緒言:以前より当院では末梢血幹細胞採取(PBSCH)前後で末梢血CD34細胞数を測定しており,両方のサンプルをPBSCH後に同時に測定していた.2021年以降,ドナー負担軽減や業務効率化を目的として,直前の末梢血CD34細胞数をPBSCH中に測定し,結果に基づいて血液処理量を調整するようになった.本研究では同方法の採用前後で細胞治療業務への影響を検証した.
方法:当院で血縁者間PBSCHを実施したドナーを対象とし,採取日数が1日間(1-day harvest cohort)と2日間(2-day harvest cohort)の症例に分けて解析した.PBSCH前の末梢血CD34陽性細胞数をPBSCH終了後に測定した群(2021年8月以前)をPrevious sub-cohort,PBSCH中に測定した群(2021年8月以降)をCurrent sub-cohortと定義した.主要評価項目は処理時間とCD34陽性細胞輸注率とした.
結果:1-day harvest cohortでは,Current sub-cohort(88例)はPrevious sub-cohort(124例)に比べて平均処理時間が短く(Previous:180分[SD,27.8]vs. Current:151分[SD,45.1];P < 0.01),平均CD34陽性細胞輸注率が高かった(Previous:78.1%[SD,25.7]vs. Current:87.6%[SD,21.1];P < 0.01).採取物が全量使用されず凍結処理を要した症例に関しては,Current sub-cohortがPrevious sub-cohortより有意に少なかった(Current:25.0%[22例]vs. Previous:39.5%[49例];P = 0.038).
結論:PBSCH前の末梢血CD34陽性細胞数を指標に血液処理量を調整することで,ドナー負担軽減や業務効率化につながる可能性が示唆された.
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