術中出血リスクが高い待機手術を受ける犬猫42頭に対して、術前希釈式自己血採血・輸血を実施した。日本自己血輸血学会のガイドラインを基に、プロトコルを作製した。希釈式自己血採血・輸血の関連する重度な有害事象は認められず、安全に実施できた。また、同種血輸血を回避できた症例がいたことから、希釈式自己血輸血は有用性が高いと考えられた。
肝外胆管閉塞を急発症した9歳、去勢雄の雑種猫に胆嚢-十二指腸吻合術を行った。同時に実施した肝生検の免疫染色により肝細胞向性を示す大顆粒リンパ球性(LGL)リンパ腫と診断され、その後の臨床経過から肝臓原発と考えられた。高ビリルビン血症は術後に一旦改善したが、その後の1ヶ月間で再燃した。L-アスパラギナーゼやニムスチンの投与で2回の臨床的改善が得られたが、再進行により299日目(術後294日目)に斃死した。本症例は肝細胞向性を示すLGLリンパ腫の猫の治療例として最初の報告である。
去勢雄の雑種猫が、喉頭尾側の気管腫瘤により急性の呼吸困難を示した。気管切開術による減量によって呼吸状態は速やかに改善し、患猫はその日に帰宅した。摘出した腫瘤は病理組織検査、免疫染色、遺伝子検査からび漫性大細胞B細胞性リンパ腫と診断された。細胞診に基づき手術当日からCOP療法を16回(5サイクル)、続いてドキソルビシン治療を4回実施して治療を終了した。術後958日を過ぎた現在も再発することなく生存中である。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら