日本輸血細胞治療学会誌
Online ISSN : 1883-0625
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ISSN-L : 1881-3011
71 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総説
  • ―疫学と治療の現状を踏まえた感染告知のあり方―
    照屋 勝治
    2025 年71 巻3 号 p. 505-511
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    日本における最近の疫学動向とともに,HIV感染症の病態理解および治療の進歩について概説した.HIV感染症は従来考えられていたような単なる細胞性免疫不全疾患ではなく,慢性炎症性疾患として心血管疾患や脳血管疾患のリスクを上昇させる事が分かってきており,ART(抗HIV治療)によりこれを減少できる事が判明している.加えて,免疫状態に関わらずHIV患者全例にARTを導入する事で,患者の生命予後を改善させるのみならず,二次感染者を激減させる事ができる事も分かってきた.しかしながら,現在でも早期診断・治療の点では全く改善が見られておらず,全医療機関における積極的なHIV検査の実施が求められている.患者の高齢化に伴う各種合併疾患に対して,全診療科がHIV患者の診療に当たる医療体制の構築も急務の課題となっている.

ガイドライン
原著
  • ―回答者負担の視点から―
    佐藤 智彦, 安村 敏, 藤原 慎一郎, 名倉 豊, 昆 雅士, 横濱 章彦, 北澤 淳一, 山本 晃士, 米村 雄士, 牧野 茂義, 田中 ...
    2025 年71 巻3 号 p. 523-531
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    現行の血液製剤使用実態調査は,国内の適正使用推進に重要な役割を果たしてきたが,その包括的側面から,質問数の多さを含む回答者負担の大きさが懸念されてきた.最新の令和5年度分を含む計15回の調査の質問数と内容を分析した.平均質問数は298.7問で,その数は増加傾向にあった.内容面では,当初の調査目的である「院内輸血管理体制」や「製剤使用量」の質問に,各種ガイドラインに基づく「適正使用状況」や病院外・へき地・離島などの「状況別の輸血状況」の質問が経時的に加えられていた.使用実態の質問では,製剤種・診療科別に複数データを入力する「複数の質問への回答と同等の労力を要する質問」も多く含まれていた.質問数と回答率の年次推移に明らかな関連は見られなかった.最新調査での自由意見(参加施設の6%が回答)の約6割は否定的内容で,その多くが調査の形式面,特に回答者負担の大きさに言及していた.国内の輸血実施施設の多くは小規模施設であるがその回答率は大規模施設より低いままである.本分析より,回答者負担に配慮して調査を効率化していくことが,特に小規模施設での管理体制整備状況の把握・改善につながる可能性が示唆された.

  • ―VVR発症率に基づく検討―
    中川 智裕, 嶋 裕子, 櫻井 嘉彦
    2025 年71 巻3 号 p. 532-538
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    献血関連VVR発生のリスク因子として,若年,女性,初回献血などのドナーの内因性因子があげられる一方で,近年は気象条件などの外因性因子も注目されている.すでにわれわれは,気象条件が献血時のVVR発生に影響を及ぼしうることを報告したが,VVR発生日と非発生日というVVR発症者の有無による気象条件を比較したものであり,発症者数の多寡を考慮していなかったため,今回,VVRの発症率を用いて2020年4月からの3年間を解析した.気象検討項目については,地方気象台公開データに基づき,当日の値および7日加重移動平均値を用いた.気象条件は,傾向性検定としてJonckheere-Terpstra検定および4群のKruskal-Wallis検定を行った.前者の検討では,当日の値で気温日較差と平均風速が,7日加重移動平均値では気温日較差が,それぞれ有意にVVR発症に関連することが示された.既報と同様の結果が得られ,気象条件がVVR発症に関与する可能性が示唆された.VVRの発症率を用いれば,VVR非発生日が少ないために発生日と非発生日での気象条件の比較が困難な大規模センターにおいても解析が可能になると思われる.

  • 熊谷 優, 中嶋 萌夏, 坂本 悠斗, 野村 勇介, 石原 慶子, 村上 和代
    2025 年71 巻3 号 p. 539-544
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    ABO不適合腎移植の患者に対して血漿交換などの治療選択や術前術後の経過観察の評価のため抗A/B抗体価測定が行われる.我々は試験管法(TT)とカラム凝集法(CAT)におけるABOi-LKT患者5名の抗A/B抗体価の経時的推移を比較し,CATの時系列変化における有用性を検討した.時系列変化におけるCATの抗体価推移はTTとほぼ同等の推移を示した.また,脱感作療法実施後の抗体価は低下しており,この変化はTTで得られたものと一致していた.TTからCATへ測定法を変更した後も同等の抗体価モニタリングができる可能性が示唆されたことから,抗A/B抗体価の時系列変化の観察にCATは有用であると考える.

