日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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ISSN-L : 1881-3011
68 巻, 3 号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
原著
  • 大河内 直子, 松橋 美佳, 山崎 翔, 小林 洋紀, 礪波 薫, 宮城 徹, 柏瀬 貢一, 相原 忠広, 脇谷 勇次, 津野 寛和, 岡崎 ...
    2022 年 68 巻 3 号 p. 399-407
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
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    電子付録

    【背景】HLA抗体による血小板輸血不応症例には,HLA適合血小板(PC-HLA)が推奨される.ドナーの選定には,HLA-A座,B座の適合性を確認するが,HLA-C座の適合性は優先されない.本研究では,HLA-C座の適合性による輸血効果を解析した.【方法】関東甲信越ブロックにおいてHLA-C抗体による交差適合試験陽性例の輸血効果を解析した.また,東京大学医学部附属病院においてHLA抗体を保有する血小板輸血不応患者1例に対してPC-HLA(66本),適合血小板(19本)およびランダムの血小板製剤(7本)について,輸血効果を評価し,後追いの交差適合試験を実施した.【結果】交差適合試験陽性57件(陽性率0.25%)のうちHLA-C抗体によるものは27件(47.4%)であり,Cw8抗体が55.0%を占めていた.HLA-C座不一致製剤の75%は有効であった.東大01症例はCw15抗体陽性かつCw10抗体陽性であったが,HLA-C座不一致製剤6本(75%)は有効であった.【結論】HLA-C抗体が原因となる交差適合試験陽性例が存在するが,HLA-C抗体の多くは血小板輸血効果に影響しないことが確認できた.

  • 横畑 和紀, 山本 浩之, 川本 覚, 重岡 美穂, 品川 明子, 沖 智子, 岩川 弘幸, 草刈 正, 村上 文一
    2022 年 68 巻 3 号 p. 408-411
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
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    【緒言】献血での血管迷走神経反応(以下VVR)回復に1時間以上を要した症例の特徴を検討した.

    【対象症例】2020年3月より遡ってVVR発症から献血会場退場までに要した時間が1時間未満の症例80例(未満例),1時間以上の症例50例(以上例).

    【方法】(1)男女比,全血採血と成分採血の比率,(2)下肢挙上,坐位・半坐位,退出という標準的経過例における,下肢挙上時間,坐位・半坐位から献血会場退場までの時間を比較した.また(3)再度の下肢挙上など標準的経過を逸脱した症例(逸脱例),(4)点滴施行例の特徴を副作用記録から調査した.

    【結果】(1)全血採血では有意に女性の以上例が多かったが(p=0.017),成分採血では男女比に有意差は認めなかった(p=0.28).(2)坐位・半坐位から献血会場退場までの時間が以上例で2倍以上に延長していた.(3)逸脱例では坐位・半坐位後気分不良が目立った.(4)点滴施行例ではVVR発症時血圧が非点滴施行例に比べて有意に低かった(p=0.035).主たる症状は痙攣3例,嘔吐1例,腹痛1例,坐位・半坐位後気分不良3例,歩行後気分不良2例であった.

    【考察】VVRの回復に長時間かかった症例の特徴を示した.これらの知見を治療方針の決定に役立てたい.

  • 細川 美香, 永峰 啓丞, 青地 寛, 中山 小太郎純友, 櫻木 美基子, 森川 珠世, 中尾 まゆみ, 清川 知子, 加藤 恒, 冨山 佳 ...
    2022 年 68 巻 3 号 p. 412-421
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
    ジャーナル フリー

    抗CD38モノクローナル抗体(MoAb)製剤であるダラツムマブおよびイサツキシマブにより間接抗グロブリン試験は陽性となるが,直接抗グロブリン試験(DAT)に関しては不明な点が多い.我々はこれらの製剤が投与された多発性骨髄腫患者17例におけるDATを検討した.Tube法では15例が投与前陰性,Day1に9例が陽性化したが,Day6~8には再度陰性化した.CAT法では投与前に8例が陽性であり,Day1に15例が陽性となったが,Day6~8には陽性化した7例が全例陰性化した.患者赤血球のIgG結合量は16例でDay1に上昇し,Day6~8には前値近くまで復した.またCD38発現はDay1で約70%,Day6~8には約90%低下したことから,CD38の経時的な発現低下によりDay1で陽性化したDATは,Day6~8で陰性化すると考えられた.またヘモグロビン値は初回投与1日後で8.7%減少した.低濃度DTT処理赤血球の検討から,Day6~8にDAT陽性であった症例の多くは非特異的IgG結合によると思われた.多発性骨髄腫患者に対する抗CD38 MoAb製剤投与後のDATにはCD38発現の変化と非特異的IgG結合が影響するためその解釈を慎重に行う必要がある.

