日本輸血細胞治療学会誌
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最新号
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Picture in Transfusion Medicine & Cell Therapy
総説
  • 池辺 詠美
    2026 年72 巻1 号 p. 3-10
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    輸血医療の安全性向上と適正使用の推進には,献血から輸血に至る一連の過程(Transfusion Chain)を対象としたヘモビジランス体制の確立が極めて重要である.ヘモビジランスには,Transfusion Chain全体の監視に加え,有害事象の報告・調査・分析,再発防止の実施が含まれる.日本では前半の献血・製造情報は日本赤十字社が一元管理する一方,後半の管理・輸血情報は医療機関ごとに管理され恒常的には結合されていない.そこで,輸血製剤の製造番号をキーに両者の情報を結合し,トレーサビリティを確保するシステムJ-HeST(Japanese hemovigilance scheme with secured traceability)が構築され,2022年より稼働している.さらに2024年には,J-HeSTを基盤とする「血液製剤安全監視体制整備事業」が進められ,全ての輸血用血液製剤を対象に採血から使用状況,副反応までを電子的に一元管理する体制が整備されつつある.今後は,J-HeSTを活用した解析結果を輸血政策や安全対策に還元するとともに,臨床現場での教育や研究での活用へ繋げ,持続可能な体制として発展が期待される.

ガイドライン
原著
  • ―血液製剤使用実態調査報告から―
    横濱 章彦, 昆 雅士, 佐藤 智彦, 安村 敏, 藤原 慎一郎, 名倉 豊, 北澤 淳一, 山本 晃士, 米村 雄士, 牧野 茂義, 田中 ...
    2026 年72 巻1 号 p. 40-47
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    2023年度⾎液製剤使⽤実態調査が実施され,同種⾎液製剤供給施設のうち52.6%から回答が得られた.使⽤量の捕捉率は80.5%であった.2018~23年度の6年間の⾎液製剤の使⽤状況と廃棄率の経年変化を解析した.

    ⾚⾎球製剤は200床以上の施設で使用量が増加した.廃棄率は,2022~23年度で1.4%から0.7%へと⼤幅に低下した.病床数の多い(病床規模が⼤きい)施設では廃棄率の低下が顕著であったが,0~19床の施設では変化がなかった.「有効期限切れ」件数の減少から,有効期限延⻑が⼀因と考えられた.

    ⾎⼩板製剤では,⾼単位製剤の使⽤量が減少した.地域差が⼤きく,使⽤量の多い北海道,関東甲信越,東海,近畿で経年的に減少していた.廃棄率は全体として約0.3%で推移していた.

    ⾎漿製剤では,主に500床以上の施設でFFP120製剤の使⽤量が減少した.廃棄率は2019年度1.9%から1.4%へと低下した.「有効期限切れ」件数の減少には,2018年9 ⽉以降の解凍後投与期限24時間への延⻑が関連している可能性がある.⾚⾎球製剤と異なり,⼩規模施設で廃棄率低下が見られた.

  • 岩﨑 潤子, 中村 仁美, 相良 康子, 白上 篤, 折田 茂, 熊川 みどり, 松﨑 浩史
    2026 年72 巻1 号 p. 48-54
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    血液事業では献血前にヘモグロビン(Hb)値を測定するが,Hb値が低下する前に潜在性鉄欠乏を把握できれば,献血者のHb低値による不採血を防止できる.網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)は,網赤血球のヘモグロビン量を反映し,直近2日程度の鉄利用を示すとともに,鉄補充にも速やかに反応する鋭敏な鉄指標である.我々は,1年以内に全血献血歴のない成分献血希望者523名を対象に,献血会場の血球分析装置で測定可能な新たな鉄指標であるRET-Heの有用性を検討した.RET-Heは鉄欠乏の進行に伴い有意に低下した.RET-Heの血清フェリチン(sFer)<12ng/mlの検出能はAUC0.85,カットオフ値31.6pg,感度71.6%,特異度86.5%と良好であった.RET-He≦31.6pgは,Hbは採血基準内だがsFer<12ng/mlの献血者の67.3%を検出できた.男性ではRET-He値により献血回数に有意差を認めたが,女性では献血回数に差は無く,月経など献血以外の要因による鉄欠乏が示唆された.RET-Heは献血会場で測定可能なため,頻回成分献血者や女性献血者の鉄欠乏防止対策に有用と思われる.

  • ~大学と血液センターの協働による献血教育実践の有用性~
    影山 有美子, 細羽 梨花, 吉澤 辰一, 古川 悠太, 古屋 真由, 徳田 健太郎, 早川 修司, 山下 香奈子, 坂本 茉直美, 外池 ...
    2026 年72 巻1 号 p. 55-65
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    目的:本報告では,卒前輸血教育の充実を目指し,大学と血液センターの協働による小グループ制輸血実習の献血教育効果を検証した.