症例報告
  • 佐々木 哲也, 伊藤 正一, 荻山 佳子, 井上 優花子, 後藤 健治, 坂口 俊, 土屋 繁国, 鳥谷 由貴子, 外舘 玄一朗, 松本 敦 ...
    2025 年71 巻3 号 p. 545-550
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    低頻度抗原であるKg抗原に対する抗体は新生児溶血性疾患(HDN)を引き起こす重要な抗体として知られている.抗KgによるHDN症例は現在日本でのみ確認されており,報告例も少ない.今回我々は,低頻度抗原に対する抗体である抗KgによるHDN症例を経験したので報告する.症例は開業産婦人科で出生した男児.患児は血液型O型RhD陽性,不規則抗体検査陰性(自己対照のみ陽性),直接抗グロブリン試験(DAT)陽性であり,赤血球抗体解離液を使用した不規則抗体検査は陰性であった.HDNの原因は低頻度抗原に対する抗体と推定し,合成血調製後,交換輸血が実施された.東北ブロック血液センターに患児と両親の精査を依頼し,母親と患児血漿と患児赤血球抗体解離液から抗Kgが同定された.本症例のようにABO不適合や主な血液型抗原に対する不規則抗体が原因のHDNが否定されるも患児DATが陽性の場合,低頻度抗原に対する抗体の関与を考慮する.

  • 水野 友靖, 西尾 美津留, 井上 誠也, 川島 大輝, 上田 格弘, 藤田 智洋, 宮木 祐輝
    2025 年71 巻3 号 p. 551-556
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    寒冷凝集素症は自己免疫性溶血性貧血の一病型に分類され,鑑別には,特異抗血清を用いた直接抗グロブリン試験や寒冷凝集素価の測定がある.人工心肺を使用する待機的手術症例において,術前検査で高力価寒冷凝集素が判明.寒冷凝集素症と診断され,寒冷凝集素温度作動域(Thermal amplitude:TA)測定試験を実施した症例を経験したので報告する.患者は60歳男性,現病歴は狭心症,僧帽弁閉鎖不全症.術前検査で高力価寒冷凝集素が判明し,TA測定試験が依頼された.寒冷凝集素価は,5℃ 2,048倍,15℃ 256倍,21℃ 16倍,24℃ 16倍,28℃ 4倍,30℃ 4倍,35℃ 2倍であった.TA測定試験の結果から,35℃と比較して2管差以上の寒冷凝集素価の上昇を認めた24℃以下で凝集が悪化すると判断し,心筋保護液は30℃以上とした.手術は完遂されたが人工心肺離脱が困難であり,ECMO補助下でICUに入室.術後42日目,肺化膿症などの合併症により永眠された.TA測定試験は,in vitroで赤血球凝集が起こる作動温度を確認することにより臨床判断の一助となりうる.TA測定試験は臨床判断に直結する検査であり,臨床検査の付加価値を高め,臨床貢献に繋がる.

活動報告
  • 森 惠, 久保 政之, 霧下 由美子, 酒井 和哉, 松本 雅則
    2025 年71 巻3 号 p. 557-562
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    【背景】在宅輸血の問題点および望まれる支援策を明らかにすることを目的に,奈良県における在宅輸血の実態を調査した.【方法】奈良県下の在宅療養支援病院,在宅療養支援診療所160施設を対象とし,アンケート調査を行った.【結果】87施設(54.4%)から回答が得られた.現在,在宅輸血を実施している施設はなく,過去に実施した施設12施設においても半数は患者数1名であった.経験のない施設の中で,今後,患者や他施設からの希望があれば実施するとした施設は20%に留まり,その理由として設備や人材の不足が挙げられた.在宅輸血実施が困難な理由としては,交差適合試験が最も多く,促進する要素としては,患者・家族の希望,急変時の連携が指摘された.【結論】今回の調査を通して,奈良県における在宅輸血の実態およびその課題が明らかとなった.輸血関連検査や緊急時の対応に関する病診連携の構築など今後の支援策につなげていきたい.

  • 濱野 京子, 丹羽 紀実, 菱田 理恵, 加藤 陽乃, 中井 尚一, 橋本 誠司, 城 友泰, 新井 康之, 長尾 美紀
    2025 年71 巻3 号 p. 563-570
    発行日: 2025/06/25
    公開日: 2025/07/16
    ジャーナル フリー

    組織適合性検査(HLA検査)は,検査技術の発展に加えて,HLA情報が必要な高度先進医療が拡大していることから,臨床現場での重要性が増している.今回,輸血検査管理システムを基に,新規にHLA検査データ管理システムの構築を行った.新システム構築によって,検体受付から結果報告までを一つのシステムで一括して実施することが可能となった.これにより,①検査結果の迅速な返却,②ヒューマンエラーリスクの低減,③データ集計の効率化,④検査進捗の可視化が得られ,診療への貢献と検査業務の効率化につながった.また,新システムでは,輸血検査とHLA検査を集約したことによって,輸血歴,妊娠歴,ABO不適合移植歴などの臨床情報と,輸血検査と抗HLA抗体保有状況を含めたHLA検査の経時的な結果を包括的に確認でき,最適な血液製剤の選択や検査計画の運用効率化をもたらすことができた.

温故知新
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