞ソースの拡大,非血縁ドナーバンクの設立,移植前処置法の多様化が進んだ発展期を経て成熟してきた.今,移植以外の治療法の進歩と社会情勢の変化により,造血幹細胞移植はさらなる変遷を遂げつつある.最近,血液疾患に対する病態の理解が進んだ結果,数多くの分子標的薬の上市が相次いでいる.これによって造血幹細胞移植のポジショニングが変わりつつある.イマチニブの上市により慢性骨髄性白血病の移植適応が大幅に減少したのはエポックメイキングであったが,これほどの劇的な効果をもたらす薬剤は現時点では期待できない.従って,造血幹細胞移植は依然として治癒を目指した治療法としての位置づけはゆるぎない.むしろ新規薬剤を移植へのブリッジングや移植後の維持療法として使用することで,移植の効果を高め,総合的に治療成績の向上が期待される.このような総合的な治療の進歩は,従来のような高い移植関連死亡率を許容しない.QOLの低下の原因となる重症GVHDを許容しない.安全で高いQOLをもたらす移植法の開発が求められている.一方,わが国では少子高齢化がすすみ,その影響でHLA適合ドナーが得られる確率や非血縁ドナー,臍帯血バンクの拡充が困難な時代となった.ドナー不足を解消するHLA半合致移植の重要性が増してくるものと考えられる.移植適応,移植タイミング,移植前後の治療,ドナーサーチ,GVHD予防,治療法,今までの考え方を変える時期に差し掛かっている.

  • 冨山 佳昭
    2018 年 64 巻 6 号 p. 681-687
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    輸血医学において重要な血小板抗体として,1)Human Platelet Antigen(HPA)抗体,2)イソ抗体,3)HLA抗体,が挙げられる.これらの抗体は,妊娠や輸血により誘導される抗体である.HPA抗体は,血小板膜糖蛋白(GP)の多型により,イソ抗体は,血小板膜GPの欠損(例えばCD36欠損)により誘導される抗体である.これらの抗体は,血小板輸血不応状態や新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)を引き起こす.

    血小板輸血不応状態の原因としては,発熱,出血,感染などの非免疫性原因に起因する場合と,HLA抗体など免疫性原因に起因する場合がある.TRAP試験での解析では,両者を輸血後1時間後のCCI値で鑑別することは困難であるとの成績である.NAITの主要なHPA抗体は,欧米ではHPA-1a抗体であるが,本邦ではHPA-4b抗体が最も多く,人種によってNAITの原因となるHPA抗体は異なっている.上記の抗体に加え,特発性血小板減少性紫斑病で検出される血小板自己抗体も留意する必要がある.

    本稿では,これら血小板抗体の検出法および抗体の臨床的意義につき概説する.

ガイドライン
原著
  • 算用子 裕美, 荒木 あゆみ, 金井 ひろみ, 山本 哲, 菊池 博也, 塚田 克史, 牟禮 一秀
    2018 年 64 巻 6 号 p. 718-725
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    血管迷走神経反応(VVR)は,最も頻度の高い採血副作用として知られているが,未だにその効果的な防止策が開発されていない.特に成分献血では効果的な介入時期の検討が行われておらず,VVR発症予知が鍵を握っていると推定される.

    VVR発症の可能性の高い血小板成分献血者を対象として,レーザー血流計による末梢血流量の変動から,発症予知の可能性を検討した.2015年2月から8月までの半年間に,354件のデータを収集し,30件のVVR事例について解析した.VVRの発報水準を求めるため,血流量減少率(DBF)と心拍数減少率(DHR)を計算し,DBFについて3レベルで予知から発症までの時間を推定,その精度を求めた.

    30件のVVR事例における最大血流量減少率(max DBF)の平均値は64.7±13.7%で,非VVR事例の25.6±11.7%より有意に大きな値を示した.max DBFを45%とした時の判別感度は93.3%,正確度は94.4%だった.発報水準をDBF45%とした時,25件のVVR事例を含む44件で警報され,発症例の診断までの平均時間は4.04±4.35分で,警報のVVR発症に対する正確度は56.8%だった.

    レーザー血流計による採血中モニタリングにより,リアルタイムに計算されるDBFによって,発症前介入が可能な予知ができることが示された.

  • 小池 敏靖, 福田 香苗, 平山 順一, 柴 雅之, 永井 正, 佐竹 正博
    2018 年 64 巻 6 号 p. 726-732
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    冷蔵保存した血小板製剤(PC)は,凝集塊が発生し血小板濃度が減少するが,血漿をPAS(Platelet Additive Solution)に置換したPC(PAS-PC)では長期間維持されることが報告されている.また,冷蔵PCを37℃に加温することで血小板の粘着に関与するCD42bが減少することが報告されているが,PAS-PCでの挙動は不明であった.本検討では,T-PAS+を用いた血漿置換率65%のPAS-PCの冷蔵(4℃)静置保存および冷蔵後加温時の品質を保存21日目まで解析した.

    室温(22℃)振とう保存したPAS-PCの有効期限内のものと比較し,冷蔵保存したPAS-PCでは,CD62P陽性率とAnnexin-V結合率が有意に増加したが,血小板濃度は14日間有意に減少せず,血小板凝集能も21日間高値を維持した.さらに,冷蔵保存後に加温したPAS-PCとPCを比較した結果,PAS-PCの方がCD42bとRistocetin凝集能がより維持された(14日間).

    以上の結果から,冷蔵保存したPAS-PCは若干活性化するものの,14日間程度冷蔵保存できる可能性が示唆された.

  • 鎌倉 丈紘, 田中 朝志, 保坂 繭子, 嘉成 孝志, 関戸 啓子, 鈴木 実, 伊藤 利一
    2018 年 64 巻 6 号 p. 733-741
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    輸血関連循環過負荷Transfusion associated circulatory overload(以下TACO)は輸血に関連する心不全状態であり,TACOの発症要因は患者ごとに異なる.今回,当院で遭遇したTACO症例を含め,TACO診断における容量負荷所見の一つである血圧上昇に着目し臨床経過の特徴について解析した.血圧上昇症例では,TACOの危険因子を有する患者は中等症~重症の高血圧を示す傾向がみられた.TACO症例では,80歳以上の高齢で心疾患を有している患者の血圧上昇は軽度にとどまり,後に低血圧となる傾向がみられた.また,輸血開始前より頻脈傾向を示した患者が多く,このような患者では特に注意深い経過観察が重要であることが示唆された.さらには肺炎や敗血症を罹患している患者では血圧上昇もしくは脈拍上昇に加え発症時に発熱がみられていた点から,発熱も注意すべき徴候と考えられた.発症時間は輸血開始30分後から5時間30分後と範囲が広く,危険因子を有する患者に対しては,輸血副作用の管理を綿密かつ6時間以上は行うべきと考えられた.

  • 伊藤 誠, 早瀬 英子, 渡邊 千秋, 上床 貴代, 魚住 諒, 林 泰弘, 早坂 光司, 茂木 祐子, 加畑 馨, 高橋 秀一郎, 宮下 ...
    2018 年 64 巻 6 号 p. 742-751
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    背景:Spectra Optiaは,自動インターフェイス管理システムにより,簡便な操作での末梢血幹細胞採取を可能にした.今回我々は末梢血幹細胞採取において,Spectra OptiaのMNCモード(MNC群)とCMNCモード(CMNC群)の採取産物のCD34陽性細胞数およびCD34陽性細胞採取効率(採取効率)を後方視的に比較検討した.

    対象:2013年8月から2018年2月までに当院で末梢血幹細胞採取を行った233例(自家103例,同種130例)を対象とした.

    結果:自家末梢血幹細胞採取における採取産物のCD34陽性細胞数および採取効率は,両群において有意差を認めなかった.同種末梢血幹細胞採取においてMNC群と比較してCMNC群の採取産物のCD34陽性細胞数は有意に高値であり,採取効率も有意に良好であった.同種末梢血幹細胞採取の採取効率に影響する因子として,末梢血血小板数と末梢血ヘモグロビン値が挙げられた.

    結語:自家末梢血幹細胞採取においては両群ともに良好な成績であったが,同種末梢血幹細胞採取においては,CMNCモードを用いることでより効率的な採取を行える可能性が示唆された.

