抗CD38モノクローナル抗体薬(ダラツムマブ,イサツキシマブ)投与患者検体を用いた不規則抗体スクリーニングでは,赤血球試薬表面上にもCD38抗原が発現していることから汎反応性に偽陽性を呈する.
全自動輸血検査装置IH-1000(BIO-RAD社)を用いてダラツムマブ投与患者検体の不規則抗体スクリーニングと直接抗グロブリン試験を実施した後,測定当日の他検体の検査では偽陽性反応は出現しなかったが,翌日の不規則抗体スクリーニングにおいて複数の偽陽性反応が出現した.再現性を検証したところ,同様の反応が得られた.
原因としては,サンプルプローブを介したキャリーオーバーにより装置内の赤血球試薬に患者検体中のダラツムマブが混入したと考えられるが,発生する条件等についてはさらなる検討が必要である.ダラツムマブ皮下注製剤では静注製剤と異なり投与量が固定量であることから,低体重患者における血中濃度上昇から本事象が起こりやすくなった可能性も考えられる.他の全自動検査装置でも同様の事象が発生する可能性は否定できず,抗CD38抗体薬治療中の患者検体を全自動輸血検査装置で検査する場合には注意が必要である.
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