日本輸血細胞治療学会誌
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71 巻, 4 号
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ガイドライン
原著
  • 松本 真実, 小堺 萌, 髙橋 秀行, 松林 圭二, 佐竹 正博, 谷 慶彦
    2025 年71 巻4 号 p. 629-634
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    血小板製剤からA群溶血性レンサ球菌Streptococcus pyogenes(S. pyogenes)が検出され,世界的なS. pyogenes感染症の流行から,原因調査のため献血者の聞き取りと採血および皮膚,口腔咽頭からスワブ検体採取を行った.血液は培養と白血球からreal-time PCRによるStreptococcus属DNA検出を行い,スワブ検体は培養後に菌種同定した.菌株の病原性についてはemm型を解析した.

    献血者は献血6日前に左拇趾の陥入爪による化膿で皮膚科を受診し,抗生剤を数日服用していた.献血後33日目の血液培養は陰性であったが,PCRによりStreptococcus属DNAが検出され菌血症であったと推測された.スワブからは複数のStreptococcus属が同定されたがS. pyogenesは検出されなかった.

    問診基準では抗生剤服用から3日以内は採血不可であるが,申告がなく化膿病巣の存在を確認できなかった.日本赤十字社では問診に加え,白血球除去や初流血除去など複数細菌対策を講じているが,さらに細菌スクリーニング導入を検討しており血液製剤の安全性向上が期待される.

  • 小林 悠, 坂田 秀勝, 飯田 樹里, 飛澤 里奈, 中野 学, 岸本 信一, 森下 勝哉, 生田 克哉, 鳥本 悦宏
    2025 年71 巻4 号 p. 635-642
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    【背景】日本赤十字社では,ALT検査の製品合否判定の基準を101IU/lとしているが,不合格率が年々上昇しており,肥満や脂質代謝異常との関連が示唆されている.今回,各種血清脂質を追加測定し,ALT検査不合格に影響する因子を調査した.

    【方法】北海道の献血者から,ALT不合格(≧101IU/l)の1,192名および合格(<101IU/l)の1,029名を抽出した.両群のBMIを算出し,血清脂質(LDL-C,small dense LDL-C(sdLDL-C))を測定した.また,ALT合否に係る因子を多変量解析により調査した.

    【結果】不合格群の80%がBMI 25kg/m2以上であり,合格群の28%より有意に高かった.不合格群はLDL-CとsdLDL-Cが高く,特にsdLDL-Cでは平均1.8倍の差を認めた.また,ALT検査不合格に影響する因子はBMI(≧25kg/m2)およびsdLDL-C(≧35mg/dl)であった.

    【結語】多変量解析により,肥満およびsdLDL-Cの増加を伴う脂質代謝異常がALT検査不合格に影響することが明らかとなった.

  • 坊池 義浩, 飛田 規, 渡邊 千秋, 伊藤 誠, 加藤 裕一, 梶田 幸夫, 水島 智子, 土居 靖和, 鷹野 壽代, 杉本 健, 河野 ...
    2025 年71 巻4 号 p. 643-651
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    輸血機能評価認定(I&A)制度は,2016年1月から確認事項が整理され新制度として継続された.I&A施設数は微増傾向で視察員数は現状維持である.そこで,I&A受審施設と視察員を増やすために,全国のI&A認定168施設を分析した.I&A施設の病院機能評価の取得割合は93.5%で,輸血管理料の取得割合は100%であった.I&A施設における各認定資格者の在籍割合は,日本輸血・細胞治療学会認定医(以下,認定医)が60.7%,認定輸血検査技師(以下,認定技師)が89.3%,学会認定・臨床輸血看護師(以下,認定看護師)が73.8%であった.いずれの認定資格者も在籍しないI&A施設は4.2%であった.各視察員の在籍割合は,認定医が25.0%,認定技師が57.7%,認定看護師が16.7%であった.いずれの視察員も在籍しないI&A施設は31.5%であった.分析結果では病院機能評価と輸血管理料の取得割合が高かったことから,これらの取得施設は今後I&A受審施設として重要な対象になり得ると考えられた.また,I&A施設では各認定資格者及び各視察員の在籍割合が高く,I&Aの受審を推進していく上で重要な存在になると考えられた.

  • 北村 亘, 藤井 敬子, 高木 尚江, 益田 八千代, 岡田 亜由美, 浅野 尚美, 小郷 博昭, 高橋 孝英, 池内 一廣, 下埜 城嗣, ...
    2025 年71 巻4 号 p. 652-661
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    同種造血幹細胞移植において,末梢血幹細胞採取(peripheral blood stem cell harvest,PBSCH)は骨髄採取と比べドナーに対する負担が軽く,近年本邦でも広く用いられてきている.しかし,採取効率には個人差があり,ドナー負担軽減のための最適な手技の確立が重要である.当院では,2016年よりPBSCH開始直前の末梢血CD34陽性(CD34+)細胞数を測定し,必要な処理血液量(processing blood volume,PBV)を個別に調整する事で手技の最適化を図っている.2016年1月から2025年1月にかけて,当院で同種PBSCHを施行したドナー97例(血縁,47例,非血縁,50例)を対象に,有効性と安全性を検討した.PBSCH開始後中央値133分(範囲,74~167)で調整PBVを算出し,42例(43.3%)のドナーは当初設定したPBV(ドナー体重あたり200ml)を減量できた.その結果,95/97例(97.9%)のドナーは1日で目標CD34+細胞収量を採取できた.至適なPBSCH手技の確立は,ドナー負担の軽減に寄与する可能性が示唆された.