    方法:東京慈恵会医科大学医学部4年生108名を対象に,2024年度に参加型に改変した輸血実習を実施した.学内では輸血療法の基礎,献血に関する講義,採血・輸血検査の実技を行い,学外では血液製剤製造所見学と献血ルームでの献血体験または献血者リクルート活動を実施した.実習参加状況を集計するとともに,実習後アンケートから,実習満足度および学生の学びの内容を質的に分析した.

    結果:学内実習に96名(89%),学外実習に92名(85%)が参加した.献血希望者は51名(学内実習参加者の53%)で,実際に献血した32名(学内/学外実習参加者の33/35%)のうち29名(91%)が初回献血者であった.実習満足度は平均4.5(5段階評価)と高く,学生は血液製剤の調整プロセスや献血の重要性について深い学びを示した.

    考察:今回の参加型輸血実習は,学生の献血に対する意識変化と実際の献血行動を促進し,卒前輸血教育の充実と持続可能な血液供給システム構築に寄与する重要な実践であると考えられた.

短報
  • ―サイホン法―
    西村 滋子, 田中 麻衣, 藤田 浩
    2026 年72 巻1 号 p. 66-69
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    従来の遠心法によるクリオ作製には大型冷却遠心機が必要であり,施設の制約がある.そこで,血漿から乏クリオ血漿を重力で除去するサイホン法の改良版として,「簡易サイホン法(簡易法)」と「2回凍結サイホン法(2回凍結法)」を検討した.簡易法は,購入した新鮮凍結血漿(FFP)を血液専用保冷庫内でサイホン(オーバーナイト)する方法で,Fbg回収率約49.2%,Fbg精製率約56.4%と,遠心法とほぼ同等のクリオが作製できた.2回凍結法は,FFPを低温融解し再凍結後にサイホンする方法で,Fbg回収率約72.9%,Fbg精製率約74.9%,FFP480からFbg 1g以上回収できた.大型遠心機がなくても,サイホン法で十分なクリオを作製可能であり,大量出血による後天性低フィブリノゲン血症に対しても有効な止血戦略が立てられ,血液製剤の有効活用,適正使用推進に役立つことが期待される.

症例報告
  • 降田 喜昭, 鞠子 文香, 鈴木 菜月, 砥出 紘佳, 小嶋 未来, 川上 美由紀, 石井 修平, 中村 裕樹, 安藤 純
    2026 年72 巻1 号 p. 70-74
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    ABO血液型は,溶血性輸血副反応を防止するため正確な判定が重要である.cisAB型は1つの染色体にA型とB型の遺伝子が存在しており,もう一方の染色体における遺伝子との組み合わせで3タイプが知られている.ABO血液型検査ではオモテ・ウラ検査の不一致を認めるため,判定に苦慮する場合がある.

    今回経験した症例は,ゲルカラム凝集法においてオモテ検査で抗A(4+),抗B(0),抗D(4+),control(0),ウラ検査でA1赤血球(0),B赤血球(0)となり,オモテ・ウラ検査不一致となった.試験管法で再検査を行った結果,オモテ検査は抗A(4+),抗B(3+),ウラ検査はA1赤血球(0),B赤血球(w+)で判定保留となった.ゲルカラム凝集法と試験管法で,オモテ検査の抗Bおよびウラ検査のB赤血球において凝集の強さに差を認める結果となり,日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センターにABO亜型検査を依頼し,cisAB型の結果となった.

    当院で検出されたcisAB型において,検査方法の違いにより異なる結果を認めた症例を初めて経験したので報告する.

活動報告
  • ―流れを止めない当院の活動―
    髙杉 沙織, 境 峰子, 尾野 美沙子, 石岡 朋子, 佐藤 真奈美, 一戸 亜紀子, 木村 亜希奈, 宮田 優輝, 須郷 克子, 前田 亜 ...
    2026 年72 巻1 号 p. 75-79
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    弘前大学医学部附属病院では,2013年に学会認定・臨床輸血看護師5名が認定された.現在は,学会認定・臨床輸血看護師が15名,自己血輸血看護師が3名在籍している.活動初期は在籍部署での輸血勉強会等の個人的活動だったが,徐々に院内外での活動を展開した.2017年5月に「輸血部・輸血看護師連絡会」を発足させ,輸血部職員と輸血看護師で,インシデント情報共有や対策立案,輸血教育等について計画・実行した.新人看護師研修の講義・実技デモンストレーションを担当し,院内活動も活発になった.コロナ禍には,新人看護師研修の講義と実技を動画で作成し,翌年にブラッシュアップして提供した.コロナ禍後の現在までは,院内輸血業務の疑問点を調査し「輸血のQ&A集」を作成した.認定更新しなかった輸血看護師が10名いる一方で,毎年数名の新規輸血看護師が認定され,流れを止めることなく活動している状況を報告する.

