開腹歴のない若齢犬の卵巣子宮摘出時に、腹腔内に膜様構造物が認められ手術が困難で、さらに大網の低形成が疑われた症例を2例経験した。ヒトでは開腹歴のない症例において同様の病態が報告されているが、犬での報告は認められない。今回の膜様構造物と大網低形成疑いのいずれか、あるいは両方が先天性なのか二次的なのかは不明であったが、同様の症例は潜在的に存在していると思われるため症例の蓄積が重要であると思われた。
13歳、去勢雄、ラパーマの猫が嘔吐頻度の増加を主訴に来院した。腹部超音波検査では膵臓の左葉領域に直径約1 cmの結節状陰影を認め、さらに絶食時血清ガストリン濃度を測定したところ456 pg/mlと異常な高値を示した。以上の検査結果から膵ガストリノーマを疑い、膵臓左葉の部分切除術を実施したところ、病理組織学的に膵神経内分泌腫瘍と診断され、臨床経過と合わせて膵ガストリノーマと判断した。術後、定期的にX線検査・腹部超音波検査を実施し、再発・遠隔転移の有無を確認しているが、術後3年経過した現在も再発や遠隔転移は認められず、良好な経過を辿っている。
11歳の雌猫、体重3.3 kgが、左眼の瞬膜自由縁に形成された小さな腫瘤からの出血を主訴に受診した。腫瘤は急激に増大し悪性腫瘍が疑われたため、60日後に半導体レーザーメスを使用し摘出した。切除した腫瘤は卵円形を呈し、長径9 mm、短径4 mmであった。病理組織学的検査で、腫瘤は扁平上皮癌と診断された。術後16日目からトセラニブリン酸塩を隔日で76日目まで、βグルカン製剤は術前の早い段階から161目まで経口投与した。術後578日経過するが再発は見られず、良好な状態を維持している。
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