本研究では,医療機関における災害時等の輸血用血液製剤や血漿分画製剤供給不足への対策の実態を明らかにする事を目的として,全国の災害拠点医療機関を対象として血液製剤の運用ならびに院内輸血療法の危機管理に関する調査を実施した.
回答は,対象の730施設中373施設から得られた(回答率 51.1%).災害対策マニュアルを整備している356医療機関のうち血液製剤の運用や検査体制に関する事項の整備率は130施設(36.5%)であった.その内,製剤供給に係るリスク分類とこれに基づく院内需要の制御といった手順が確立した医療機関は少数であった.更にこのような対策を整備する主体となり得る院内の担当者(部署)の権限について明確にしている施設は,上記130施設で回答のあった102施設中44施設(43.1%)に留まった.製剤搬送困難時の代替策策定や関連機関との連携体制構築や訓練等の実施はごく少数であった.
血液製剤供給に係る危機に対して,医療機関における危機管理体制を構築するために,標準的なBusiness Continuity Plan(BCP)の策定および関連医療機関と血液センター,血漿分画製剤供給業者,行政との連携の構築が急務である.
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