  • 山崎 舞衣, 棚澤 敬志, 松本 愼二, 須藤 保加, 小林 瑞紀, 浅見 育子, 小林 祥一, 横山 明裕美, 中町 恵, 平山 美津江, ...
    2026 年72 巻1 号 p. 80-86
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    血液型検査検体容器取り違えはABO不適合輸血につながる.当院では2019年4月に入院患者輸血検査採血時の患者―容器電子照合が導入されたが,採血時電子照合は半数しか行われていなかったため,電子照合漏れゼロに向けて輸血部が主体的に品質改善活動を進めてきた.提出された入院患者血液型検査の採血時照合率をモニタリングし,照合率の共有,照合未実施原因調査,照合未実施事例の個別理由調査を部署管理者に依頼した.活動によって採血時照合率は53%から93%に改善し,電子照合導入前に年間1~5件報告があった輸血検体容器取り違えは導入後1~2件で推移し,2021年以降入院での報告は1件もみられなくなった.採血時照合漏れは輸血部外で発生するインシデントであるが,輸血部が主体的に原因究明や対応策の検討,意識改革に取り組み,学会認定・臨床輸血看護師(以下,認定看護師)の協力を得て部署別勉強会を行うなど活動を進めることが検体取り違え回避につながったと考えられる.

論文記事
  • ―日本における多施設共同研究から―
    横濱 章彦, 藤田 浩, 長井 一浩, 藤原 慎一郎, 谷本 一樹, 牛木 隆志, 平安山 知子, 八田 善弘, 柳沢 龍, 渡邉 和亮, ...
    2026 年72 巻1 号 p. 87-93
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    妊婦に対する貯血式自己血輸血(Preoperative Autologous Blood Donation,PAD)に関するアンケート調査を実施し,貯血から輸血までの安全情報を解析した.

    PADを行った2,378人の妊婦のうち,1,664人は自己血のみの輸血を受け(自己血群),146人は自己血に加え同種血輸血を(同種血群),568人は輸血を受けなかった.201人(8.5%)が貯血および輸血により何らかの有害事象(Adverse Event,AE)を経験したが,重症度は低かった.血管迷走神経反応(Vasovagal Reaction,VVR)の発生率は2.6%.VVR以外のAEは4.8%で発生し,そのうち32.5%は妊婦特有だった.輸血副反応(Transfusion Reaction,TR)を起こした単位あたりの人数は,自己血群と同種血群の間で大きな差はなかった.

    AEは妊婦特有なものも多く,自己血群と同種血群の間でTRの発生率に大きな差はなく,PADの優先性を示せなかった.一方,重症度は低く,PADは比較的安全だった.妊婦に対するPADは,AEを管理できる輸血管理システム下で実施されるべきである.

  • 船戸 興自, 菊地 豪, 前原 香名子, 栗田 良, 伊佐 和美, 宮崎 孔, 奥田 誠, 宮田 茂樹, 佐竹 正博, 谷 慶彦
    2026 年72 巻1 号 p. 94-105
    発行日: 2026/02/25
    公開日: 2026/03/16
    ジャーナル フリー

    不規則抗体のスクリーニングと同定検査は,溶血性輸血副反応の予防において重要である.これらの検査は,血漿中に存在する抗体と赤血球上の抗原との反応性を確認する血清学試験によって行われる.しかし,高頻度抗原に対する抗体や複数種の同種抗体が存在する場合には,抗体の同定は困難もしくは不十分となることがある.そのような場合,対応する抗原を欠く赤血球試薬を使用して同種抗体を同定することは可能であるが,入手が困難な例も存在する.そのため,本研究では抗体の同定を簡素化するために,赤血球前駆細胞株を使用して高頻度抗原を含む複数の血液型抗原を欠く抗体同定用パネル赤血球を作製することを目的とした.赤血球前駆細胞株にゲノム編集を行い,11種類の血液型抗原(RhD,RhC/e,M/N/s,P1,Fya,Jka/Jkb,およびJra)を削除することで最終的には上記の血液型抗原を欠くDib発現株の作製に成功した.ゲノム編集後,削除した抗原に対する抗体は反応しない一方で,Dib抗原に関してはフローサイトメトリーと試験管法によって検出可能であった.この細胞株はゲノム編集後も正常に増殖し,濃い赤色を呈した後期赤芽球に分化した.これらの結果は,任意の血液型抗原に改変した人工パネル赤血球を作製できる可能性を強く示唆しており,輸血前検査の精度向上や血液型システムの研究の進展に貢献することが期待される.

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