  • 黒澤 修兵, 原口 京子, 庄子 美咲, 鈴木 里菜, 石和田 萌笑, 本間 柚乃香, 河合 芙由子, 渡邉 玲, 飯村 稜子, 石橋 小百 ...
    2025 年71 巻4 号 p. 662-671
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    本研究では当院で最近10年間に使用された免疫グロブリン製剤の使用量を調査した.年間使用量は2014年度5,330gから2020年度11,645gまで上昇し,2023年度7,972gであった.診療科は全年度で血液内科が最多を占めた.病名は低ガンマグロブリン血症または重症感染症(53,437g),Guillain-Barre症候群または慢性炎症性脱髄性多発神経炎(16,970g)の順に多かった.同種造血幹細胞移植の症例に対する使用は2018年度5,935gと最も多かったが,2023年度2,430gまで減少した.同種移植症例のうち急性移植片対宿主病(GVHD),慢性GVHDを合併した症例は,2014年度47%(うち免疫グロブリン製剤を使用した症例39%),35%(26%)であったが,2022年度36%(19%),7%(3%)まで減少した.GVHDの治療進歩による二次性低ガンマグロブリン血症の減少が,当院の使用量減少に影響したと推測された.免疫グロブリン製剤の適応疾患は多岐に及ぶが,関連する治療法の変化を把握することも適正使用推進に重要と考えられる.

活動報告
  • 吉田 雅弥, 𠮷丸 希歩, 渡辺 琴乃, 平木 幹久, 西山 陽香, 福岡 星夜, 古閑 有咲, 瀧口 大輔, 山崎 卓, 佐々木 妙子, ...
    2025 年71 巻4 号 p. 672-676
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    大量出血が予想される外傷患者に対して,当院は病院前情報から事前に決めた新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP):血小板濃縮製剤(platelet concentrates:PC):赤血球(red blood cell:RBC)比率で先制的に投与する大量輸血プロトコル(massive transfusion protocol:MTP)を必要に応じて発動している.平日の昼間に限り,輸血製剤を救命救急センター(ER)の輸血専用保冷庫に配置し,輸血専従技師が輸血チームの一員として臨床支援を行うことで,輸血製剤の廃棄件数削減および輸血開始までの時間短縮に繋がった.しかし,時間外対応には課題が残り,ERの輸血専用保冷庫に輸血製剤を常備した場合の管理や非輸血専従技師の再教育が挙げられる.迅速かつ安全な輸血医療の提供を目指し,更なる運用改善に努めたい.

  • ―多様な実践例を多職種で議論する「場づくり」の工夫の意義―
    猪越 ひろむ, 佐藤 智彦, 中野 恵美, 佐藤 孝子, 谷口 千賀子, 石井 修, 杉本 達哉, 鳥越 美洋, 野﨑 昭人, 金子 誠
    2025 年71 巻4 号 p. 677-682
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,第159回関東甲信越支部例会の看護師関連シンポジウム「輸血・細胞治療における看護師のタスクシフト・シェアの実際」の開催報告である.ここでは,4名の看護師が手術室,造血細胞移植,透析,I&A視察における実践例を紹介し,臨床検査技師と輸血部医師が指定討論者としてコメント・質問をした.総合討論では,タスクシフト・シェアの課題やメリット,デメリットについて意見交換がされた.こうした多職種による議論が深まった背景には,Webでの打ち合わせやメールでの情報共有といった事前準備とそのファシリテーションがあり,それらが関係者全員の事前のテーマ理解の深化に寄与したことが示唆された.本報告は,輸血・細胞治療領域における看護師のタスクシフト・シェアの多様性を示すとともに,多職種連携による安全で質の高い輸血・細胞治療を推進するためのシンポジウム開催のあり方を考える機会を提供する点で意義があると考えられた.

  • ―10年で1/10を達成―
    林 涼子, 浜之上 聡, 神保 京子, 滝原 悠太, 安藤 和美, 栁町 昌克
    2025 年71 巻4 号 p. 683-688
    発行日: 2025/08/25
    公開日: 2025/09/08
    ジャーナル フリー

    当院は小児専門総合病院であり,ハイリスク妊婦対応等の必要性から,赤血球製剤の廃棄率が15%程度と高い状態が続いていた.この数値は廃棄率全国平均を大きく上回っていたが,安全を最優先と考慮した結果,やむを得ないものと判断されてきた.しかし2014年に当院で発生した異型輸血事故を契機に,院内の輸血療法に対する関心が高まり,職種間の協力体制が構築されたことで廃棄血削減にも取り組むことができた.様々な対策を重ねた結果,赤血球製剤廃棄率は2013年の17.44%から2022年には1.11%にまで減少した.現状に妥協せず,1つ1つの課題を解決し,様々な職種との協力を実現できたことが成果に繋がったと考えられる.

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