目的:消化器領域の腫瘍を担うエホバの証人患者へのPatient Blood Management(以下,PBMと略す)の治療戦略に基づいて周術期管理を行った外科的切除患者の治療成績を提示し,エホバの証人の手術に対する指針を提案する.
対象と方法:1996年7月から2017年6月の間で消化器外科領域(消化管,肝胆膵,腹膜・後腹膜)の腫瘍を担うエホバの証人に対し切除手術を企図した217例を対象とし,周術期管理方法と手術成績を後方視的に検討した.
結果:疾患臓器は食道4例,胃51例,結腸直腸74例,肝臓37例,胆道16例,膵臓25例と他臓器10例を含んだ.受診時貧血41例(平均Hb値8.7g/dl)に対し増血療法後,貧血の有意な改善を認め(術前値10.9g/dl),全例に予定術式を施行した.術中自己血輸血施行率は48%で,高難度肝胆膵外科手術の多くで,希釈式と回収式自己血輸血の併施を適応した.術後,鉄剤静注と適宜アルブミン製剤を投与し全身管理した.術後合併症は3.1%で,縫合不全や膵液漏に対し,ドレナージの徹底によって重篤化を防止した.
結語:PBMに基づく無輸血手術および周術期治療は,貧血症例や高侵襲手術を要するエホバの証人患者の外科治療を可能にし,予後向上に貢献できた.
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