症例報告
  • 鈴木 伸明, 兼松 毅, 岸本 磨由子, 鈴木 奈瑠子, 岡本 修一, 田村 彰吾, 清井 仁, 松下 正
    2022 年 68 巻 3 号 p. 422-427
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
    ジャーナル フリー

    血液凝固第IX因子(FIX)濃縮製剤に対する重度なアレルギーに対し,減感作療法が有効であった血友病B 2例を報告する.【症例1】9カ月男児.重症.遺伝子組換え血液凝固第IX因子(rFIX)製剤の定期補充開始後,10回投与目にアナフィラキシーを発症.【症例2】55歳男性.中等症.出血症状に対して,通算4回目の血漿由来血液凝固第IX因子濃縮製剤を投与したところ,アナフィラキシーを発症.以上の2症例に対し,rFIXによる減感作療法を実施した.【結果】2症例とも減感作療法により,FIXに対するアレルギーが消失した.減感作療法中はアレルギー反応を始めとする有害事象を認めなかった.【考察】症例2は中等症であり,アレルギーの発症リスクが低い症例であったが,アナフィラキシーを発症し,中等症でも注意が必要であると考えられた.2症例共にアナフィラキシー発症前後に感度以下の弱力価インヒビターの存在が疑われたことから,インヒビターの発症に注意することはアナフィラキシーの発症予測につながる可能性が示唆された.減感作療法の治療プロトコールについては最適化されておらず,更なる検討が必要であると考えられた.

  • 石川 怜依奈, 丸橋 隆行, 須佐 梢, 西本 奈津美, 岩原 かなえ, 後藤 秀樹, 石川 治, 早川 輝, 高橋 遥一郎, 佐野 利恵, ...
    2022 年 68 巻 3 号 p. 428-434
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
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    症例は20代男性.造血器疾患の既往歴や輸血歴,造血幹細胞移植歴はなし.当院で壊疽性膿皮症と診断し,デブリードマンのため緊急手術となった.血算では軽度の貧血と血小板減少が見られた.ABO血液型検査でA,B両抗原が減弱し部分凝集を示したことや,壊疽性膿皮症には造血器疾患を合併することから精査を行なった結果,トリソミー8を伴うMyelodysplastic syndrome with multilineage dysplasia(MDS-MLD)の診断となった.

    血清学的検査やフローサイトメトリー,遺伝子検査から,遺伝的亜型や混合キメラの可能性は低く,造血器疾患による血液型抗原の減弱によって部分凝集を示したことが示唆された.本症例では,ABO血液型検査において部分凝集がみられたことや原疾患の診断が,血算に異常が出る前にMDSの診断にいたる一助になった.

    A,B両抗原の減弱を同時に見た場合は,遺伝的亜型の可能性は低く,本例のように背景に造血器疾患がある可能性も念頭に入れる必要がある.

  • 由比 直樹, 今田 和典
    2022 年 68 巻 3 号 p. 435-438
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
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    症例は27歳女性,妊娠8週.小児期に下痢を伴わない溶血性尿毒症症候群(HUS)症状の既往があり,叔父が非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を疑われていることからaHUSの可能性が考えられ当科に紹介された.遺伝子解析の結果,補体C3の病的遺伝子変異(I1157T)が検出され,小児期の症状はaHUSと考えられた.妊娠31週1日で入院,妊娠37週2日に選択的帝王切開術を施行した.分娩直後はaHUS発症なく経過したが,分娩8カ月後に血尿を認めた.aHUSによる症状と診断し,血漿交換療法は行わずeculizumabを投与し速やかに改善した.その後は発症なく経過している.本症例ではC3機能獲得型変異であるI1157T変異を同定されaHUSの診断となった.本邦ではC3遺伝子異常が最も多く,I1157T変異の頻度が高いと考えられている.遺伝子解析より早期に診断したため血漿療法を回避した治療を行うことができた.

活動報告
論文記事
  • 松浦 秀哲, 杉浦 縁, 松野 貴洋, 頓宮 由芽, 白木 真理, 加藤 千秋, 石原 慶子, 深見 晴恵, 丹羽 玲子, 林 恵美, 松下 ...
    2022 年 68 巻 3 号 p. 449-456
    発行日: 2022/06/24
    公開日: 2022/07/13
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    ABO不適合生体腎移植(ABOi-LKT)において抗A/B抗体価を測定することは治療選択および予後評価に有用である.抗A/B抗体価の測定は試験管法(TT)で行われるが,測定者間差や施設間差が問題とされている.カラム遠心凝集法による抗体価自動分析法(auto-CAT)は試験管法の欠点を補う方法として期待されている.我々は,ABOi-LKT症例を対象に,auto-CATとTTを用いて抗A/B抗体価を測定し,auto-CATの有用性を多施設共同研究で検討した.共同研究4施設でABOi-LKT35症例,合計111サンプルの測定を行った.2法の相関係数は0.9以上であり,一致率および臨床的許容一致率は60.4%,88.3%であった.Auto-CATは,周術期の治療などの影響を受けず,IgG抗体価は時系列変化でみるとTTとauto-CATで平行して変化していた.Auto-CATはIgG抗A/B抗体価測定においてTTと同等であり,ABOi-LKT症例の抗A/B抗体価測定に適している.

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