  • 菅野 仁, 岡本 好雄, 北澤 淳一, 田中 朝志, 髙橋 孝喜, 半田 誠, 室井 一男, 牧野 茂義
    2018 年 64 巻 6 号 p. 752-760
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    2017年の輸血用血液製剤・血漿分画製剤の使用実態および輸血管理状況を調査した.回答率は50.75%であった.総血液製剤量は日本赤十字社から供給された輸血用血液製剤の80.2%となった.同種血輸血実施予測患者数は974,963名となり,三年続けて100万人を下回った.2012年以降の一病床当たりの製剤使用量推移を検討したところ,赤血球製剤は7.7%増加,血小板製剤は5.6%減少,血漿製剤は9.6%減少,アルブミン製剤は12.4%減少し,免疫グロブリン製剤は31.5%増加した.300床以上の施設では輸血管理料IまたはIIを取得している施設が94.0%に達した.また,適正輸血使用加算を取得している施設の割合は31.2%であった.輸血管理体制に関する整備状況では,輸血業務の一元管理,輸血責任医師の任命,輸血担当検査技師の配置,輸血検査の24時間体制,輸血療法委員会の設置の五つの要件が300床以上の施設の90%以上で満たされていた.輸血前の患者検体を保存している施設が300床以上で99%に達していることから,輸血後感染症検査の実施意義の見直しが必要と考えられた.

症例報告
  • 齋藤 洋, 橋本 大樹, 松宮 寛子, 朝野 拓史, 岩城 豊, 小舘 英明, 木村 敬子, 常松 梨紗, 吉井 一樹, 池田 研, 西 信 ...
    2018 年 64 巻 6 号 p. 761-765
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    腹腔鏡下子宮筋腫核出術において,術中に自己血(貯血式および回収式)輸血施行後,血管外漏出による皮膚炎をきたした1例を経験した.

    皮膚炎発生後,慎重な状況確認と対症療法を施行し,患者の不安,不快に対応して,術後62日目で完治に至った.一般的に安全と考えられている自己血輸血であっても,特に急速輸血の際には血管外漏出による皮膚炎の発生に関し注意を要する.

  • 島田 恒幸, 山本 晃士
    2018 年 64 巻 6 号 p. 766-772
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    凝固因子製剤の在宅自己注射療法の普及により,成人血友病患者は健常男性とほぼ同様の平均寿命となってきた.それにともない,慢性腎臓病などの腎疾患を含む生活習慣病を指摘される血友病患者も増えつつある.今回タンパク尿を有する中等症成人血友病A患者に対して腎生検を行い,その後腎周囲に血腫を併発した症例を経験した.症例は27歳男性で,1歳時に中等症血友病Aと診断されている.数年前より蛋白尿を指摘されていた.左腎臓に対する生検前に,FVIII:Cピーク値を60~70目標としてルリトコグアルファ2,000IUを投与した.生検1時間後にも同製剤2,000IUの追加補充を行った.十分量の遺伝子組み換え型標準第VIII因子製剤による補充療法を行って腎生検を施行したが,生検1日目に腎周囲に巨大血腫を併発した.生検1日目から44日目までオクトコグアルファ2,000IUの投与を行い,血腫は縮小した.その後,ルリオクトコグアルファのpopulation PK(my PK-FIT)を行い,同製剤の投与量を1,500IU/回,週3回で出血予防目的に定期補充療法を開始した.補充療法を開始後2年間で出血症状は認めなかった.出血の十分なコントロールのためには症例毎にPKなどを行う必要があると考えられた.

  • 石橋 美由紀, 長谷川 智子, 山下 香奈子, 石井 謙一郎, 伊藤 幸子, 堀口 新悟, 岡田 亜由美, 飛内 英里, 影山 有美子, 古 ...
    2018 年 64 巻 6 号 p. 773-777
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    低頻度抗原に対する抗体である抗Kpcによる輸血副作用の報告例は国内外において見当たらない.今回我々は抗Kpcを有した患者に対し,対応抗原陽性の輸血が行なわれ,著しい副作用を呈した症例を経験したので報告する.患者は50歳男性で27年来の慢性腎臓病であり,移植歴・輸血歴を有していた.透析時にRBC-LR4単位の輸血が行なわれ,翌日に血圧及びSpO2の低下,発熱とともに生化学検査で溶血を示唆する所見を認めた.院内及び東京都赤十字血液センターで精査の結果,患者血清中に抗Kpc,輸血された2本の製剤のうち1本からKpc抗原が検出された.一般に,低頻度抗原に対する抗体の多くは37℃より低温で反応するだけで臨床的意義は疑わしいとされているが,新生児溶血性貧血の報告もある.以上より,低頻度抗原に対する抗体による輸血副作用は極めてまれとはいえ,必ずしも軽視すべきではないと考える.

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